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糸井 |
年齢とかさ、数とかさ、
「サバを読む」っていうでしょ?
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南 |
うん。
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糸井 |
あれのいわれをご存じ?
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南 |
たしか、魚の鯖(サバ)を数えるときに、
こう、ごまかしたとか、
そういうんじゃなかったかな。
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糸井 |
どうごまかしたの?
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南 |
だから、その。サバを数えるときに、早口でさ、
一丁、二丁、ふん丁、あん丁、みたいな。
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糸井 |
曖昧な説明だね、ずいぶん。
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南 |
あん丁、わん丁、ぴょん丁‥‥
みたいなわけわかんないことを言ってさ。
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糸井 |
ところがこれは
もっとちゃんと説明できる話でさ。
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南 |
そうなの?
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糸井 |
そもそも、なぜそれを知ったかというと、
京都に「鯖街道」というところがあるんだ。
ときどき、そこを通るんだけどね、
要するに、日本海側から京都に向かって、
サバを運んでたんだよ。
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南 |
うん、うん。
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糸井 |
そのときにね、仮に、取引先から
「サバを仮に50くれ」って言われたとすると、
「わかりました、50ですね」って言いながら、
80くらいは持ってくるんだよ。
そうじゃないと腐っちゃうからさ。
だから、「サバを50くれ」って注文がきたら、
50じゃ足りないから80は持って行く。
そこから「サバを読む」となったわけ。
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南 |
へぇぇぇーー! すごいじゃん。
良心的な話なんだ。
オレは、落語の『時そば』みたいに
インチキする話かと思ってた。
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糸井 |
ちがうんだよ。
もともとの「サバを読む」っていうのは、
歩留まり分を含めるっていう、
商売をやる人としての
賢明な選択からきてるんだ。
いち、にい、へい、へい、へい、
っていうんじゃないんだよ。
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南 |
勉強になるじゃないすか! ほんとうに。
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糸井 |
それはさ、さっき、南さんに
アンドレアさんの話を教わったからさ。
ぼくもまぁ、サバのことをね。
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南 |
はははは、なるほどね。
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糸井 |
ま、ぼくの場合は日本の話だけどね。
南さんのはイタリアだったけど。
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南 |
そうね、そこがちょっと残念だったね。
こっちはイタリアのマニエリスムだからな。
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糸井 |
そうね、マニエリスムに比べたらね。
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南 |
いや、サバもなかなかですよ。
マニエリスムほどじゃないが。
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糸井 |
もうさぁ、夫婦生活が、
マニエリスムに陥っちゃって。
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南 |
はははははは。
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糸井 |
もー、ぜんぜんダメだよ、マニエリで。
マニエリ打破!
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南 |
はははははは。
でもさ、じつは、
マニエリスムとマンネリズムは
おんなじなんだよ。
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糸井 |
あ、そうか!
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南 |
マニエラが手法ということに
なるわけですな、ですな、ですな。
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糸井 |
なんて高尚なコーナーだろうね。
マニエリスムは語られるわ、
鯖街道の話は出るわ。
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南 |
アンドレア・デル・サルトは出るわ。
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糸井 |
まったくだ。
ここにクラムボンの若者たちがいたら、
目を白黒させてるね。
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南 |
ははははは。
(曲、聴きました? つづきます) |