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糸井 |
焼き物っていうのは、
おもしろそうだね、やっぱり。 |
南 |
あ、そう。 |
糸井 |
伸坊は、自分で焼いてたよね? |
南 |
最近は、ちょっと頭打ち。 |
糸井 |
飽きた? |
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南 |
なかなか上達しないんだ。 |
糸井 |
はー、そうなの。なぜ? |
南 |
うーんとね、自分的には、
土が自然にいろいろやってくれるところが
焼き物のおもしろいところなんだと
思ってたんだけど、
焼き物教室みたいなところって
まぁ、こっちの技術もアレだけど、
粘土が、その、なんていうか‥‥。 |
糸井 |
ありきたりなんだ。 |
南 |
うん。やっぱり、
なんか、粘土工作になっちゃう。
もうちょっと土がなんかしてくれると‥‥
とか思ってるんだけど。 |
糸井 |
なるほど、なるほど。
じゃ、もしぼくが土がいいところで
やれるようなことがあって、
行くっつったら誘われる? |
南 |
あ、いいよ。 |
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糸井 |
じゃ、誘われて。
だってぼくが最近行ってるのは
土楽の福森さんのところだからね。
つまり、先生と、いい土は、
勝手に決めてるだけだけど、
すでにあるようなもんなんだよ。
伊賀なんだけどね。 |
南 |
へぇー。 |
糸井 |
なんていうんだろう、
やっぱり、焼き物と書っていうのは、
ものすごく後ろ髪を引かれる。
「そっちにはぼくは行かないよ、
さよなら」って言ってから、こう、
うううう、やってみたいな、
と思うものがあって。 |
南 |
でも、糸井さんは、
書はもうできてるじゃん。
やってるよ。 |
糸井 |
ぶぶぶぶぶっ、
いや、伸坊にそう言ってもらえるのは、
ものすごく気持ちのいいことだけど。 |
南 |
やってるじゃん、すでに。 |
糸井 |
やってません(笑)。 |
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南 |
そうかなぁ。
ときどき書き文字、つかうでしょ。
ああいうもんだと思うんだよねぇ。
だから、やってるんだよ。 |
糸井 |
いや、なんていうんだろう、
そう言ってもらえるのは
ものすごくありがたいしうれしいんだけど、
自分の字が好きじゃないのよ。 |
南 |
ああー、そういうのは、あるんだよねぇ。 |
糸井 |
そうなんだよ。
そういう意味でいうと、
伸坊はもう、見事にやってるじゃん。 |
南 |
いや、それでいうと、
オレも自分の字が好きじゃない。 |
糸井 |
ああー、そうですかぁ、
やっぱし。 |
南 |
おもしろくない。 |
糸井 |
そう、おもしろくないんですよ。 |
南 |
うん。おもしろくない。
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一同 |
へぇー。 |
糸井 |
やっぱり、どこかで、
平凡な規則性の中にあるっていうか、
こういうのがいいなっていう
イメージのところまではいってない。 |
南 |
そうそうそう。
だからね、いっそ、
ちょっと不便をするといいんだよ。 |
糸井 |
不便。 |
南 |
あのね、中村不折っていう
明治のころの洋画家がいてね、
あ、奇しくも『吾輩は猫である』の
挿絵とかを描いた人なんだけど、
その人の字が独特なんだ。
当時の人たちにも人気があったみたいで
みんながその人の字をつかってるんだよね。
夏目漱石もそうだし、
森鴎外なんて墓の字も
その人に書いてもらったりしてるって。 |
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糸井 |
へぇー。 |
南 |
よく見るとね、これがね、なんか、こう、
普通に書いてないんじゃないかな
と思えるような字なんだ。 |
糸井 |
左手で書いてるとか? |
南 |
想像だけど、それに近いことを
やってるんじゃないかなぁ。
あの、左手で書くと、
意外にわざとらしくなっちゃうんだよ。 |
糸井 |
ああ、うん。 |
南 |
だから、右手で、上下を逆に
書いてるんじゃないかなと思うんだけど。
こう、字の力が、こっちからきてるの。 |
糸井 |
ああー。 |
南 |
左手だと自分の字を引きずるんだけど、
上下を反対にすると、
ほどよく子どもが書いたみたいな
バランスになる。 |
糸井 |
ああ、そうなんだ。
それ、伸坊も、ふだんやってる? |
南 |
ときどきやってる。
絵の中に字を入れなきゃなんないときとか。 |
糸井 |
へぇ。やるねぇ。 |
南 |
なにそれ。 |
糸井 |
つまり、フランス語しゃべれるやつが
ちょっと入れてみちゃうんだ、
みたいなことだよね。 |
南 |
はははははは、なんだそれ。 |
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糸井 |
キザだね。 |
南 |
ははははは。 |
糸井 |
A級ライセンス持ってるんだけど
このタクシー乗っていい?
みたいなことだよね。 |
南 |
はははははは、
ちがうと思うよ、それ。 |
糸井 |
やるねぇ。 |
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(どっちの字も素敵なのになぁ。つづく) |