こんにちは、テクノ手芸部さん。(前編)

「テクノロジー」と「手芸」を組み合わせて
一体となっているから、「テクノ手芸」。
この言葉、メンバーのかすやきょうこさんと
よしだともふみさんが考えたものだそうです。

そうは言っても、いったいどんなものを
「テクノ手芸」って呼ぶんでしょう。
おふたりのアトリエにおじゃまして、
実際にこれまでの作品を見せていただきながら、
話をきいてきましたよー。

▲よしだともふみさんとかすやきょうこさん。
 このふたりが「テクノ手芸部」です。
 アトリエで、作品をたくさん用意して待っていてくれました。
ほぼ日
こんにちは、おじゃまします。
アトリエ、地下にあるんですね。
秘密結社の基地みたいでかっこいいです。
かすや
ふふふ(笑)。
▲テクノ手芸部さんのアトリエに続く地下への階段。
 照明にもなっている「緑色のネコ」は
 テクノ手芸部のシンボルなのだそうです。
ほぼ日
でも、アトリエという印象とは
なんだかちょっと遠いかも。
入り口には瓦屋根がついていましたし、
全体的にお店っぽいですね。
よしだ
じつはここ、以前は居酒屋だったんです。
だから間取りがお店っぽいんです。
▲どうやら「文明」という名前の居酒屋だったらしいです。
よしだ
ちなみにここ、ぼくらの占有じゃないんですよ。
ぼくの後輩が借りている場所を、
さらに数名のクリエイターが
間借りしているんです。
ほぼ日
「シェアオフィス」というか
「シェアアトリエ」のような感じですね。
よしだ
はい。ぼくらのスペースは、
だいたいこのあたりで。
▲これがその「このあたり」。
 棚2段に、テクノ手芸に使う材料や
 荷物が置いてありました。
かすや
整理が行き届いていないので、
お見せするのが恥ずかしいのですが‥‥。
▲あんまり手芸っぽいものは、ないような?
 どちらかというと工具や材料がいっぱい。
ほぼ日
さっそくですが、作品を‥‥。
おお、手芸というだけあって
モフモフしたものがありますね。
あれ? 光ってます?
▲モフモフしているウサギの目が光っている!
よしだ
光っております。
ヘビも光ります。
▲ヘビも光った! しかも、モフモフ!
かすや
ネコも光ります。
▲写真がわかりにくいですが、光ってます!
 ちなみにこちらはモフモフしていません。
よしだ
これ、基板がそのまま
ネコの形になっているんです。
ほぼ日
ああ、なるほど。
このキリンもきっと光りますね!
▲このキリンもきっと‥‥!
よしだ
あ、キリンは‥‥。
かすや
倒れます。
ほぼ日
倒れる?
かすや
キリンの首の根元あたりに
手をかざしてみてください。
ほぼ日
(手をかざす)
▲カッコーーーーーーン!!!
ほぼ日
うわぁっ!
びっくりしたー!!
手をかざしただけで倒れましたよ?
これは、ちょっとこわいですよ!
よしだ
センサーが反応して足が前に出ることで、
全体のバランスを崩して倒れるんです。
ほぼ日
豪快に倒れたのでびっくりしました。
あの、こういったものが
「テクノ手芸」‥‥なのですよね。
いえ、疑問を呈しているわけではありません。
モフモフしたものばかりだと思っていたもので
ちょっとびっくりしたのです。
こういう「工作寄り」のものも、
おおきく「テクノ手芸」であると。
かすや
はい、そうです。
ほぼ日
ちなみに、なぜこういうものを
つくろうと思われたのですか。
モフモフして光るものは
かわいい感じがするんですけど、
倒れちゃうっていうのは‥‥。
かすや
子どもが親の気を引こうとして
ウソ泣きとかをするじゃないですか。
ほぼ日
ハイ。
かすや
そういうイメージで作っているんですよ。
ほぼ日
あ‥‥?
かすや
実はこれ、
プロトタイプは誤動作だらけだったんです。
安い部品を使っていたので
打ち合わせをしているときに、
遠くのほうで勝手に「ガッシャン!」と。
▲「はじめはわたしもおどろきました」
ほぼ日
まさに子どもが親の気を引いている状態ですね。
よしだ
電池が切れそうになると
倒れて震えたりしていました。
ほぼ日
ちょっとこわくもありますね。
かすや
それがなかなかよかったんですが、
ちゃんとした部品を入れたら、
すごく行儀の良い子になっちゃって。
安い部品をつかっていたときは、
「ほんとうに気を引こうとしている」
という感じが出ていたのに。
ほぼ日
じゃあ、わざと、こういう大胆な
倒れ方をするように、調整を。
かすや
そうなんです。
工学的な制作物って、
基本は「思い通りに物が動く」ことが
とても大切なんですよ。
でもこのキリンの場合はそうじゃない。
ほぼ日
なるほど、
きっとそこが大事なところなんでしょうね。
だって思い通りに動く行儀のいい子は、
電子工作そのものです。
「テクノ手芸」と言いたくなる、
「かわいらしさ」や
「にくめなさ」みたいなものは、
電子工作では出しにくい。
よしだ
そうなんです。
楽しいとか、おもしろいとかっていう、
ぼくたちが表現したいと思ったことは、
必ずしも、
プログラムしたとおりに
動く物にはないんですよ。
ほぼ日
たしかに、
「裏切られる」ような感覚っていうのは
工作機械が目指すものじゃないですよね。
そう思ったら、
テクノ手芸の作品たちが、
だんだんかわいく見えてきました。
ほんとうに生きているみたいだし‥‥。
よしだ
うさぎのマスコットの目が光っているだけで、
意思があるように感じませんか?
ほぼ日
うんうん、やや、ワルそうというか、
なんかちょっと企んでそうですよね。
▲きみらはいったい何を企んでいるのだ。
 「フッフッフ‥‥チキュウセイフク‥‥」
 (勝手にアテレコしました)
かすや
わたしたちがつくる作品には
いつくかのパターンがあるんですけど、
そのひとつが「光らせる」ことです。
これって電気回路の図にすると、
「スイッチ」と「電池」と「LED」だけという
すごく単純な構造です。
でも、電気回路がシンプルでも、
モチーフや素材をちがうものにすれば、
いろんな作品が生まれる。
理系の世界だと、
「これって、構造ぜんぶ一緒じゃん」で終わり。
ほぼ日
ぜんぶスイッチと電池とLEDでできているのに、
そこに人格や性格みたいなものがイメージできるのが、
「手芸」の部分だってことですね。
よしだ
ぼくたち、ワークショップを開くんですが、
電気回路は同じものでも、
つくる人によって全くちがうものが
できあがってくるんですよ。
素材の色とか作品の大きさとかがまちまちで、
みんなそれぞれ楽しい。
これが、ほんとうにおもしろいんですよ。
▲「どの子もかわいい!」
かすや
わたしたちのワークショップでは
いつも終わりのほうで
つくった子の名前や出身地を
話してもらうようにしているんです。
ほぼ日
「北九州生まれのタケシくんです。
 およめさんは美人です」
みたいな?
かすや
そしてみなさん、最後におっしゃるのが
「この子をよろしくお願いします」。
よしだ
もうワークショップは終わるのに
「みなさーん、これからどうぞ
 よろしくお願いします!」って。
ほぼ日
へぇー! 感情移入ができてる。
そもそも自己紹介をするということが
おもしろいです。
よしだ
電子工作のワークショップじゃ
絶対にない光景ですよね(笑)。
(後編につづきます)
2014-11-05-WED