糸井 |
こういう、
高い山の上なんかに来るとさ。
|
南 |
うん。
|
糸井 |
「たかやま病」にかかる人がいるらしい。
|
|
南 |
それは‥‥高山(こうざん)病かな?
|
糸井 |
あっ、高山病っていうのか!
「たかやま病」だと思ってたよ。
‥‥っていうのをね、
日本にいるときに、思いついたんだ。
|
南 |
そうなの?
|
糸井 |
うん。
ブータンで、高い山にのぼったときは、
ぜひ言ってみたいなと。
|
|
南 |
計画どおり、ちゃんと言えたね。
|
糸井 |
うん。でも、思いついたときのほうが
ずっとおもしろかったな。
|
南 |
そういうもんだろう。
|
糸井 |
真面目な話、伸坊は平気?
高山病は?
|
|
南 |
いま? うん、大丈夫。
|
糸井 |
ぼくは、伸坊から、
ブータンで高山病になる人がいる
っていう話を聞いてたから、
ちょっと恐れてたんですよ。
でも、大丈夫みたい。
|
南 |
お互いに大丈夫そうで、よかったねえ。
|
糸井 |
高山病っていうのは、
船酔いみたいなものとは違うんだよね?
|
南 |
うーん、あのね、最初は、
ひどい風邪みたいになるんだって。
|
糸井 |
風邪かー。
|
南 |
困るよね、風邪は。
喘息は、風邪、まずいんだ。
ほかの病気と区別がつきにくいし。
あの、こないだね、その風邪をひいちゃった。
|
糸井 |
うん。
|
南 |
ものすごく息苦しくなっちゃってさ。
「喘息のひどい発作が来た!」
って勝手に思い込んじゃったんだ。
で、喘息の薬を、多めに服用しちゃった。
|
|
糸井 |
それは、だめだろう。
|
南 |
だめなんだ。
で、いよいよ苦しいってんで、
近所の救急病院に行った。
それも、近所だからって
歩いて行っちゃった。
|
糸井 |
だめだろう。
|
南 |
だめなんだ。
そしたら、当直している人が、
インターンじゃないかなっていうような
すごく若い女の先生でね。
まず脈を測ってくれたんだけど、
ものすごい頻脈だった。
|
糸井 |
「ひん脈」?
その「ひん」は、貧乳の「貧」?
|
南 |
そうそう。
|
糸井 |
「頻繁」の「頻」?
|
南 |
そうそう。こう、頻繁に脈打ってるわけ。
|
糸井 |
どっちなの?
|
|
南 |
え?
|
糸井 |
頻繁な脈っていうことは、
貧乳の「貧」ではないんだな。
|
南 |
え、違う?
「ひんにょう」と「ひんぱん」。
同じ「ひん」でしょ?
|
糸井 |
貧乳の「貧」と、頻繁の「頻」は違うよ。
|
南 |
え? オレ、なんか勘違いしてる?
|
|
糸井 |
貧乳の「貧」は、貧乏の「貧」だよ。
|
南 |
「頻尿」と「頻繁」と「頻拍」、
同じじゃない?
|
糸井 |
「頻尿」じゃないよ、
オレが言ってるのは、「貧乳」、「貧乳」。
|
南 |
ああ、そうか、そうか。
アハハ、「貧乳」ってさぁ、
こういう話のとき出てこないでしょ?
|
糸井 |
それを出すのがオレたちじゃない。
|
南 |
はははははは!
|
|
一同 |
(笑)
|
糸井 |
南ひん坊。
|
南 |
ふははははは。
あのね、オレはいつも真面目に話してるんだよ。
|
糸井 |
ウソだ。
|
|
一同 |
(笑)
|
糸井 |
で、大丈夫だったの?
|
南 |
いや、それでね、機械をつなげて脈を測ったら、
数値がすごく高いもんだから、
いきなり、警報みたいな音が鳴るわけ。
|
糸井 |
ピンポーン、ピンポーンみたいな。
|
南 |
そうそう。
ところがさ、そのインターンっぽい先生が、
警報が鳴り出すとすぐ止めるんだよ、機械を。
ピンポーンの「ピン」くらいで、ぱっと止める。
|
糸井 |
はははは、慌ててるんだ。
|
南 |
そうそうそう。
どうしよう、どうしよう、
って小声で言ってるんだ。
|
糸井 |
で、どうしたの?
|
南 |
そうこうしているうちに
ものすごく水が飲みたくなってね、
すいません、水一杯いただけますか
って言ったらさ、
ちょっと待ってください! って、
なかなか水、くんないので、
トイレに行くって言って、
ウォーターサーバーの
ところに行ってね、
ガブガブガブガブ、水を飲んだんだ。
そしたら、どうもそれがよかったみたいで。
|
|
糸井 |
あ、なるほどね。
それは、話を聞いてるだけで、
なんか、よさそうな気がするもんね。
いま、水飲んだ話を聞いただけで、
「それはいいんじゃない?」って思ったもの。
|
南 |
なんか、ほんとに、それがよかったんだよ。
ところがそのお医者さんは、帰ってきても
まだ、どうしようどうしよう言っててさ。
|
糸井 |
ははははは。
|
南 |
今日はベッドもないし、とりあえず、
いったん、おうち帰ってみてはどうですか、
なんていうから、帰ったよ。歩いて。
|
糸井 |
じゃ、ひとりで病院行って、
水飲んで帰ってきたわけ?
|
南 |
うん。でも、ひとりじゃなくて、
うちのもいたんだけどね。
|
|
糸井 |
あ、妻、いたのか。
そういうときに、
話に登場しないのがいいね、妻。
|
南 |
ふふふふ。
(きれいでしょう、ブータンの風景。つづきます。) |