ほぼ日 | 「やさしいタオル」以前の 糸井家のタオルはどうだったんですか。 |
糸井 | それなりに、これがいいんじゃないか、 あれがいいんじゃないかで、 ぼくは知らないけど何かのブランドを。 そのうち「やさしいタオル」の開発がはじまって、 お試しで持って帰ったりするじゃない。 だんだんそれを使う頻度が増えてって、 かみさん、いまや人んちの分まで買ってるもの。 実家とかはもちろん、 もらって必ずお礼言われるタイプのものなんで、 かみさんも、気持ちいいでしょうね、きっと。 とはいえ、買うにはやっぱり、安くはないですよ。 普通に安いタオルよりは高いんです。 |
大橋 | うん、もちろん。 |
ほぼ日 | 「やさしいタオル」ができる前は、 雑誌でここのホテルのタオルが一番、 みたいな記事を読んでは、 わざわざホテルに行って タオルを買ったりしていた人も、 「ほぼ日」スタッフにいるんですよ。 |
糸井 | 一般的に、誰々さんがいいと言ったとか 悪いと言ったとかっていうのって、 その人の主観じゃないですか。 で、信じられるタイプの主観の人が言うと 「そうそう!」って思う、ってことですよね。 |
大橋 | そうですね、もう確か。 |
伊藤 | だから、歩さんが 「この○○○、使ってます」と言うと、 ちょっと買ってみようかなっていう気にもなるし。 |
糸井 | うん。それはぼくらも思う。 |
大橋 | いえいえ、私は。 |
糸井 | でもそれは、いろいろ使って そこにたどり着いたんじゃなくて、ですよね。 |
大橋 | そうですね。 |
糸井 | 今の時代ってそのへんを 間違えてるかもしれないですね。 有無を言わせず、これがいいということを、 みんな思い込んでるかもね。 例えばブランドが流行るのだってそう。 「何々、といえば何々」みたいなさ。 たとえばホテルに行ってタオルを買う、 というのも同じで、その手間の分だけ よく思わなきゃ損だものね。 |
大橋&伊藤 | (笑) |
糸井 | 最初に高いスニーカーが 流行り始めた時のことを思い出すと、 どこがそんなによかったか、 今でもよくわからないんです。 スタイリストとかタレントが リーボックを履き始めた頃のこと。 あの時って、履いてないと、 ちょっとさ、爪はじきみたいな。 |
大橋&伊藤 | (笑) |
糸井 | それからぐるぐる回って、 機能性のスニーカーじゃなく、 ぺたっとしたコンバースが流行になって。 じゃあ、それがどのくらい、 どういいかなんていうのは説明できない。 |
大橋 | できないですね、うん。 |
糸井 | ぼくらも、だから、 いいって信じたものを作っていくしかない。 |
大橋 | 確かに。 |
伊藤 | そうだと思います。 |
糸井 | 信じたものを自分たちが満足いくように 仕立て、育てていくっていう。 ああ、なんか、目からウロコだ! |
大橋 | ふふふ(笑)。 |
糸井 | だって最初、ごわごわから始まったもん。 どうやってごわごわと戦うかだった。 |
大橋 | でも、私はそのごわごわ派だけれども、 今さっき見せていただいて、 吸水性にびっくりして。 |
糸井 | もしよろしかったら、 手を洗って、これで拭くというのを お試しになったら、その馴染み具合に、 きっと驚いていただけると思います。 |
大橋 | なるほど。ただ、うちの場合は、 変に白にこだわっていて、 無機質みたいになっているので、 そこに何か柔らかい色が入ってくるのが なんとなくおかしいんですよ。 |
伊藤 | 私も。 |
糸井 | ようがす。「白」出します。 |
大橋 | 出してください。そしたらうれしい。 |
伊藤 | そう。今日はそれをぜひお願いしようと思って! |
大橋 | あら、そうだったの? |
伊藤 | はい! それすごく欲しいです。 |
