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糸井 |
最近、時代劇をいくつか観て思ったんだけどね。
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南 |
ウン。
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糸井 |
つっこまなくていいんだよね、時代劇って。
「そりゃないだろう」とかって言わなくていい。
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南 |
ん?
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糸井 |
たとえば現代ドラマだとさ、
ドラマみたいなセリフが連発されると
観てて居心地悪くなっちゃうんだけど、
時代劇はいかにも時代劇みたいなことを
どんどん言っても平気なんだ。
「目を見ればわかる」みたいなこと
言ってていいんだよ。
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南 |
「お女中、いかがなされた」
「持病のしゃくが‥‥」
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糸井 |
そうそう。
「しばらく見ないうちに、美しくなられて」
なんて言ってればいいわけでさ。
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南 |
「ごむたいな! 人を呼びますよ!」
「ふふふふふ、誰も来ぬわ」
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糸井 |
そりゃ「十手プレイ」だろう(笑)。
あれは違うよ、ひねりすぎ。
むしろ現代劇だ、あれは。
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南 |
ハハハハハ。
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糸井 |
そういうひねったことがなくていいから
観ていてラクなんだ。
ちょっと昔の時代劇なんか、
時代劇みたいなセリフばっかりだよ。
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南 |
時代劇だからね。
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糸井 |
時代劇だからさ。
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南 |
でも、最近の時代劇を観ててもさ、
オレたちがよく知ってるような
シチュエーションって
じつは、なかなかないんだよな。
たとえば、さっきの「誰も来ぬわ」の、
本来のシチュエーションも、ちっとも出て来ない。
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糸井 |
こう、フスマのむこうに蒲団があって。
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南 |
「人を呼びますよ」っていう展開ね。
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糸井 |
そこで、本来の「ふふふふふ、誰も来ぬわ」。
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南 |
本来の、ね(笑)。
それが、最近、ないんだよ。
昔は、いっくらでもやってたのに。
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糸井 |
かならずね。
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南 |
あとは、「お主も悪じゃのう」も
あんましやんないよ、最近は。
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糸井 |
ああ、そう。
やっぱり、笑われるのがイヤなんだろう。
あのへんはさ、時代劇っぽさを超えて、
コントっぽくなってるからさ。
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南 |
あとさ、掛け軸の裏の仕掛けも出てこない。
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糸井 |
掛け軸の仕掛け?
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南 |
こう、掛け軸の裏っ側にヒモがあってさ、
それをグッと引くってぇと、
畳がバタンって。
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糸井 |
あーー、そういうやつ。
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南 |
で、下に落ちると岩屋になってて、
そうこうするうちに
水が吹き出してくるね。
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糸井 |
それはさ、昔の時代劇のなかでもさ、
おんなじものをつかってたんじゃないの?
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南 |
え? あッ、そーか、
おんなじセット、使い回し。
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糸井 |
そうそうそう。
「じゃ、あのB棟のやつ、つかおうか」
っていうようなことでさ。
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南 |
「今回も、例の床の間のヒモ、
引っ張りますか?」って。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
そうそうそう。
だから、それを、なんかの理由で
取り壊しちゃったんだよ。
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南 |
アハハハハハ。
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一同 |
(笑) |
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糸井 |
もうあれはないんだよ。
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南 |
B棟、壊しちゃったからなぁ。
じゃあ、「誰も来ぬわ」がないのは?
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糸井 |
それはね、赤い蒲団を焦がしちゃった。
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南 |
ハハハハハ、行灯を倒して。
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糸井 |
そうそうそう(笑)、
行灯も蒲団もいっぺんに
なくなっちゃったから、
こう、一回、足が遠のいた
定食屋みたいなもんでさ。
「なんか、行かなくなっちゃったね」と。
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南 |
あいわかった。
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一同 |
(笑) |
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(そろそろ、終盤。まだつづきますけど) |