大橋歩さん & 伊藤まさこさんと ほんとうにほしいタオルのはなし。 おまたせしました、「やさしいタオル」再始動です。

その5 無地のTシャツと、白いタオル。
ほぼ日 「やさしいタオル」以前の
糸井家のタオルはどうだったんですか。
糸井 それなりに、これがいいんじゃないか、
あれがいいんじゃないかで、
ぼくは知らないけど何かのブランドを。
そのうち「やさしいタオル」の開発がはじまって、
お試しで持って帰ったりするじゃない。
だんだんそれを使う頻度が増えてって、
かみさん、いまや人んちの分まで買ってるもの。
実家とかはもちろん、
もらって必ずお礼言われるタイプのものなんで、
かみさんも、気持ちいいでしょうね、きっと。
とはいえ、買うにはやっぱり、安くはないですよ。
普通に安いタオルよりは高いんです。
大橋 うん、もちろん。
ほぼ日 「やさしいタオル」ができる前は、
雑誌でここのホテルのタオルが一番、
みたいな記事を読んでは、
わざわざホテルに行って
タオルを買ったりしていた人も、
「ほぼ日」スタッフにいるんですよ。
糸井 一般的に、誰々さんがいいと言ったとか
悪いと言ったとかっていうのって、
その人の主観じゃないですか。
で、信じられるタイプの主観の人が言うと
「そうそう!」って思う、ってことですよね。
大橋 そうですね、もう確か。
伊藤 だから、歩さんが
「この○○○、使ってます」と言うと、
ちょっと買ってみようかなっていう気にもなるし。
糸井 うん。それはぼくらも思う。
大橋 いえいえ、私は。
糸井 でもそれは、いろいろ使って
そこにたどり着いたんじゃなくて、ですよね。
大橋 そうですね。
糸井 今の時代ってそのへんを
間違えてるかもしれないですね。
有無を言わせず、これがいいということを、
みんな思い込んでるかもね。
例えばブランドが流行るのだってそう。
「何々、といえば何々」みたいなさ。
たとえばホテルに行ってタオルを買う、
というのも同じで、その手間の分だけ
よく思わなきゃ損だものね。
大橋&伊藤 (笑)
糸井 最初に高いスニーカーが
流行り始めた時のことを思い出すと、
どこがそんなによかったか、
今でもよくわからないんです。
スタイリストとかタレントが
リーボックを履き始めた頃のこと。
あの時って、履いてないと、
ちょっとさ、爪はじきみたいな。
大橋&伊藤 (笑)
糸井 それからぐるぐる回って、
機能性のスニーカーじゃなく、
ぺたっとしたコンバースが流行になって。
じゃあ、それがどのくらい、
どういいかなんていうのは説明できない。
大橋 できないですね、うん。
糸井 ぼくらも、だから、
いいって信じたものを作っていくしかない。
大橋 確かに。
伊藤 そうだと思います。
糸井 信じたものを自分たちが満足いくように
仕立て、育てていくっていう。
ああ、なんか、目からウロコだ!
大橋 ふふふ(笑)。
糸井 だって最初、ごわごわから始まったもん。
どうやってごわごわと戦うかだった。
大橋 でも、私はそのごわごわ派だけれども、
今さっき見せていただいて、
吸水性にびっくりして。
糸井 もしよろしかったら、
手を洗って、これで拭くというのを
お試しになったら、その馴染み具合に、
きっと驚いていただけると思います。
大橋 なるほど。ただ、うちの場合は、
変に白にこだわっていて、
無機質みたいになっているので、
そこに何か柔らかい色が入ってくるのが
なんとなくおかしいんですよ。
伊藤 私も。
糸井 ようがす。「白」出します。
大橋 出してください。そしたらうれしい。
伊藤 そう。今日はそれをぜひお願いしようと思って!
大橋 あら、そうだったの?
伊藤 はい! それすごく欲しいです。
糸井 その方向って、前は散々あったのに、
やめていっちゃったんですよね。
というのは、「いいのは何?」って言った時、
みんな白を選ぶって言うんですよ。
