オリンピックまでに
- 糸井
- 東日本の震災以後に、
東北に名所をつくりたいと思って、
ツリーハウスをつくり始めたんですね。
今、7つまでできているんですが
東北には、太い木がないんですよ。
- 藤森
- 小さいうちに伐っちゃうんでしょう。
- 糸井
- そうなんです。
あるとすれば、神木ぐらいで。
- 藤森
- それは伐れないですね。
- 糸井
- 神木をツリーハウスには使えませんから。
東北は山だらけだし、
さぞかし太い木がいっぱいあると思ったら、
太い木があまりなかった。
東北をツリーハウスの観光名所にすることは、
太い木があまりない中で探すという
プロセスを踏まないといけない。
まいったなあと思って、
東京でクルマに乗っていたら、
どこもかしこも太い木だらけだった。
- 藤森
- 皇居の周りのユリノキなんか、
本当に大きいですよね。
- 糸井
- 東京ってすごいですね。
火災が頻繁にあったにも関わらず、
明治以後だけでも、
これだけ太い木を育ててきた。
もっと大事にしたほうがいいなって思いましたね。
- 藤森
- 僕もタクシーに乗っていて
気づいたことがあってね、
府中方面に行く甲州街道には
銀杏が植わっていているんですが、
前の東京オリンピックの時に植えたんですよ。
- 糸井
- あっ、そうですか。
- 藤森
- 今、次の東京オリンピックに向けてね、
街路樹を全部きれいに梱包して、
横に置いているんですよ。
なにをしているんだろうって思ったら、
電柱の地中化をやっているの。
- 糸井
- 急いでいるんですね。
- 藤森
- 甲州街道の電柱をダーッと取っているんです。
- 糸井
- ああ、それはオリンピック用だ。
- 藤森
- オリンピック以外では、考えられないです。
木をちゃんと移して、
伐採せずに、しっかり剪定をして。
- 糸井
- 日本にはその技術があるんですよね。
地中化は、みんなが急いでいますけど、
そこまで進んでいたんですね。
- 藤森
- 相当進んでいましたよ。
東京のほうから始まって、
調布のほうまで、もう進んでました。
- 糸井
- ああ、そうですか。
昔に植えた銀杏が育つのもリアルですね。
50年の単位で、町をおもしろくしようとか、
よくしようって、できることなんですね。
- 藤森
- 50年単位でやればできます。
木だって、日本でちゃんと考えたら
すごいことになりますよ。
- 糸井
- うんうん、そうですよね。
だいぶ、いろんな話ができましたけど、
東京オリンピックを前にして、
東京がこうなればいいのになって、
藤森さんが個人の気持ちで考えるとしたら、
どういうことを思いますか。
- 藤森
- そうですねえー。
うーん、湾岸の景色が、
どうもあまりおもしろくないんです。
レインボーブリッジを
夜とか明け方に渡るときれいで、
景色がいいんですけど、
あの景色にもう一つ、緑の景色がほしい。
だから、富士山でもつくってほしいな。
ミニチュアでいいからさ。
- 糸井
- そこに緑があったら、最高ですね。
- 藤森
- 最高よ。
- 糸井
- するとやっぱり、
島がひとつほしいんですね。
- 藤森
- 東京湾に船とか飛行機で来るとね、
ポッと緑の山があって‥‥。
- 糸井
- 自然のモニュメントですね。
今は橋だけですもんね。
- 藤森
- そうそうそう。
橋もいいけど、自然のモニュメントがね。
- 糸井
- それは僕も、1票入れたい気がします。
- 藤森
- ぜひ、入れてください。
- 糸井
- 全体をどうよくするかなんてことを、
何から何まで考えるのは無理なので、
どこか、絞ったモデルの地域があると、
うまく流れていきそうですよね。
- 藤森
- そうそうそう。
- 糸井
- 人がやりたいことって、
どんどん、都市計画の方向に
向かっていくような気がします。
どんなに謙虚な人でも、
都市計画には興味があって、
こうなるといいなっていうのは、
案外言うものですよね。
- 藤森
- ああ、なるほどね。
- 糸井
- 人の作品の究極は、
町なんじゃないかな。
- 藤森
- 建築家の知り合いを見ていると、
だんだんとそうなってきていますね。
- 糸井
- 江戸幕府ができたときに、
江戸の町をつくった人は
最高の幸せ者ですよね。
- 藤森
- そうでしょうね。
誰かが考えてつくったわけですから。
- 糸井
- ありがとうございました。
楽しかったです。
藤森さん、やっぱりおもしろい。
- 藤森
- いえいえ、ありがとうございました。
(藤森照信さんと糸井重里の対談は、
これでおしまいです。
引き続き、「ほぼ日の東京特集」を
どうぞおたのしみに!)
2017-04-19-WED