糸井 「てっぺん」ということから
ちょっとそれるかもしれないんですが、
最近、宇多田ヒカルさんと
ツイッターでやりとりをしたことがあって。
徳光 ああ、宇多田さん、いいですよね。
糸井 あの人はすごいと思います。
徳光 ぼくはよく理解してないとは思うんですが、
宇多田ヒカルという人は、おそらく
「3分間で答えを出せる」という
そういったような頭を持ってるんじゃないかな。
糸井 ああ、なるほど。
徳光 何かこう、問題が与えられたとします。
3分で答えが出なかった人というのは
クリエーターには向かないし、
営業マンにもまず向かないと思うんです。
そういうものを持っている、
数少ないアーティストではないかな。
糸井 その、「3分」というところまでは
よくわからないんですが、
自分がうまく行ってるときって、たいてい
からまった複数の問題を分けちゃって、
「やるかやらないか」を決めるだけ、
という場合が多いですね。
だから、答えを出せる。
どんなに難しい問題でも、分解して
「するかしないか」になっちゃうと、
「イエスかノーか」だけになります。
徳光 なるほど、なるほど。
糸井 Aの言葉とBの言葉の選択で悩んでるときに、
「まだまだCもDもあるしさぁ」
といって決めないのはだめです。
徳光 だめでしょう、それはね。
糸井 それなら
「Bで行く」と決めておいて、
直すなら後で直す。
徳光 そうだと思います。
やっぱり切り捨てられないのはだめですね。
アナウンサーは特にそうです。
あれもこれもたくさん浮かんできて、
「あれもしゃべりたい、
 これもしゃべりたい」
といってますとですね、
ろくな中継はできないし、
ろくな司会もできないです。
糸井 それはもう、
「チャンスはまたある」
と信じてる人の強さだと思うんですよ。
徳光 あぁ、あぁ、なるほど(笑顔)。
糸井 「一生に1枚だけ馬券買っていい」
と言われたら、
悩みきって買えなくなると思うんだけど。
徳光 チャンスはまたある、ね。
糸井さん‥‥
糸井 はい。
徳光 うまいこと言うなぁ(笑)。
一同 (笑)
糸井 いやいや。
徳光 ほんとに。
糸井 うん。次のレースもあるんですよね。
お金もあって、
来週もこのレースに来られる、という人は、
冒険もできると思うんです。
たぶん、才能のある子たちというのは、
「これがだめでもまた取り返せる」
と思ってるんじゃないでしょうか。
徳光 うん、うん、あるでしょうね。
で、それがなきゃだめですね。
糸井 だめだと思う。
徳光 これは、さっきお話しした、
「何事もおもしろく考える」
ということに
相通ずるところだと思うんですよ。
「これをなんとかおもしろく考えたい」
というのと、
「次にまたチャンスはある」という考え方って
非常に近いところにあると思います。
糸井 はい。何でもいい、どんな球でもいいから、
打席が回ってくることが、
世の中でいちばん大事なことですよね。
徳光 そのとおりだと思います。
糸井 ヒットが1本も打てないのに、
10年出続ける選手がいたとしたら、
それは、ヒット以外の
よっぽどの何かがあるんですよ。
徳光 そうでしょうね。
それでも、打席は回ってきます。
糸井 回ってくる。
「回ってこない」って信じたら、
回ってこないですよ。
徳光 そう、あぁ、あぁ、
そうなんだなぁ(笑顔)。
糸井 たぶん、そう。
徳光 「回ってこない」という
不安を持っている人たちが
とても多いし、しかもそれを
回ってこないことのせいにしています。
だけど、間違いなく回ってくるんだ、打席は。
糸井 「何もかもが俺を見放した!」
という日が来る可能性は
誰にでもあると思います。
そのときに、道歩いて
100円玉拾うだけでも、
やればできます。
徳光 うん、できます。
糸井 だけどみんな、どうしてだか
「そこはない」って思うんですよ。
「俺は文科系だ」とか、
なんかわかんないこと、
いっぱい言うんですよ。
一同 (笑)
徳光 言いますね(笑)。
糸井 「道歩いてて拾ったお金だけで、
 今日1日生きられるかどうか」
というような賭けに、今日を変えれば、
何かが違ってくるはずなんです。
徳光 ああ、ああ、そうだなぁ。
糸井 あのぅ、ぼく、
今日ずいぶんしゃべってますけど、
徳光 いやいやいや(笑)。
一同 (笑)
徳光 いいじゃないですか、それで。

(つづきます)

前へ 最新のページへ 次へ

2010-12-27-MON