糸井 | その方向って、前は散々あったのに、 やめていっちゃったんですよね。 というのは、「いいのは何?」って言った時、 みんな白を選ぶって言うんですよ。 ところが、買うのは違うんです。 Tシャツもそうで、 白はイメージ的にいいんです。 だけど、数がね、白は置いていかれちゃう。 今度のうちのTシャツのシリーズは 全部無地なんですよ。 |
大橋 | でも、色は入って? |
糸井 | 色はつけます。 その時も白の割合をちょっと低めにしとかないと 余っちゃうだろうなと思って。 |
大橋 | そうですよね。 何かがついてないと 買いたいという気持ちにならないんですよ。 今、私ちょうど、 「白いTシャツよりも やっぱり何かないと売れないですよね」 って言おうと思ったんです。 ただの白いものは、 「別にお金出して買わなくてもいいんじゃない?」 みたいなことになるのかもしれないと。 糸井さん、やっぱりゴルフに戻られたという、 何かしらそこらへんって関係が? |
糸井 | 似ていますね。 大橋さんもご存知でしょうけど、 Tシャツをずっと作ってると、 大体自分の好きなものって同じようなものだって わかってくるんです。 柄については、前回、前々回と ものすごく頑張ったんですね。 コム デ ギャルソンの人が ほめてくれるくらいに頑張ったんだけど、 その頑張りをずっと続けていくことよりも、 「Tシャツって何でしょうね」 ってとこから考えようってことになって。 ゴルフの話とそっくりなんですけど、 「つくるの、やめようか」って1回なったんです。 もうTシャツを作ることが、わかんなくなって、 「やめようか」──けれども、 「でもさ、自分のTシャツ買うよね。 作るのはやめても、買い手としては買うよね」 という話になった。 で、どういうのを買うかって時に、 「これがいいや!」と思って買うんじゃなくて、 「まあ、これかな?」って買いますよね、 Tシャツって。 |
大橋 | うん。 |
伊藤 | うんうん。 |
糸井 | みんなくたびれてるんです、 Tシャツ買うのに。 |
伊藤 | (笑) |
大橋 | うん(笑)。 |
糸井 | 「でも、買うとしたらさ、 Tシャツを考える時に いちばん重要なのって何だっけ」と、 編み方から素材から 1個ずつ真面目に考えていこう、 ってことになりました。 そしたら、気付いたんです。 「無地ってブランドの人たちも 気まぐれにしか出さないね」って。 前によかったからといって、 同じ無地があると思って買いに行ったら、 もう売ってないんですよ。 無地じゃお客さんが離れちゃうから、 混ぜてるだけなんですよ。 だったらうちは全部無地というのを1回やって、 着心地とか形とかで勝負してみようと。 で、えらい面倒くさい織り方の1種類と、 今までの生地をもうちょっと、 内側が起毛した、気持ちのいい綿で、 どちらも洗いざらしで着られるように、 ハンガー使わなくていいですよって、 首のところにループつけて、 タオル扱いで使ってくださいみたいにして 2ライン作ったんです。 その時の自分たちの考えの流れが 本当に気持ちよかったんですよ。 やりたいことと届けたいものが 重なった! みたいな。 |
大橋 | うんうん、なるほど。 今のお話聞いてると、 欲しいような気持ちになりました。 |
伊藤 | うん。 |
糸井 | うちでは、「要らない」って 何かと言う奥さんがね、 「欲しい」と言ったから、 この人が言うんだったら大丈夫かなとか。 |
伊藤 | Tシャツは無地に、ゴルフのように戻って、 タオルはあまり戻らなかったわけですか。 |
糸井 | いや、タオルについてはぼくはまだ、 追い詰められてないんだと思います。 今日のおふたりの話を聞いて、 もうちょっと追い詰めてみる時期が 来るんじゃないかなと思ってます。 |
はい、「無地」「白」について、 いまちゃんと考える時期が来ているんだと思います。 Tシャツでも思い切ってやってみたことを、 タオルでも、やってみよう。 そんな決意をしつつ、次回につづきます。 |