レム睡眠の発見。
糸井
セミの幼虫って、子どものころは貴重な存在だったよね。
南
そうだね。セミと、セミの抜け殻はたくさん見たけど。
糸井
地面を這うセミの幼虫は、ものすごく貴重に思えるんだよね。その心がいまだに残ってるもんだから、つい夜中に見に行ったりしちゃうんだよ、オレ。そうすると、けっこう簡単に見つかって、がっかりしたりもするんだけど。
南
そういうもんかもしれないね。まぁ、セミの幼虫は昔からたくさんいたんだろうけど、子どもは懐中電灯持って夜中に出かけたりできないから、貴重なわけで。
糸井
まさにそういうことなんだよ。実体は、ふつうにあるんだけど、見つけるほうの都合で貴重品になるという。
南
そういうことでいうとさ、あの、レム睡眠って、あるじゃない? 浅い眠りのときに、眼球がグルグル動くっていう。
糸井
体が眠ってるのに、脳が起きてる、みたいな状態だよね。
南
そうそう。そのレム睡眠ってね、存在が明らかにされたのはわりと最近のことらしいんだ。昔はあんまり研究する人もいなかった。
糸井
へー。
南
で、なぜ、研究が遅れたかというと、オレが思うにね、科学者も夜は寝るからじゃないかと。
糸井
ふ、はははは。
南
言われてみると納得でしょ? みんな寝てるからさ、わかんなかったんだよ、浅い眠りのときに目がキョロキョロするっていうようなこともさ。
糸井
「オレも寝てたんだよ」と。「わりぃわりぃ、見てなかった」と。
南
そうそうそう(笑)。「なんで目がキョロキョロしてるんだ?」って疑問に思うやつもいなかったということだよ。だって、夜は寝てるから。
糸井
すばらしいね。理路整然としてるね。
南
そうでしょう? だから、たぶん、あの、レム睡眠の発見っていうのはね、たまたま、その科学者のそばで昼寝してたやつが目をキョロキョロさせたっていうことなんじゃないかな。で、「目がキョロキョロしているぞ」と。
糸井
「なんだこれは!」と。
南
「大発見だ!」と。
糸井
ふははははは。
南
そういうことなんじゃないかな。
糸井
幼稚園で昼寝の時間に起きてる子、みたいな科学者が発見したわけだね。
南
はははははは。あ、そうそう、幼稚園で昼寝の時間に起きてる子といえばさ。
糸井
え、その共通項でつなげられるの?
「セミについて。」を読む。
「天狗、幼稚園に現る。」を読む。
書籍『黄昏』について