根岸 |
・・・隣で寝てるから、聞いたら早いって(笑)。 |
糸井 |
(隣で寝てた)あ・・・起きた。
いやあ、そのことは、わかんない。
わかってりゃ昔のまんまじゃないですか。 |
根岸 |
・・・ほんとに起きてるのかなあ?(笑)
私は、編集者としての糸井さんと
編集者としての見城さんみたいにやっちゃうと、
もったいない部分が落ちてしまうかなという気がして。 |
長嶋 |
まあ、その辺は、やっていく中で。
基本的にはどの対談にも、
根底にある思いみたいなものが
出てくるんじゃないかしら。
3人それぞれは、1つの試合で
決闘でポーンと弾を撃てばいいけど、
糸井さんはその3人共と、
その時々に撃ち返したり
切り返したりしなければいけないから、
結構大変だなあ、とは思いますよ。 |
糸井 |
さっき長嶋さん達の事前の取材で
「わくわくしますか?」と聞かれたのに答えて
自分で言って自分でびっくりしたんだけど。
・・・嫌ですよね。わくわくしないですよ。
「わくわくする奴なんていないよ」なんて、
俺はじめて思ったもん。でも、よく考えたら、
誰かに会えて嬉しいなんてことは、
他にも、ないですよ。 |
根岸 |
「ほぼ日」でいろんな人に会いに行って
話をしている糸井さんは、
おもしろそうに見えるけど? |
糸井 |
それはおもしろかったです。
でも会う前にわくわくすることはない。
歌手だったら、コンサートに行く時はうれしいけど、
話に行くときには、わくわくなんてしないですよ。 |
根岸 |
私たちも糸井さんに話をしにくるとき、
わくわくはしないです(笑)。
それと似ているのかなあ。
|
糸井 |
・・・いやあ、やなもんですよね〜(笑)。
その「わくわくしないこと」は、
自分でもはじめて知ったよ。
「聞きたいこと」とか「知りたいこと」って、
ほんとはあるのか?という疑いが僕にはあるんです。 |
根岸 |
「ポンペイ展」の時なんて、
すごく聞きたいことがあるように思ったけど。 |
糸井 |
相手がすごく面白いことを言ってくれるから、
この人をもっと面白いと思いたいから、
僕は話の展開を一緒に手伝うんですよ。
自分と興味が重なっていたらうれしいじゃない?
だから現場はうれしかったり楽しかったりするんだけど、
でも、「したいこと」って、
俺、ほんとはないんじゃないかな? |
長嶋 |
確かに、メディアがなかったら、
僕らも人に会いに行かないですよね。 |
糸井 |
しないですよね・・・。
こう言うと今までの概念の中では
「やる気のない嫌な奴だ」
とみんなに蹴落とされそうなんだけど、
でも「やりたいことのある奴が一体何をしたんだよ」
というところで、意地を張りたいなとも思います。
「やりたいと思ってやっている」と言ってしまうと、
何かたくさんこぼれてしまうものがあるんですよ。
「飯を食わないでやってきた奴は信用できない。
僕のやってきたことはみんな飯を食うためだ」
と、吉本隆明さんが、よく言うじゃない?
そこまで裸になってくれないと、
こぼれてしまうことが多すぎる。
表現する人はみんな
「決意のほどはどうですか?」
とマイクを向けられているじゃないですか。
あれに答えるのは、うそだと思うんです。 |
長嶋 |
そうです。それはそうです。 |
糸井 |
単なる趣味なら、もっとわくわくするけど。
釣りの大会とかね。 |
長嶋 |
僕が今回「ウエスタン」と言っているのは、
そういうことがあるからなんです。
つまり「本気の対談はないでしょ」と言ってるの。
そこの見事な勝負を、勝負に見えればいいわけでしょう?
ほんとの決闘というわけにはいかないでしょう?
テレビで生きるか死ぬかまで、命をかけられないから。 |
糸井 |
命をかけていないのにも関わらず
命をかけているふりをするものに対する
嫌な感じは、ありますよね。
例えば、今、長嶋さんが言っているようなことを
テレビ屋さんたちが集まっているところで言えば、
すぐにひんしゅくを買いますよね。
「俺は命張ってやってるんだ!」って言われる。
でも、それに対して「このやろう!」
と思う気持ちがあるから、仕事って楽しいんだよね。 |