──
下町など若林さんのいう「東京」で、
好きなところはどんなところですか?
若林
好きなところですか‥‥。
あの、ちょっとずつ変わってきていますけど、
築地や入船のお店って、
いまだに普通に接してくれるんですよ。
定食屋さんとかに入っても、
普通に「お兄さん、今日なににする?」みたいな。
──
ああ、そういうイメージがありますね。
若林
こういう仕事をしているので、
場によっては芸能人だからと
特別扱いされることがあって。
でも、あのエリアは特別扱いがほとんどないんです。
むしろ、築地市場を歩いていると、
「お前、ちゃんとやれよ!」とか怒られたり(笑)。
──
やっぱり、
厳しい方々ですね(笑)。
若林
あと、前から不思議に思っていた
風習があって。
会った瞬間悪口を言い合うんですよね。
──
悪口ですか?
若林
そうなんですよ。
あの、親父の地元が築地の近くで、
親父は小さな頃から
築地の少年野球のチームに入っていたんです。
親父たちの同世代は大人になってからも、
コーチとしてチームに関わっていて。
そんなに長く連れ添っているのに、
顔を合わすたびに
「おめえ、まだ生きていやがったのか。
早くくたばりやがれ、ハゲ」
「うるせえな、バカ野郎」
って悪口を言い合ったまますれ違う、という
よくわからないやりとりがあって(笑)。
──
(笑)
若林
おかしいですよね(笑)。
3歳くらいのころ
親父と銭湯に行った帰りに、
たまたま近所のおじさんと会って。
「お前、いくつだ?」と聞かれたんですけど、
僕は引っ込み思案だったから、
3って指を出して答えたんですよ。
そしたら、
「なんだ、てめぇ、口で言えねぇのかよ。
しみったれたガキだなあ」
って言いながら去って行かれました。
──
子どもに対しても
大人と同じ対応なんですね(笑)。
若林
そうなんですよ。
親父同士もいっつも、
「お前なんか、どうせ儲かってねぇんだろう」
「お前のところより儲かってるよ、バカ野郎」
みたいな言い合いを、繰り返していて。
会って、言い合って、「うるせえな」みたいな。
なんか、言葉遣いは悪かったんですけど、
会うと常にいじり合っていて、
仲良さそうだったりするんですよね。
あんなに悪口言い合っているのに、
夜は仲良さそうに焼き鳥屋とかで
呑んでいたり。
──
いいですね。
若林
なんか、いいですよね。
そのかざらない感じが。
もうひとつ好きな光景があって、
下町の懐かしい感じの蕎麦屋に行くと、
お店のおばさんが仕事をほっぽり出して、
遊びに来た近所のおばさんとカウンターで、
ぺちゃくちゃ喋っているんですよ(笑)。
──
ああ、はい。
お客さんが来ているのに、話に夢中で(笑)。
若林
そうそう。
あの光景も好きですね。
自由だし、
人情を感じるというか。
たぶんどちらかというと、
人情とか生活感のある街が好きなので、
大人になっても東京の「外」ばかりを、
グルグルしているのかもしれませんね。
(つづきます。)
2017-07-24-MON
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN