糸井 |
最近、歴史上の人物にはなった?
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南 |
うーん、最近は、現代の人物ですね。
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糸井 |
ああ、そうなんだ。
でもさ、伸坊の、
「オレが○○だったとき」
っていう語り方はすごいよね。
ほかの誰にもできない。
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南 |
ハハハハ。
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糸井 |
すごいよなぁ。
人生の中で「○○だったとき」って
言えちゃうんだもん。
ふつうの人はさ、せいぜい、
「お父さんが悪かったとき」とか
「お母さんが若かったとき」とかだぜ?
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南 |
レベルが違うね。
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糸井 |
違いすぎるよ。
「オレが松尾芭蕉だったとき」とか
「オレが織田信長だったとき」だもんな。
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南 |
「金太郎だったとき」とか
「天狗だったとき」まである。
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糸井 |
「オレが天狗だったとき」(笑)。
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一同 |
(笑)
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南 |
そういえばこないだね、原稿を頼まれたの。
法隆寺の展覧会が上野であるっていうんでね、
上野のPR誌っていうか、地方紙じゃなくて、
ええと、なんていうんだっけ、ああいうの?
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糸井 |
タウン誌?
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南 |
タウン誌、タウン誌(笑)。
もう、単語が出てこなくてネ。
タウン誌で、タウン誌、タウン誌、
タウン誌がね‥‥。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
ははははは。
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南 |
何度も言うと、覚えるかと思って。
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糸井 |
タウン誌をね。
で? そのタウン誌が?
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南 |
そのタウン誌がさ、法隆寺の展覧会というのを
今度、どこだかでやるんで、
「法隆寺とわたし」ということで、
なんか書いてくださいって言ってきて。
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糸井 |
どこが言ってきたの?
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南 |
え? ‥‥あ、タウン誌だね。
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糸井 |
タウン誌ね。
いま、ちょっと忘れてなかった?
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南 |
アハハハハ、え、なに言ってんの。
タウン誌、タウン誌だよ。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
大丈夫?
タウン誌の1冊や2冊、覚えといてくれよ。
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南 |
あと、「ブログ」っていうのも
覚えられなくてさ。
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糸井 |
ああー、「ブログ」ね。
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南 |
「あの、ほら、コンピューターの日記みたいな」
とか言っちゃうんだ。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
だいぶ遠くから(笑)。
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南 |
「コンピューター」からはじめちゃうからさ。
「え、なんのことでしょう」って言われて、
「あの、ほら‥‥」とか言ってるうちに相手が、
「あ、ブログですね」って。
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糸井 |
固有名詞どころじゃないよね。
いや、でも、オレもそれに近いよ。
新しいことばは、はなっから覚えてないもん。
「タウン誌」ぐらいだと
昭和のにおいがするから大丈夫だけどさ。
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南 |
タウン誌は、ブログにくらべたら
ずっと覚えやすいね。
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糸井 |
で、タウン誌に頼まれて?
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南 |
うん、タウン誌に
「わたしと法隆寺」の原稿を頼まれてね。
どうしようかなと思ってさ。
「わたしと法隆寺の付き合いは長い。
かれこれ50年は経っている」って。
つまり、修学旅行ではじめて行ったから。
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糸井 |
ははははは、オレもたぶん、そうだ。
法隆寺とのつき合いは50年くらいになる。
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南 |
で、それから何回行ったかって、
わりに正確に思い出せるわけ。
あの、いちばん最初の「黄昏」でしゃべった
「鎌倉に行った回数」よりは正確に。
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糸井 |
ああ、いちばん最初のシリーズだ。
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南 |
そうそうそう。
本の最初に載ってるやつ。
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糸井 |
そうだ、あの「黄昏」が、
なんと新潮文庫になったんだけどさ。
というか、それを記念して、
今回、しゃべってるんだけど。
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南 |
ウン。
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糸井 |
もともとの書籍を新潮文庫から出すにあたって、
新潮社の人が校正し直したわけだよ、あの本を。
そしたらさ、最初の鎌倉の話のところで
伸坊が「鎌倉の近代美術館に行った」
って言ってるんだよ。
「マグリットの展覧会を観た」って。
ところが、新潮社の人が校正し直して、
申し訳なさそうに言うには、
「すみません、鎌倉にある美術館を
ぜんぶ調べてみたんですが、
マグリットの展覧会は
一度も開催されてません」って。
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南 |
はっはっはっはっは!
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糸井 |
参ったよ。
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南 |
オレのところにも
「マグリット展、やってないんですけど、
どうしましょう?」って確認がきたんで、
やー、じゃあ、やんなかったのかもしれないすねぇ、
なんつって、そのままにしましたけど。
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糸井 |
担当の永田くんが悩んだ末、伸坊が言った
「あと、マグリットも行ったね。」ってところを
「あと、マグリットかなんか。」って直してた。
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南 |
アハハハハ、「かなんか」。
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糸井 |
あらゆるところを「かなんか」で
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南 |
いいね、「かなんか」ね。
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糸井 |
ロシア民謡みたいだね。
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南 |
そうそう。
「♪カーーーナンーーカ」
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糸井 |
「♪カカナン、カカナン」
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ふたり |
「♪カカナン、カカナ!」
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一同 |
(笑)
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南 |
それで、タウン誌にね。
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糸井 |
うん、そうだった、タウン誌に。
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南 |
もう、法隆寺とは
かれこれ50年からのつき合いだと。
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糸井 |
つき合いだと。
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南 |
2回目は高校のときに行ったんだけど、
薄暗いところで百済観音が
ボーッと立ってたのを覚えてるくらいで
ほとんど覚えていないと。
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糸井 |
うん。
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南 |
そのようなことを書いて、
まだまだ、たっぷり紙幅があるんで。
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糸井 |
ふふふふふ。
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南 |
これはもう、
持ちネタでいくしかない、って‥‥。
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糸井 |
聖徳太子だ!
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南 |
「私が聖徳太子だったときの話だが」と。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
はははははは!
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南 |
おそらく、編集部が、わたしに、
なぜ「法隆寺とわたし」なんてタイトルで、
原稿を依頼してきたかというと、
こういうことだろう、って。
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糸井 |
「オレが建てたんだ」と。聖徳太子として。
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南 |
はははは、そうそう。「建てました」
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糸井 |
聖徳太子に原稿発注してきたんだな。
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南 |
そうそう。
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糸井 |
で、原稿を発注してきたのは、どこ?
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南 |
ええとね‥‥‥‥タウン誌。
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一同 |
(笑)
(おもしろいけど、次回で終わりです) |