黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第16回 第16回 種なしスイカへの苦情。
ジャムって、まだつくってるの?
糸井 つくってるよ、相変わらず。
こないだは、柿のジャムをつくった。
柿。へー。
糸井 そんなにおもしろくもないんだ、
柿のジャムは。すぐできるから。
そうなんだ?
糸井 うん。
種だけ取っちゃえばたいして苦労もなく。
あ、でも、こないだの柿は
「種なし」だったな。
柿も「種なし」になってるのか。
なんか、最近の果物は、
どんどん種がなくなってるような。
糸井 そういうふうに改良してるんだろう。
よかれと思って。
けど、スイカなんかは、元に戻ったね。
「種なしスイカ」っていうのが昔、
ちょっと流行りかけたじゃないですか。
糸井 あー、そうだね。
でも、いつの間にか見かけなくなった。
糸井 そういえばないね。
評判よくなかったんだな。
糸井 苦情が来たりしたんだよ、きっと。
苦情?
糸井 あの、昔さ、男を侮辱するときに、
「この、種なし!」とかって言ったじゃない?
それを連想させてよくないっていう
メールがたくさん来たんじゃないかな。
なんだそれ(笑)。
糸井 「種なしスイカという名前を見て
 傷つく人がいると思います!」
みたいなメールがたくさん届いたんだよ。
どこに?
糸井 農家の、おじさんのところにさ。
おじさんのところに、メールが。
糸井 うん。
「『種なし』だなんて、
 ショックです!」みたいな。
「がっかりです!」みたいな。
で、スイカの種は、元に戻すことにした。
ま、絵的には、スイカの種は、
重要なアクセントになるから、
ぜひ、あってほしいんだけどね。
糸井 ああ、絵的にね。
そう、絵的にいうと、ないと困る。
糸井 じゃあ、「種なしスイカ」が主流になると、
「絵的に、種がないのは傷つきます」
っていうメールが来ちゃうね。
なんでもメールだね、最近は。
糸井 なんでもメールだよ。
「絵的に、ショックです」
「絵的に、がっかりです」
っていうメールが、じゃんじゃん来ちゃう。
‥‥あ、晴れてきたね。
糸井 そうだね。
なんか、いい天気になってきたじゃない。
糸井 最近、伸坊と旅に来ると、
いっつもこういう展開だね。
どこかで1回、ものすごい雨が降って、
そんで晴れるっていう。
ほんと、そうだねー。
でも、なかなかいい雰囲気だ。
糸井 雨降って、地‥‥濡れる。
しっとりとした風景になったね。
まるで日光に来たかのような。
ほんとだ。日光みたいだ。
糸井 日光なんだけどね。
日光だね。
糸井 「日光と言うな!」
「日光と言うな!」
糸井 伸坊は日光の方が好きで、
奥さんは月光が好きなんだよ。
はははは、逆だよ、逆(笑)。
糸井 あ、逆か(笑)。
知ったかぶりしちゃったな。
ひとんちの夫婦のことなのに。
ははははは。
(晴れてきたみたいですね。つづきます)

2009-10-18-SUN

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