|
南 |
じつはね‥‥。
|
糸井 |
うん。
|
南 |
こないだ、道を歩いてたら、
「アンドレア・デル・サルト」っていう
人名がひょいっと出てきたんだよ。
|
糸井 |
誰?
|
|
南 |
それはね、
『吾輩は猫である』の中に
出てくる人名なんだ。
|
糸井 |
ほうほう。
|
南 |
で、オレが『吾輩は猫である』を読んだのは
中学校くらいのころだからさ。
すっかり忘れてたどころか
もともと覚えてもいなかった
くらいのもんなの。
それがね、ひとりで道を歩いてるときに、
不意に出てきたんだよ。
「‥‥‥‥アンドレア・デル・サルト?」
|
糸井 |
急に。
|
南 |
急に。出てきたんだよ。
|
糸井 |
なにそれ(笑)。
|
南 |
なんだろうね。
でね、最初は誰だかわかんないから、
インターネットの「検索」というものを
してみたわけ。
|
糸井 |
おお。
|
|
南 |
「アンドレア・デル・サルト」って入れてね。
そしたらさ、アンドレア・デル・サルトって、
いるんだよ。いるっていうより実在する。
|
糸井 |
いるんだから実在するだろう。
|
南 |
いるうえに実在する? あれ?
まぁ、ともかく、
小説の中に出てくるだけじゃなくて、
実在する絵描きだったんだよ。
|
糸井 |
つまり、夏目漱石が小説を書くときに、
実在の人をつかったってことね。
|
南 |
そうそう、
迷亭が話すなかに出てくる。
その人はマニエリスムの画家でさ、
検索すると、ちゃんと本人が
描いた絵も出てくるんだ。
|
糸井 |
ああ、うん、うん。
|
南 |
で、へぇー、こんな絵描いてたんだ、
って感心してね。
|
糸井 |
よかった、よかったと。
|
南 |
そうそう。便利だねぇ、あれは。
|
糸井 |
南さんもついにIT時代に突入。 |
|
南 |
でね、じつはね。
|
糸井 |
うん。
|
南 |
昔、オレは、
「あのほらロボット」っていうのが
できたらいいなって思ってたんだ。
「あの〜、ほら‥‥」
「あの、ほら、えーと‥‥」って
なにか思い出せないことがあると、
ロボットがやってきて、
「ひょっとして、
アンドレア・デル・サルトじゃないですか?」
って言ってくれるロボットなの。
|
糸井 |
ははははは。
|
南 |
これからは年寄りばっかりの
世の中になるからさ、
そういうロボットがあったら
きっと売れるぞ、って思ったんだ。
|
糸井 |
売れそうだね、それは。
|
南 |
うん。で、こないだ、その
「アンドレア・デル・サルト」を
検索したときに、
ああ、あのロボットはもう実在してたんだな、
って思ったんだよ。
|
糸井 |
ああ、そういうことになるね。
その、検索のロボットだもんね。
だから、ええと、そのロボットは‥‥。
|
南 |
なんて名前だっけ?
|
一同 |
(笑)
|
糸井 |
ハハハハハ!
|
|
南 |
あのほら、あのロボットは、
あのほら、なんて名前だっけ?
|
糸井 |
それは、インターネットでも
検索できないかもなぁ。
(次回もアンドレア・デル・サルトの話がつづく) |