糸井 |
クマゲラっていうのは、
キツツキの仲間でね。
その種類のなかでは、
ものすごく大きい鳥なんだけどね。
なにしろ、名前に「クマ」って入ってるくらいだから。
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南 |
デカい。
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糸井 |
デカくて、黒い。
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南 |
ほう、ほう。
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糸井 |
で、なによりの特徴としては、
もう、彫る、彫る。
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南 |
木を?
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糸井 |
木を。
ふつうに彫るだけでもそうとう彫るんだけど、
なんか、本気の高速モードみたいなやつがあって
それが、もう、彫る、彫る。うがつ、うがつ。
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南 |
あはは、いいねぇ、うがつ、うがつ。
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糸井 |
しかもね、クチバシの先が、
縦にノミ状になってる。
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南 |
へぇー。
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糸井 |
で、ね。つぎがポイントなんだ。
ここは、みなさん、素直になって聞いてほしい。
そんなにガンガン彫ってたらさ、
クマゲラの頭は、ちょっとヤバいと思わない?
つまり、脳にものすごい振動が伝わるわけでさ。
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南 |
ああ、思うよ。
クマゲラ、脳に支障が出ると思うよ。
クチバシと脳が近すぎる。
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糸井 |
ありがとう、ありがとう。
ぼくはそういう素直な感想が聞きたかった。
あのね、おじさん。そこのおじさん。
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南 |
‥‥オレ?
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糸井 |
そう。そこの、おにぎりみたいなおじさん。
クマゲラは頭がダメになっちゃうんじゃないかって
すごく心配してるおじさん。
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南 |
ウン、すごく心配だな。
クマゲラの脳みそがもう、ドーロドロだろ!
すごく心配だぞ、おじさんは!
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糸井 |
ご心配なく、おじさん。
あのね、ぼくたちクマゲラの頭はね、
ここのおでこのところが
ちょっと特別なつくりになってるんだ。
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南 |
クマゲラになっちゃったのか。
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糸井 |
ぼくはクマゲラだよ、おじさん。
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南 |
どうなの?
キミ、ドーロドロじゃない?
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糸井 |
ご心配なく、おじさん。
ぼくたちの頭の前のほうはね、
ちょっとした空洞みたいになっててね、
そこに、ジェルみたいな、やわらかい、
ボンヨヨヨンとしたものが入ってるんだ。
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南 |
へーーー。
ボンヨヨヨンが?
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糸井 |
ボンヨヨヨンが。
それが、ショックアブソーバーみたいになってて、
木を彫るときの振動を吸収するから、
ぼくらの脳みそは平気なんだよ。
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南 |
ホーーー。
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糸井 |
すごいだろ?
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南 |
あ、戻ったね。クマゲラから。
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糸井 |
いつまでもクマゲラやってらんないよ。
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南 |
いや、しかし、知らなかった。
教養、あるじゃない、まだまだ。
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糸井 |
うん。まぁ、ね。でもさ、これ、
NHKの『ダーウィンが来た』でやってたの。
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南 |
あ、そう。
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糸井 |
だからさ、けっきょくオレは、
テレビで観たものを
ただしゃべってるだけなんだ。
教養のかけらもないだろう?
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南 |
ははははは、いや、しかし、
そもそも「ブータンの夜這いの話」も、
オレがテレビで観たってだけの話だからね。
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糸井 |
あ、そうだ。
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南 |
それがなきゃ、
このブータン行きだって
なかったわけだしさ?
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糸井 |
そうそう、そのとおり。
あの伸坊の「ブータンの夜這いの話」を
ブータン政府で働いている日本人女性
(御手洗瑞子さん)が読んで、
そこからつながってここまで来たんだから。
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南 |
だから、やっとくべきだね、
テレビで観ただけの話でもなんでも。
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糸井 |
そうだねぇ。
じゃ、行く? ぼちぼち?
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南 |
ブータンに?
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糸井 |
うん。ブータンに行こう。 |
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(次回からブータンの風景をたくさん。つづきます。) |