ところが、買うのは違うんです。
Tシャツもそうで、
白はイメージ的にいいんです。
だけど、数がね、白は置いていかれちゃう。
今度のうちのTシャツのシリーズは
全部無地なんですよ。
大橋 でも、色は入って?
糸井 色はつけます。
その時も白の割合をちょっと低めにしとかないと
余っちゃうだろうなと思って。
大橋 そうですよね。
何かがついてないと
買いたいという気持ちにならないんですよ。
今、私ちょうど、
「白いTシャツよりも
 やっぱり何かないと売れないですよね」
って言おうと思ったんです。
ただの白いものは、
「別にお金出して買わなくてもいいんじゃない?」
みたいなことになるのかもしれないと。
糸井さん、やっぱりゴルフに戻られたという、
何かしらそこらへんって関係が?
糸井 似ていますね。
大橋さんもご存知でしょうけど、
Tシャツをずっと作ってると、
大体自分の好きなものって同じようなものだって
わかってくるんです。
柄については、前回、前々回と
ものすごく頑張ったんですね。
コム デ ギャルソンの人が
ほめてくれるくらいに頑張ったんだけど、
その頑張りをずっと続けていくことよりも、
「Tシャツって何でしょうね」
ってとこから考えようってことになって。
ゴルフの話とそっくりなんですけど、
「つくるの、やめようか」って1回なったんです。
もうTシャツを作ることが、わかんなくなって、
「やめようか」──けれども、
「でもさ、自分のTシャツ買うよね。
 作るのはやめても、買い手としては買うよね」
という話になった。
で、どういうのを買うかって時に、
「これがいいや!」と思って買うんじゃなくて、
「まあ、これかな?」って買いますよね、
Tシャツって。
大橋 うん。
伊藤 うんうん。
糸井 みんなくたびれてるんです、
Tシャツ買うのに。
伊藤 (笑)
大橋 うん(笑)。
糸井 「でも、買うとしたらさ、
 Tシャツを考える時に
 いちばん重要なのって何だっけ」と、
編み方から素材から
1個ずつ真面目に考えていこう、
ってことになりました。
そしたら、気付いたんです。
「無地ってブランドの人たちも
 気まぐれにしか出さないね」って。
前によかったからといって、
同じ無地があると思って買いに行ったら、
もう売ってないんですよ。
無地じゃお客さんが離れちゃうから、
混ぜてるだけなんですよ。
だったらうちは全部無地というのを1回やって、
着心地とか形とかで勝負してみようと。
で、えらい面倒くさい織り方の1種類と、
今までの生地をもうちょっと、
内側が起毛した、気持ちのいい綿で、
どちらも洗いざらしで着られるように、
ハンガー使わなくていいですよって、
首のところにループつけて、
タオル扱いで使ってくださいみたいにして
2ライン作ったんです。
その時の自分たちの考えの流れが
本当に気持ちよかったんですよ。
やりたいことと届けたいものが
重なった! みたいな。
大橋 うんうん、なるほど。
今のお話聞いてると、
欲しいような気持ちになりました。
伊藤 うん。
糸井 うちでは、「要らない」って
何かと言う奥さんがね、
「欲しい」と言ったから、
この人が言うんだったら大丈夫かなとか。
伊藤 Tシャツは無地に、ゴルフのように戻って、
タオルはあまり戻らなかったわけですか。
糸井 いや、タオルについてはぼくはまだ、
追い詰められてないんだと思います。
今日のおふたりの話を聞いて、
もうちょっと追い詰めてみる時期が
来るんじゃないかなと思ってます。

はい、「無地」「白」について、
いまちゃんと考える時期が来ているんだと思います。
Tシャツでも思い切ってやってみたことを、
タオルでも、やってみよう。
そんな決意をしつつ、次回につづきます。
2010-10-08-FRI

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