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- (井上さんのトリビア集をめくって)
地下鉄の話からちょっと脱線しますが、
井上さんのトリビアのなかに書いてある内容が、
気になったのでうかがいます。
東京都交通局は都電の運営もなさってますが、
都電のなかで荒川線だけがなぜ残ったのでしょうか。
▲これも井上さんのトリビア集。
びっしり書いてあります。
- 井上
- お話ししましょうか?
- ーー
- お願いいたします。
- 井上
- 今の荒川線というのは
「王子電気軌道株式会社」という会社が
今から105年前、明治44年8月に作ったんです。
昭和17年の陸上交通事業調整法で
「東京の路面電車は全部統合するように」となり、
うちが運営することになりました。
その後、戦後にマイカーを持つ人口が増えて、
道路混雑になり、
昭和42年から47年までの間に
都電を撤去しはじめたんですよ。
最初の計画では全線がなくなるはずだったんですが、
途中で何とか残せないかということで、
私なんかも画策しまして。
- ーー
- おお、井上さんも関わっておられたんですか。
- 井上
- はい。
路線を何とか残せないかと
がんばってたんですけど、いろいろ難しくて、
荒川線以外はなくなりました。
路面電車というのは道路を走らなきゃいけないんで、
車の影響を受けて走れなくなってしまって、
お客さまがだんだん減ってしまったんです。
でも、荒川線は9割が専用軌道なんで、
定時性があって、ちゃんと走れたんですよね。
10万人くらいのお客さまが乗ってましたし、
黒字だったんですよ。
沿線の方や都民の方から
「何とか残せないか」という陳情もありました。
それで当時、美濃部亮吉さんという
都知事がいたんですけど、
いわゆる環境に優しい知事で、
荒川線というのはバスと違って
電気で走ってるので公害が少ないということで、
「荒川線は残しましょう」と言ったんです。
- ーー
- 知事の一言で。
- 井上
- はい。
もう1つの理由は、
東京の歴史を残そう、ということです。
東京における交通の歴史というのは、
昭和40年代に都電がなくなって
地下鉄ができるまでは、
都電が東京の交通の主役だったんです。
それを何とか残そう、と。
- ーー
- 都電が主役だったんですね。
- 井上
- はい。ただ残すだけじゃなくて、
線路を直したり、停留場をバリアフリーにして
車椅子の方でもスッと乗れるようにしたり。
荒川線だけ残しても
事業が継続できるようにということで、
ワンマン化して、いわゆる合理化もしました。
- ーー
- そういう取り組みの成果というか、
今もたくさんの方が使われてますよね。
- 大塚
- ええ。
おじいちゃん、おばあちゃんも
たくさん乗ってくださってます。
- 井上
- ま、そういうわけで、
知事の一言がなかったら残らなかったです。
日本の6大都市は、
路面電車を全部やめちゃいました。
- ーー
- 東京だけは残ってるんですね。
その当時の知事さんが
環境に優しかったということですが、
今の都知事の小池さんも、
もともと環境大臣ですよね。
- 井上
- ええ、クールビズを提唱した方ですから。
- ーー
- そのことで、
地下鉄のほうにも
何か影響などはありますか?
- 大塚
- うーん、
「何をやれ」みたいな話はまだないです。
「2階建ての電車を走らせよう」
とか言ってましたね。
それはすぐには難しいですが、
快適通勤の取り組みが
もうすぐはじまりますよ。
- ーー
- 快適通勤。
- 井上
- 7月中旬から
「時差Biz」という企画がはじまる予定です。
通勤時間をずらして通勤ラッシュを逃れて、
快適に通勤しよう、というものです。
企業でも個人でも参加できるので、ぜひ。
- ーー
- (井上さんのトリビア集をめくって)
すみません、トリビア集に、
上野動物園のモノレールのことが、
書かれてあって、
これもまた気になるのですが‥‥。
- 井上
- はい、お答えしましょう。
- ーー
- 本当に何でもご存知なんですね。
- 井上
- 戦後になって経済が活発になって、
道路混雑が激しくなりました。
で、路面電車がだんだん追いやられていきました。
そのときに「交通をどうしようか」となりまして、
「地下に潜る」案と、
「空を飛ぶ」案の2つの案があったんです。
地下といっても、
地下鉄は時間もお金もかかる。
空間ならそんなにお金もかからないし、
何とかできるだろうということで実験したんです。
当時、世界で一箇所だけ、
ドイツで走っていた
モノレールを見に行った人がいて、
「東京でも作れないか」ということで、
実験線を作ることになったんです。
実験が終わったあとも、お客さまがいて、
少しは稼げるようなところがいい、ということで、
上野動物園が候補地になりました。
それと、あの場所はアップダウンが結構あるので、
カーブの実験もできるという利点もありました。
一応、世界で2番目にできたモノレールなんです。
行けば銘板が書いてあります。
- ーー
- 世界で2番目!
- 井上
- 車両は新しくなってますけどね。
この技術が、東京モノレールにもいきまして、
前回の東京オリンピック前に
モノレールができたんですよ。
今は完全に実験は終わって、
お遊戯施設になってますけどね。
幼稚園くらいの子どもさんが乗ってくれています。
▲上野動物園にあるモノレール。
- ーー
- お子さんも喜びそうですよね。
- 井上
- はい。座席定員制なので、
2歳からもきっちりお金をとっております(笑)。
- ーー
- (笑)
※この取材は、2017年4月に行われました。
(つづきます)
2017-07-23-SUN