東京の子。オードリー若林さんからみた「東京」 東京特集
第六回 この街で生きていかなければ。
若林
なんか、東京って不思議な街ですよね。
──
東京ご出身の若林さんでも、
そう思われるんですか?
若林
そうですね、
不思議だなと思います。
「東京とはこうです」と、
一概に言えないです。
──
「中」と「外」がありますもんね。
若林
ああ、そうですね‥‥。
なんか、僕の考える「中」と「外」は
実態がない街とある街で、
くっきりわけちゃっていますね。
──
それはどんなイメージで分けられているんですか?
若林
六本木とか麻布とか恵比寿とか表参道って、
記号化されているものが多すぎて、
実態がないように感じます。
人の顔や生活感はみえなくて、
経済中心の、消費のための街というか。
──
実態のない街は、
経済中心の消費の街ということですね。
若林
そうですね。
人が集まって暮らすのではなくて、
人が集まって消費をするような。
経済中心のアミューズメントパーク、
みたいなイメージです。
お金をつかったり、
人と人が競い合ったり。
いろんな意味での消費がある街ですよね。

逆に「外」は生活感や人とのつながりもある、
実態のある街だと思います。
なので「どこでどうやって生きていきたいか」
によって、東京での生き方は変わってきますね。
──
たしかに、そうですね。
仮にそこで暮らすことになった人がいるとしたら、
実態のない街で生きていくための、
心がまえというか、アドバイスはありますか?
若林
アドバイスですか。
実態のない街で生きていきたい人は‥‥。
「頑張ればいいんじゃないですか」と(笑)。
──
また、東京っぽさを出されましたね(笑)。
若林
出しましたね(笑)。
でもほんとうに、
僕はそういうところでの生き方は
わからないです。

経済中心の街で勝ち上がっていくことを
目指しているなら、
その人にとっては「中」がいいと思います。
ただ、僕が求めている生き方はそこにはないので、
心がまえはわからないなあと。
──
「東京の人は冷たい」
という話をよく聞きますが、
もしかするとそういう方々は、
「中」で戦っているからですかね。
若林
「中」は競争ですから、
人情は感じづらいですよ。
冷たいのは当然です。
「そんなに負け越したくないけど、
 人情も感じながら人生をおくりたい」
という人は「中」の東京は向いていないと思います。
──
なるほど。
若林さんは灰色に感じる街なのに、
それでも東京で生きていくのは
どうしてなんでしょうか。
若林
そうですね‥‥。
僕は東京に家族がいて、
仲良くなれた友人もいて。

この街で競争や仕事の関係を超えて
人間と人間が出会って、
血を通わせた関係が生まれる実感
みたいなものがあるんです。
──
血を通わせた関係、ですか。
若林
はい。
それこそ、人情のようなものが
お互いの関係に生まれるんですよね。
人間同士のつながりというか。

ずっと東京で暮らさなきゃいけない
と思ったときに、
血を通わせた関係がある人たちがいるから、
「この街で生きていかなければ」と
決意できたと思います。
──
この人たちがいるから、
この街で生きていかなければ、と。
若林
そうです。
なんか、人情が、
経済中心の街の中で
消費されそうな自分や東京を、
分解してくれる気がしていて。
灰色から、色が加わるというか。
こんな街でも、
関係性が生まれるんだなと思うんです。

やっぱり「中」には入りたくないですけどね。
せかせかしたくないし、
リングにも上がりたくないし。
──
わあ、東京っぽい(笑)。
若林
また東京っぽさを出しちゃって(笑)。
いやあ、でもなんか、
いろいろ思い出しました。
──
いろいろお話し聞かせてくださって、
ありがとうございました。
若林
こちらこそ、ありがとうございました。
(終わります。)
2017-07-25-TUE