- ーー
- 2020年に東京オリンピックが
控えていますけど、
なにか取り組んでらっしゃることはありますか。
- 大塚
- オリンピックだけじゃないですけど、
外国人のお客さまが増えたので、
運行情報をお知らせする電光掲示板や
改札機の多言語化を進めています。
それから、英語や中国語を話せる
コンシェルジュさんを27駅に配属しています。
- ーー
- コンシェルジュさん。
- 大塚
- そう。制服を着た
コンシェルジュさんがいます。
あとは都営地下鉄では、今35駅で
無料Wi-Fiを使えるんですが、
オリンピックまでには
全車両でも無料Wi-Fiを
使えるようにしたいと思っています。
- ーー
- たしかに、無料Wi-Fiは
旅行者には重要ですよね。
- 大塚
- そうなんです。
外国人にアンケートをとると
「何が困りましたか?」という項目に
「Wi-Fiがつながらない」という回答が上位にくるんです。
それと、券売機もすごいのを作ったんですよ。
もし、今日帰るときに都庁前駅を使うのであれば、
券売機をぜひ見てください。
8言語に対応した
32インチの大きい券売機があります。
今までの券売機じゃない感じで、おもしろいですよ。
▲実際に帰りに見つけた「すごい券売機」。
これはタイ語表示。
▲目的地までの「おすすめルート」も案内してくれます。
- 井上
- ほかにも、オリンピックにあわせて、
いろんなことをやります。
「勝どき」の大改造をしたり、
エレベーターをいっぱい作ったり。
- ーー
- やっぱり世界から見ても、
東京の地下鉄はすごいんでしょうか。
- 大塚
- 安全性とか、正確性は
やっぱり世界でもトップクラスだと思います。
ただ、これは我々の問題なんだけど、
うちとメトロさんの2つの事業主が
地下鉄を運営しているというところが、
外から来た方にはわかりにくいと思うんです。
日本人でも、あまり東京に来ない方だと
何がなんやら分かんないですよね。
まあ、ネットワークが張り巡らされているから、
どう遠回りしても目的地に
行き着くことは可能なんだけど‥‥。
- ーー
- 確かに、乗り慣れないと、
かなり難しいと思います。
- 井上
- そういうややこしさを
少しでも解決するために、
ナンバリングをはじめたんです。
- ーー
- ナンバリング?
- 大塚
- 外国人のお客さまにとっては、
路線図がローマ字で書いてあったとしても、
なかなか分かんないですよね。
海外の鉄道には、路線と駅を、
固有の番号とアルファベットで
表記してあるところが多いんです。
だから、うちも、各路線と駅に
つけることにしました。
今は他社さんもつけるようになったけど、
うちはこれは早く対応したと思います。
- ーー
- 先を見すえていたんですね。
(路線図を見て)
本当だ、浅草線は「A」で、
浅草駅は「A17」ですね。
- 大塚
- JRでは、複数路線が乗り⼊れる駅など
3文字使っているところもあって、
秋葉原駅は「AKB」になっているんですよ。
- ーー
- へえー!
- 井上
- ちなみに大江戸線の路線を表すアルファベットは、
「E」なんですよ。
何で「O」でないか分かります?
- ーー
- ‥‥「O」はゼロに見えるから、
でしょうか?
- 井上
- 当たりです。さすが。
ゼロと間違えられるからです。
- ーー
- でも、大江戸線の「E」は、
江戸の「E」というのが
わかるので大丈夫かなと思います。
- 井上
- 三田線は本来なら「M」なんですけど、
「I」なんです。
「M」をメトロさんの
丸ノ内線に取られちゃった‥‥。
- ーー
- 丸ノ内線にラインカラーまで取られ、
ナンバリングのアルファベットまで‥‥(笑)。
- 井上
- そう。
三田線、かわいそうなんですよ。
- 大塚
- メトロさんとダブらないように
しなきゃいけないからねえ。
- ーー
- こういう会議室で、
メトロさんと話し合いをなさるんですか。
- 大塚
- はい。私も井上も出ています。
長く勤めている人だと、
お互い顔見知りのような感じになります。
- 井上
- ま、そういうふうに番号をつけたんだけど、
これがあると乗りやすいですよね。
私もソウルに行ったとき、
番号があったおかげで地下鉄に乗れました。
じゃないと、分かんない。
- 大塚
- そういえばぼく、
フランスに行ったとき、
改札機がすごく高い位置にあるのに、
それでも飛び越えて行く人達を見かけて、
びっくりしました。
不正なんだけど、すっげぇなと、
ある意味感心してしまいましたよ。
日本はみんな真面目ですよね。
あんな低い改札口のトビラだけでも、
ちゃんとルールを守ってくれる。
- 井上
- 大塚は、そこを作った人なんですよ。
- ーー
- えっ。そうなんですか?
- 大塚
- ぼくは、改札機とか
ICカードの「PASMO(パスモ)」とか、
そっちのほうが専門なんです。
- ーー
- まさか‥‥パスモの生みの親ですか?
- 大塚
- そこまで言っちゃうと、
言い過ぎかもしれないけど‥‥。
- 井上
- 半分、生みの親です。
- ーー
- なんと! パスモは便利ですよね。
出た当初、画期的だなと思いました。
JRも、私鉄も、バスも、
1枚あればどこでも使えるし。
でもきっと作るまでは大変だったんでしょうね。
- 大塚
- 大変でした。
5年6年ぐらい、ずっと毎日会議ですよ。
朝から夜中まで。
- ーー
- それはメトロさんやJRさんと一緒に?
- 大塚
- はい。
バスもあるし鉄道もあるから、
だいたい大手10社と集まって会議をしてましたね。
- ーー
- 大変そう‥‥。
機械の統一とかもあるでしょうし。
- 大塚
- そうそう、改札機の
「リーダー」って言うんですが、
光るところあるでしょう。
あそこで運賃を計算するんですが、
そこを各社共通のものにするのにも、
かなり苦労しました。
今では、全国で相互利用をしていて、
パスモを大阪に持っていっても
札幌に持っていっても、そのまま使えます。
逆に大阪の「ICOCA(イコカ)」など、
地方のICカードも東京で使えますし。
- 井上
- パスモ、外国では使えるようにならないの?
- 大塚
- 外国‥‥。
- ーー
- 外国で使えたらすごいです(笑)。
- 大塚
- 為替レートがその日によって変わるし、
無理ですよ(笑)。
- ーー
- でも、パスモの便利さは
海外から日本に来る方にも人気でしょうね。
とりあえずお金をチャージしておけば、
あちこち行けるんで。
- 大塚
- あ、海外から来る方には、
企画乗車券のほうをおすすめしてます。
「Tokyo Subway Ticket」というんですけど、
東京メトロと都営地下鉄が乗り放題で、
「最初に使ったときから24時間有効」と
いうチケットです。
24時間800円であちこちいけます。
48時間だと1200円、72時間だと1500円。
▲これが「Tokyo Subway Ticket」。
- ーー
- 3日間だとかなりお得ですね。
- 大塚
- 外国人の方はパスポートを見せて
羽田や成田空港で購入いただけます。
日本人は東京と東京近郊の
1都7県では買えなくて、
地方の代理店だとか海外の代理店だとかで買えます。
これ、けっこう人気です。
※この取材は、2017年4月に行われました。
(つづきます)
2017-07-22-SAT