- 糸井
- 大橋さん、
前回の「生活のたのしみ展」という催しを、
本当に、たのしんでくれましたよね。
- 大橋
- だって、ほんとたのしかったんだもん(笑)。
- 糸井
- だから、大橋さんには、
「生活のたのしみ展のどんなところを
あんなに、よろこんでくれたのかなあ」
って、聞いてみたかったんです。
- 大橋
- うーん、そうですね‥‥。
あの「生活のたのしみ展」の場は
ちょっと「とくべつ」な感じがしました。
- 糸井
- とくべつ?
- 大橋
- そう、はじめてあの会場を見たとき、
「あ、これはすごいぞ」って
直感でわかったんです。
お客さんの数もすごかったんだけど、
みなさんのたのしんでる様子、
うれしい気持ちが、
ものすごーく伝わってきたというか。
- 糸井
- うん、みんな、
本当にたのしそうでしたよね。
あれだけ、寒いなか(笑)。
- 大橋
- そう、3月なのにすっごく寒かった!
それなのにみんな、
うれしそうに、
たのしそうにお買い物をされていて。
- 糸井
- そうそう。
- 大橋
- 雑貨のイベントやクラフトフェアって、
けっこうあるじゃないですか。
- 糸井
- ありますよね。
- 大橋
- でも「生活のたのしみ展」の雰囲気って、
そのどれともちがう、
ちょっと「とくべつ」なものだったんです。
たのしさ、うれしさ、よろこび、
そういうお客さんのエネルギーがすごくて、
お店として参加してるわたしたちも
どんどん、エキサイトしちゃうというかな。
お客さんも、お店の側も、
ワーワー、キャーキャーって、
場のエネルギーがすごかったんですよね。
- 糸井
- もともと「たのしみ展」という企画は、
「そういう場がつくれたらいいね」
というところからスタートしたんです。
- 大橋
- え、だとしたら、ねらいどおりですよ。
- 糸井
- お客さん同士がワーワー、キャーキャーと
「何を買おうか迷っちゃう」
「売り切れちゃって、買えなかった!」
とか言い合っていて、
その横では、お店の人たちも
「売れた!」「売れない!」とか
「買い物に行きたいよー!」とか。
そういう、みんなの感情が、
ぜんぶごちゃまぜになればいいなぁって
思ってつくった場なんです。
- 大橋
- うん、もうね、
どっちのうれしさもごちゃまぜでした。
- 糸井
- でも、そういうつもりでやったけど、
本当にそういう場になってたから、
ぼくらのほうが、ビックリしちゃった。
正直、
「どうして
あんなにうまくいったんだろう?」
みたいな気持ちもあるんです。
- 大橋
- へぇー、おもしろい(笑)。
- 糸井
- だって、よーく考えてみたら、
ただ、ものを売ってるだけですからね。
- 大橋
- うん、そうなの。
でも、すっごくイベントっぽかった。
- 糸井
- そうなんですよ。
でも、イベントらしいイベントって、
とくに用意してなかったんです。
あ、靴磨きをする人はいましたけど。
- 大橋
- あっ、はいはい。よく覚えてます。
- 糸井
- 彼、3日間で500足を磨いたって(笑)。
- 大橋
- ひゃー、500足も! それはすごい!
- 糸井
- すごいですよね。
お客さんがお客さんを呼んじゃって、
もう、大変だったらしいです。
- 大橋
- 桜だけの花屋さんもありましたね。
- 糸井
- 「そら植物園」の『桜の花束店』ですね。
あの桜たちも、あの日に合わせて、
本当にうまく咲いてくれました。
- 大橋
- みなさんで
「桜、咲いてよかったね~」って、
すごくよろこんでましたよ。
- 糸井
- ああやって、出店してくれた人同士が
たのしんで、よろこんでくれることも、
ぼくらとしては、本当にうれしくって。
たしか、大橋さんのお店のおとなりは、
「タンピコ」のバッグでしたよね。
- 大橋
- そうです、そうです。
タンピコのことは知ってたんですけど、
日本に輸入している吉川さんに
お会いしたのははじめてで、
そういう出会いもうれしいですよね。
- 糸井
- あとで会ったら
同窓生みたいな気分になりそうですね。
- 大橋
- なります、なります。
- 糸井
- タンピコのお店では、
家族総出で手伝っていたそうです。
「家にいるだけじゃ、つまんない」
と思ってくれてたなら、
ちょっとうれしいですよね。
- 大橋
- その気持ち、よくわかります。
わたしも
みんなから「うらやましい!」って、
たくさん言われれましたから。
- 糸井
- ぼくの好きなぬいぐるみ作家で、
梅津恭子さんという方がいらっしゃるんです。
- 大橋
- はい。
- 糸井
- 彼女は前回の「たのしみ展」に
ひとりのお客さんとして来てくれたんだけど、
会場で「嫉妬が渦巻いた」って(笑)。
- 大橋
- あはは、でも、わかるなあ(笑)。
- 糸井
- だから、彼女に
「次回は、ぜひ出てくれませんか」って
連絡したんですね。
そしたら
「もちろん出たいんだけど、
いま抱えてる仕事がいっぱいで、
数がぜんぜん用意できません‥‥」って。
- 大橋
- ああ、1個ずつ、手づくりだから。
- 糸井
- そう、そこらへんが
「たのしみ展」のこれからの課題かも。
- 大橋
- でも、彼女が「嫉妬した」というのは、
すごーくわかります。
わたしだって声がかかってなかったら、
落ち込んでたと思う(笑)。
- 糸井
- たぶん、そういうふうに思うのって、
大橋さんがこれまで、
いい場所で、いい仕事を
たくさんされてたからですよ。
もし、そうじゃない人が
急にああいう場所を与えられたら、
「わたしは何を出せばいいんだろう?」
って、ちょっと怖くなるかもしれない。
- 大橋
- うん、そうかもしれないですね。
でも、わたしも怖いですよ。
「ぜんぜん売れなかったらどうしよう」
って思いますもん。
- 糸井
- そういう怖さは、いつまでもありますよね。
ぼくたちだって
お客さんが本当に来てくれるんだろうかと、
ずーっと、不安でしたから。
(つづきます)
2017-11-01 WED