糸井 それは、つまり、
昭和33年
(長嶋茂雄さんがジャイアンツに入団された年)
より前のことですよね。
徳光 ぼくは昭和38年入社ですから、その後です。
糸井 じゃあ、もうすでに
長嶋さんが活躍してるのを見ながら、
徳光さんは、憧れていたんですね?
徳光 そうですね。
ミスターとぼくは6年違います。
それこそ長嶋さんに憧れて、
立教大学を受けたぐらいですので。
糸井 そうか、そうか、そうか。
立教大学が有名になったのは、
長嶋さん、ということがありますよね。
徳光 私なんかは、受験に行ってはじめて
キリスト教系の学校だと知ったんですからね。
「俺んちは天台宗だけど大丈夫かな?」
って思いました。
一同 (笑)
糸井 砂押(邦信)監督も立教大学ですよね。
徳光 そうです、そうです。
糸井 考えてみれば、立教の人って
ちょっとひと味違いますね。
細野晴臣さんもそうです。
立教出身の一角って、
系統図とは違うところに、
柱が立ってる印象があるなぁ。
『シコふんじゃった。』も、
立教が舞台でしょ?。
徳光 そうですね。
周防(正行)さんも立教ですね。
みのもんたも、古舘伊知郎も、関口宏も、
みんなそう。
亡くなった土居まさるも立教で同級生でした。
NHKの加賀美幸子も同級生なんですよ。
糸井 偶然に聞こえるけども、
どこかで何かあるんでしょうね。
徳光 あの学校はテレビ用に
いい頃合いなんじゃないでしょうか。
よすぎもしないし、
なんとなくおもしろいし、目立つし。
糸井 だけど、アナウンサーの多さは
不思議です。
徳光 卒業生の数から言いますと、割合と不思議ですね。
糸井 長嶋さんの後を追いかけて
みんなが入ったように、
徳光さんが影響した部分というのはないですか?
徳光 えぇとね、手前味噌になるんですけども、
古館はよくそう言ってます。
糸井 あぁ、なるほど。
徳光 アナウンサーになろうと思ったきっかけは、
ぼくのプロレス中継を聞きながら
「あ、これは自分も行けそうだな」
と思ったことだそうです。
糸井 うーん、独特の文化が混交している、
出島みたいな学校だなぁ。
徳光 政治家が少ないとか、そういう特徴も
ありますね。
糸井 「力だけ」という感じがします。
背丈のとおりになって「楽しかったぁ」
みたいなことを、みんな言いそう。
徳光 そのとおりです。
うまいことおっしゃいますねぇ?(笑顔)
「身の丈」ですよ。
糸井 「身の丈」ですよね。
徳光 幸運に乗っかりますと、
古舘にしましても、
みのにしましても、
ぼくもそうなんでありますけども、
「身の丈」を忘れて
口先で家を建てちゃう
ようなところがあって
よくないですねぇ。
一同 (笑)
糸井 立教の「身の丈」のせいかどうか
わからないんですが、
徳光さんは
しっかりと遊んでらっしゃる感じがするんです。
どうやら仕事もしてるのはわかります。
人から見たら、十分にしてらっしゃると思います。
病気してたことも知ってます。
全部やっても、なおかつ
自分の時間を確実に
譲り渡さずに持ってる気がするんですよ。
徳光 あぁ。
それはもう、私にとりましては
最大の賛辞です。
そんなうれしい分析はないと思います。

自分でも、遊びと仕事の境界線が
ちょっとわからないところがあるんです。
糸井 うん。
そうだと思いますよ。ぼくもそうです。
徳光 仕事もときどき遊びになってます。
糸井さんは大病をしたことが
ないかもしれませんけど、
ぼくは9年前に心臓疾患で倒れて
救急車で運ばれました。
そのとき、一般道が混んでたんで、
救急車の人が、
「首都高速乗れ、首都高速乗れ」
とおっしゃっているのが聞こえました。

そのときもやっぱり、
「あ、俺は、テレビ出てるんだし
 サービスしなきゃ」
と思って、
「首都高速乗るんですか?」
と言いました。
「心筋梗塞じゃないんですか」
一同 (爆笑)
徳光 「あなたは黙ってなさい!」
みたいなことを
救急車の方に言われました。
これ、嘘のように聞こえますけども、
本当の話です。
笑いは取れなかったんですけれども。
糸井 (笑)信じます、信じます。
徳光 でも、そういうような人生です。
「なんか楽しく生きたいな」
ということなんですよ。
糸井 わかります。
ぼくも病院で、
誰にも喜ばれない冗談をよく言ってます。
徳光 あ、そうですか(笑)、やっぱり!
糸井 「舌を見せてください」
と言われたときに、
ちょっとベルトに手を
かけるフリをしたり。
徳光 いいですねぇぇ(笑顔)。
糸井 それは、仕事でも遊びでもなんでもなくて、
人間の義務じゃないかな? なんて、
大げさに言えばね。
徳光 「ぼくに課せられたもしかしたら、
 才能かな」
というふうに思いながら。
糸井 「力があるんだったら、出すべきじゃないか」
徳光 そうですね。
せっかく思いついたものを、
黙ってることないですよ。

(つづきます)

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2010-12-22-WED