糸井 オレは、伸坊みたいに
何度も読もうとしたわけじゃないんだけど、
やっぱり読み切れてなくてね、
『吾輩は猫である』が。
うん、うん。
糸井 で、そのことについて驚かされたのは、
またしても吉本隆明さんのことばでさ。
ほう。
糸井 つまり、夏目漱石って、
吉本さんのテーマのひとつなんだよ。
で、講演の中で、吉本さんが言うには、
『吾輩は猫である』という
夏目漱石の非常に有名な作品があります、と。
坊っちゃんと並んで誰もが知ってる小説です。
ただ、この小説というのは、
じつは、あんまりおもしろくないんです、
と、こう言うわけだよ。
うんうんうん。
糸井 「最後まで読んだ方はあんまり
 いらっしゃらないと思います」って。
へぇー、そうなんだぁ。
糸井 みんな、『坊っちゃん』は読んでるんだよ。
オレも読んでるし。
『坊っちゃん』は短いしね。
糸井 そういうところも含めてね、
『吾輩は猫である』のほうは、
おそらく最初のところだけ読んで
退屈なんで、おやめになって、
読んでない方が多いはずです、って。
すごいねぇ。
たしかにそうだよねぇ。
糸井 で、伸坊も読んでないっていうから、
あ、ここにもひとり、と思ってさ。
なぜか最後のところは知ってるんだよ。
なんで知ってるのかな。
高校のときに、友だちが読んで
教えてくれたんだったかな?
糸井 呉智英みたいなやつがいたわけだ。
どうだったかなぁ‥‥。
最後だけ読んだのかもしれないね。
糸井 「アンドレア・デル・サルト」の名を
不意に口走ったのをきっかけに
また読んでみれば?
そうだねぇ。
なんかさ、単なるムダ話だろ、大人の。
大人になってから読んだほうが
おもしろいかもしれない。
だって、アンドレア・デル・サルトだよ?
ぜんぜん有名じゃないよ。
誰も知らない画家だよ。
いまだって有名じゃないんだから。
当時なんて、もっと有名じゃないでしょ。
糸井 逆だろ、それは。
え? 逆?
糸井 ん? 逆じゃないか?
いや、逆だろ。
有名じゃない画家は、
いまと当時とどっちが有名じゃないかっつうと。
糸井 あんまり変わらないかもね。
ま、ともかく、そんな名前を出してさ
おもしろがってるような小説だからね、
ヒマな大人向け‥‥。
糸井 それは、あれだ、この『黄昏』が
大人向けなのと同じように。
そーそーそーそー!
一同 (笑)
糸井 まぁ、オレと伸坊だってね、
しゃべってれば、
アンドレア・デル・サルトくらいのことは
ぽんぽん出てきますよ。
くらいのことくらいはね。
糸井 幡随院長兵衛とかさ。
幡随院長兵衛が
真っっっ裸で風呂に
入ってるってぇと‥‥。
糸井 うーん、あとは、貴乃花とかさ。
いきなり貴乃花(笑)。
もう貴乃花(笑)?
糸井 鷹の爪とかさぁ。
はははははは。
糸井 放っときゃいくらでも出るよ。
あっ、アンドレ・ザ・ジャイアントとかさ。
ふふふふふふ。
「あっ」て、わざわざ言うところがいいね。
糸井 アンドレ・ザ・ジャイアントは
フランス系のプロレスラーだからね。
「アンドレ」っていうくらいだから。
「アンドレア」はイタリア系か。
糸井 アンドレ・カンドレ。
そりゃ北九州系日本人じゃないか。
糸井 しかも、改名しちゃって、もういない。
ははははは。


(自由に。つづきます!)


2010-05-27-THU