朝吹
京都の友人には、
「東京より京都が圧倒的にいいから
引っ越した方がいい」と
よく言われます。
辛酸
京都に行くと、
京都は山もあって海もあって、
文化も感じられて、
いい場所だと思いますね。
朝吹
京都がいいのは間違いないです。
でも東京で私が好きなところは、
広いところなんですよね。
ほかの都市はコミュニティが、
本当に狭いですよね。
バーとか、行くお店が決まっていて、
普段からよく街中で会ったり。
友達も1人またぐとつながっちゃう。
それが楽しくもあり、ちょっと窮屈でもある。
辛酸
人に会いまくることになりますよね。
朝吹
そうなんですよ。
毎日暮らすとなると、
会いまくるのは窮屈で。
だから京都との関係は、ずっと、
おのぼりさん、でいたいですね。
辛酸
噂がすぐに広がると、聞きますもんね。
東京も、土地面積は狭いんですけど、
全然人と知り合いませんから。
朝吹
そうですね。
東京は街として、ぬけがいい気がします。
街自体も根無し草みたいで、
自分自身も根無し草のようにいられるのが、
私は好きですね。
辛酸
根無し草、ですか。
朝吹
どこかに定まることなく、
フワフワと浮いていられる感じです。
東京の人は出生とか両親のこととか、
背景をくわしく聞かない人が多い気がします。
それは、とてもいいなと思っていて。
自由度が高いなと。
辛酸
こういったら失礼かもしれないのですが‥‥
朝吹さんは自由なイメージです。
朝吹
よく言われますよ(笑)!
根無し草でふらふらしていたいんですよね。
辛酸
私もそうなんですが、
何歳までに、何をしようとかも
あまり考えませんか?
朝吹
年齢の感覚があまりないと思います。
「モーツァルトは何歳のときに××を作曲した!」とか、
年齢で区切って自分と比較する人って
いると思うんですけど、
私は理解できないなあと思っていて。
考え方も含めて身軽でいられることが、
東京のすごくいいところだと思いますね。
辛酸
いろんな物事を受け入れてくれる
雰囲気がありますよね。
霊も、霊みたいな人間も、
受け入れてくれる感じ。
朝吹
そうですね。
生きている人と霊の差が、
そんなにない感じ(笑)。
なんとなく生きていても、
許される街なんですよ。
辛酸
あてもなくさまよっていても、
誰にも何も言われないですし‥‥。
だからなんですかね。
一人で食事をしたり、
一人で買い物をしていても、
そんなに孤独を感じないです。
朝吹
ああ、そうですね。
一人の人がたくさんいますから、
特に気にもしないですよね。
東京は、一人でいられる場所がたくさんあるのも、
とてもいいなと思います。
辛酸
最近、2週間に一度は、
道端を歩きながら、大声で歌っている人を
東京や六本木、銀座いろんなところで見るんです。
『ラ・ラ・ランド』がヒットしたからかな、
とか思っていたんですけど。
朝吹
(笑)。
辛酸
そういうのも、
受け入れるような土地柄というか、
空気感がありますよね。
自由度が高い街なんですね。
朝吹
歌うのはたのしいですもんね。
(つづきます。)
2017-08-12-SAT
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN