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テレビ逆取材・
クリエイティブってなんだ?

第4回 「やりたいと思ってやっている」では、
    何かがこぼれ落ちてしまうような気がする



ディレクターの長嶋甲兵さんと根岸弓さんの
対談撮影前の状態での気持ちを伺っています。
前回の最後に、darlingが「ほぼ日」を
表現者としてはじめたのか?編集者としてか?
という話になっていきましたが、
実はこの話は鼠穴で伺っており、
darlingは横のソファで昼寝をしていたんです。
だから、起こして聞いてみることにしました。



(打ち合わせの様子)


根岸 ・・・隣で寝てるから、聞いたら早いって(笑)。
糸井 (隣で寝てた)あ・・・起きた。
いやあ、そのことは、わかんない。
わかってりゃ昔のまんまじゃないですか。
根岸 ・・・ほんとに起きてるのかなあ?(笑)
私は、編集者としての糸井さんと
編集者としての見城さんみたいにやっちゃうと、
もったいない部分が落ちてしまうかなという気がして。
長嶋 まあ、その辺は、やっていく中で。
基本的にはどの対談にも、
根底にある思いみたいなものが
出てくるんじゃないかしら。

3人それぞれは、1つの試合で
決闘でポーンと弾を撃てばいいけど、
糸井さんはその3人共と、
その時々に撃ち返したり
切り返したりしなければいけないから、
結構大変だなあ、とは思いますよ。
糸井 さっき長嶋さん達の事前の取材で
「わくわくしますか?」と聞かれたのに答えて
自分で言って自分でびっくりしたんだけど。
・・・嫌ですよね。わくわくしないですよ。
「わくわくする奴なんていないよ」なんて、
俺はじめて思ったもん。でも、よく考えたら、
誰かに会えて嬉しいなんてことは、
他にも、ないですよ。
根岸 「ほぼ日」でいろんな人に会いに行って
話をしている糸井さんは、
おもしろそうに見えるけど?
糸井 それはおもしろかったです。
でも会う前にわくわくすることはない。
歌手だったら、コンサートに行く時はうれしいけど、
話に行くときには、わくわくなんてしないですよ。
根岸 私たちも糸井さんに話をしにくるとき、
わくわくはしないです(笑)。
それと似ているのかなあ。
糸井 ・・・いやあ、やなもんですよね〜(笑)。
その「わくわくしないこと」は、
自分でもはじめて知ったよ。
「聞きたいこと」とか「知りたいこと」って、
ほんとはあるのか?という疑いが僕にはあるんです。
根岸 「ポンペイ展」の時なんて、
すごく聞きたいことがあるように思ったけど。
糸井 相手がすごく面白いことを言ってくれるから、
この人をもっと面白いと思いたいから、
僕は話の展開を一緒に手伝うんですよ。
自分と興味が重なっていたらうれしいじゃない?
だから現場はうれしかったり楽しかったりするんだけど、
でも、「したいこと」って、
俺、ほんとはないんじゃないかな?
長嶋 確かに、メディアがなかったら、
僕らも人に会いに行かないですよね。
糸井 しないですよね・・・。
こう言うと今までの概念の中では
「やる気のない嫌な奴だ」
とみんなに蹴落とされそうなんだけど、
でも「やりたいことのある奴が一体何をしたんだよ」
というところで、意地を張りたいなとも思います。
「やりたいと思ってやっている」と言ってしまうと、
何かたくさんこぼれてしまうものがあるんですよ。

「飯を食わないでやってきた奴は信用できない。
 僕のやってきたことはみんな飯を食うためだ」
と、吉本隆明さんが、よく言うじゃない?
そこまで裸になってくれないと、
こぼれてしまうことが多すぎる。
表現する人はみんな
「決意のほどはどうですか?」
とマイクを向けられているじゃないですか。
あれに答えるのは、うそだと思うんです。
長嶋 そうです。それはそうです。
糸井 単なる趣味なら、もっとわくわくするけど。
釣りの大会とかね。
長嶋 僕が今回「ウエスタン」と言っているのは、
そういうことがあるからなんです。
つまり「本気の対談はないでしょ」と言ってるの。
そこの見事な勝負を、勝負に見えればいいわけでしょう?
ほんとの決闘というわけにはいかないでしょう?
テレビで生きるか死ぬかまで、命をかけられないから。
糸井 命をかけていないのにも関わらず
命をかけているふりをするものに対する
嫌な感じは、ありますよね。
例えば、今、長嶋さんが言っているようなことを
テレビ屋さんたちが集まっているところで言えば、
すぐにひんしゅくを買いますよね。
「俺は命張ってやってるんだ!」って言われる。
でも、それに対して「このやろう!」
と思う気持ちがあるから、仕事って楽しいんだよね。


★「メディアがなかったら、人に会わないよね」
 という長嶋さんの言葉が、とても新鮮でした。
 「やりたいこと」を決めてしまうことについては、
 次回にもひき続き触れられていきます。
 darlingなりの「クリエイティブ」にも
 関わっていく言葉になってゆきます。


(つづく)


2000-07-31-MON

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