南 |
お水をおいしそうに飲んでるね。
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糸井 |
水はいいよ。
おいしいし、あと、ないとたいへん。
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南 |
たしかに。
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糸井 |
仮にこれがなかりせば。
よしんば。
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南 |
難しいことばをつかったね。
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糸井 |
よしんば山にはタヌキがおってさ。
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南 |
「船場山」だな、それは。
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糸井 |
よしんば、山にタヌキがいたとしたら。
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南 |
いたと仮定して。
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糸井 |
そうそう。
仮に、山にタヌキかなんかがいたとして。
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南 |
山だったかどこだったかに、
タヌキだかなんだかがいたとして。
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糸井 |
伸坊のお母さんだっけ、それ(笑)。
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南 |
そうです(笑)。
むかーし、呉智英が、
うちに電話してきたら、おふくろが出てね。
「あのー、南くん、いらっしゃいますか?」
って呉智英が言ったら、うちのおふくろが、
「えーと、誰だったかと、どこだったかに行く、
って言って、いま留守です」って。
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糸井 |
あははははは。
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南 |
なんにもわかんない(笑)。
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糸井 |
それ、伸坊、遺伝してるよ。
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南 |
そうかなぁ(笑)。
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糸井 |
しかし、その、お母さんの話はおもしろいなぁ。
「誰だったかと、どこだったかに行く、
って言ってましたよ」(笑)。
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南 |
それで、呉智英が、またさ、
「どなたと行くって言ってました?」
って聞いたんだよ、おもしろがって。
そしたらおふくろがしばらく考えて、
「誰だったかと」
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一同 |
(笑)
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糸井 |
いいなぁ(笑)。
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南 |
たしかに遺伝してるかもなぁ。
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糸井 |
ふふふふ。
もう、そういう話ばっかり、してたいね。
あ、今回のテーマは「猟奇的」だったのに
ちっとも猟奇的じゃなかったなぁ。
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南 |
糸井さん、なんか、歩きながら、
すごい猟奇的な歌、うたってたじゃない。
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糸井 |
なんだっけ。
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南 |
♪銭のためな~ら、女房も殺す~
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糸井 |
そうだ、そうだ(笑)。
♪それがどうした、文句があるか~
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南 |
ははははは。
猟奇っていうか、替え歌だな。
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糸井 |
替え歌、替え歌。猟奇替え歌。
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南 |
猟奇歌謡。
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糸井 |
根本敬監修。
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南 |
でも、ちっとも猟奇じゃないな。
なんていうか、銭のために女房殺すって
わりと殺人として筋が通ってる。
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糸井 |
そうか。
保険金殺人みたいなもんか。
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南 |
猟奇のくせに、
「それがどうした文句があるか」
っていうのも、ちょっとどうだろう。
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糸井 |
たしかにね。
「文句があるか」っていうのは、
文句があることをすでに想定してるよね。
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南 |
そうそう(笑)。
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糸井 |
ちっとも猟奇じゃない。
というか、オレらには、猟奇はムリだな。
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南 |
ムリだねぇ。
殺人もムリだな。
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糸井 |
殺人もムリだし、芝居もできないし。
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南 |
カニもエビも食べられないし。
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糸井 |
あいさつもできないし、
方眼の線も引けない。
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南 |
ハハハハハ。
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糸井 |
♪それが~どうした~
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南 |
♪文句があるか~
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糸井 |
思い出したんだけどさ。
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南 |
ウン。
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糸井 |
オレ、小学校5年生か6年生のとき、
自分のマーク、カニだったよ。
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南 |
なに? 自分のマークって。
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糸井 |
小学校のとき、
自分のマークとかつくらなかった?
なんか名前書いたりするときにつかうの。
それがカニだった。
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南 |
そのころはカニ、食べられたの?
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糸井 |
食べられない。
っていうか、群馬の小学生が
カニなんて食べるチャンスないよ。
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南 |
そういやそうだね。
子どものころ、カニなんて食った記憶がない。
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糸井 |
カニはただのカニだったんだ。
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南 |
カニマーク。
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糸井 |
伸坊は、なにマークだった?
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南 |
マークはなかったなぁ。
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糸井 |
じゃ、今度会うまでにつくっといてよ。
自分のマーク。
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南 |
わかった。つくっとくよ。
‥‥いや、つくらないな、きっと。
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糸井 |
ははははは。
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南 |
ハハハハハ。
(今回の「黄昏」は、これでおしまいです。
読んでいただき、ありがとうございました。
また、つぎの「黄昏」でね。
そして、新潮文庫版の『黄昏』を、どうぞよろしく) |