第16回 ダ・ヴィンチは絵がうまい
四国に行ったんで、
徳島の大塚美術館っていうところに
行ったんだよ。こないだ。
糸井 うん。
その美術館てのはね、
世界の名画が陶板に印刷されてて
ぜんぶ原寸で展示されてるんだ。
たとえばシスティーナ礼拝堂の
ミケランジェロの天井画なんかも、
システィーナ礼拝堂と同じ大きさの部屋に
同じ大きさのままの複製が飾ってある。
糸井 うん、うん。
で、いちばんたのしみにしてたのが、
『最後の晩餐』なんだけどね。
糸井 ダ・ヴィンチの。
そう、ダ・ヴィンチの。
なにがおもしろいかってぇと、
『最後の晩餐』って、
最近、大がかりな修復をしたんだよ。
糸井 したね。
で、もともと大塚美術館には
『最後の晩餐』の複製があったんだけど、
その後、イタリアで修復されたってんで、
その修復後の複製をまた原寸大でつくったわけ。
糸井 じゃあ、両方が。
そう。両方ある。
つまり世界でここだけなのよ。
『最後の晩餐』の修復前と修復後を
原寸で見比べることができるのは。
糸井 へぇーーー。
で、実際に見比べてみるとね、
その、修復したほうのやつがね、
これでいいのかイタリア人!
っていうくらいへたなんだよ。
一同 (笑)
糸井 へたって(笑)。
いや、ほんとうに。
まずいだろう、これ、
っていうくらいに。
糸井 それはあれでしょ、
雰囲気がないみたいなことで。
じゃなくてさ。
修復されたのだけ誰かが見たらさ、
「ダ・ヴィンチってけっこうへたじゃん?」
って言われかねないぐらい。
糸井 じつはダ・ヴィンチって
ほんとはへただったとか?
いやいや、そんなことはない。
修復前はうまいんだ。
糸井 そっちがじつはうそでさ。
うそってどういうことだ。
糸井 わかんないけどさ。
研究の結果、じつはへただった、とか。
X線をあてたりしてみたら、へただった。
ははははは、
おもしろいこと言おうとして、
言ってるだろう。
糸井 ふふふふふ。
そうじゃないんだ。
オレは、徳島まで見に行って、
ほんとうの感想を言ってるんだから。
糸井 ダ・ヴィンチはうまいって
決めつけてるじゃん。
はははははは、食いさがるねぇ。
ダ・ヴィンチは、いや、うまいだろ?
糸井 ははははははは。
それはもう、うまいだろ。
糸井 じゃあ認めようかな。
だって他の絵だってあるんだから。
『最後の晩餐』だけだったら、
そういう理屈もいえるけど、
他にもたくさんうまいのあるんだから。
糸井 あー、そうか、デッサンとかもあるね。
うん。
糸井 あれは誰かが
手を加えたわけじゃないもんなぁ。
うまいんだよ、ダ・ヴィンチは!
なんでこんなに
「ダ・ヴィンチは絵がうまい」ってことを
オレが力説しなきゃいけないのか、
よくわかんないけどさ。
糸井 ははははは。
じゃあ、しょうがないな。
うまいってことにしとこうか。
いや、だから、うまいんだよ。
糸井 それから、あともういっこ重大なのは、
伸坊はイラストレーターだった
っていうことだよね。
一同 (笑)
ははははははは。
糸井 ただ変なことを言うひとじゃないからね。
絵については正しいかもしれない。
うまいんだよ、ダ・ヴィンチは。
(結論、ダ・ヴィンチは絵がうまい。つづきます)


2010-06-16-WED