- 井上
- 次は何を話そうかな。
そうだ、路線の名前について話しましょうか。
- ーー
- はい、ぜひお願いいたします。
- 井上
- さきほど、東京には地下鉄が
全部で13本あると言いましたよね。
それぞれの路線は、当初、
数字がついた名前だったんです。
たとえば、浅草線は、
前は「東京鉄道1号線」
というのが正式な名前でした。
ちなみに、浅草線が1番、
日比谷線が2番、銀座線が3番、
丸ノ内線が4番なんですけど、
これ、どうしてこういう順になっているか、
わかりますか?
- ーー
- 計画された順‥‥でしょうか。
- 井上
- 違うんです。
品川が起点で、
時計回りに順番に数字をつけているんです。
日比谷線は目黒、銀座線は渋谷、丸ノ内線は新宿、
と考えると、品川駅を拠点に
時計回りになっているのがわかるでしょう?
- ーー
- え、品川が起点なんですか?
- 井上
- はい。品川は昔から起点なんです。
なぜなら、品川のあたりは
昔は東京駅よりも栄えていたんです。
首都高の環状線だって、
1号羽田線、2号目黒線、3号渋谷線、
4号新宿線というふうに、
やっぱり品川が基準になってるんですよ。
- ーー
- へぇー、品川、すごいですね。
- 井上
- うちは路線を番号で呼んでいたんですが、
メトロさんは、銀座線、
丸ノ内線というふうに呼ぶようになりました。
それで、うちも名称を付けることにしたんです。
でも、「浅草線」というだけじゃ、
どっちが運営している線だか分からない。
そこで、「都営○○線と付けてください」
という内容で公募したんです。
- ーー
- 公募を。
- 井上
- はい。それで多かった名前が
「浅草線」と「三田線」と「新宿線」で、
それを正式名称にしました。
大江戸線も開通前は
「東京鉄道12号線」と呼んでいたんですけど、
開通にあたって親しみやすい
名前を付けましょうということで、これも公募しました。
いろいろあった末に、
大江戸線という、オールドな名前になりまして(笑)。
- 大塚
- 「ゆめもぐら」という愛称も
ありましたよね。
- 井上
- そう。
- ーー
- 「ゆめもぐら」!
- 井上
- 今では誰も呼ばなくなったんですけどね。
たぶん、当時の知事が
そういうノスタルジックな名前が
好きだったんだろうと思います。
- ーー
- (笑)
- 井上
- 大江戸線に決定した理由は、
「江戸」と呼ばれていた地域を
ほぼ包み込む線形だったこと、
蔵前や本郷といった江戸時代に形成された
歴史ある地域を通過する線だったこと、
「江戸」という歴史的な言葉がむしろ新鮮だったこと、
「大」を冠することで広がりを感じられたこと、
そういう理由で大江戸線と付けました。
このときから、さきほどの「都営○○線」の
「都営」を全て取りました。
- 大塚
- 自分たちでいうのもあれですけど、
大江戸線、っていい名称ですよね。
- ーー
- いいと思います。
親しみやすくて、かっこよくて。
- 井上
- そうですね。
- ーー
- あと、大江戸線といえば、
ホームがとても深いですよね。
長いエスカレーターを下って、
ようやくホームに着くというような印象があります。
- 大塚
- そうですねぇ。
- 井上
- 六本木駅のホームは、
最大で42.3メートルですからね。
地上のビルに換算すると10階です。
- ーー
- 10階!
世界的に見ても深いんですか?
- 井上
- いや、モスクワの地下鉄とかはもっと深いです。
- ーー
- あ、そうなんですね。
- 井上
- ソウルも深いですし。
外国だと地下鉄がシェルターみたいな
役割をしているところもあるので、
あんまり浅いと困るみたいですね。
- ーー
- シェルター。
東京都は、そういうことは
想定はされてるんですか?
- 井上
- してないです。
でも、新しい地下鉄は、構造上は深いです。
最初に作る地下鉄は浅いところを通れるんですけど、
後から作る地下鉄はその下を
通って行かなきゃいけないので、
だんだん深くなっていきます。
- ーー
- 東京メトロさんの副都心線も
新しい路線ですけど、
副都心線よりも大江戸線のほうが深いんですか?
- 井上
- 大江戸線のほうが深いです。
副都心線は、地下に何にもないところを
通ってるんです。だからそこまで深くない。
明治通りって、地下に何にもなかったんですよ。
- ーー
- じゃあ、東京で一番深いのは大江戸線。
- 井上
- 大江戸線です。
平均22.2メートルです。
それだけお金もかかっているんですけどね。
大江戸線って、環状部に限っていえば、
1キロ掘るのに、約323億円かかるんですよ。
- ーー
- 1キロ掘るのに323億円!
- 井上
- 簡単にいうと、1メートル3千万円です。
高額な費用がかかるんですよ。
- ーー
- はぁぁ‥‥。
そういえば、前回の取材で、
大江戸線は高低差があるから、
ジェットコースターみたいな気分が味わえるって
おっしゃってましたね。
- 井上
- そうなんです。
ほとんどの駅では、
駅より線路がさらに深いんです。
駅が深かったら、
お客さまが乗る時間もかかりますよね、
だから、全体的に深い大江戸線でも、
これでも駅だけは
地上から浅いところにしているんですよ。
- ーー
- そうなんですか?
- 井上
- はい。
しかも、駅が上のほうにあると、
停まるときにブレーキを強くかけなくてすみますよね。
出発するときも下り坂だから、
エネルギーをたくさん使わずにすみます。
効率的な運転ができるんです。
- ーー
- へぇー。考えられてますね。
- 井上
- しかも大江戸線はリニアモーター駆動なんで、
一般の地下鉄は勾配が、
1000分の35パーミル、つまり
1キロで35メートルあがるようになっているんですが、
大江戸線は、それが55メートルなんです。
高低差がすごいので、
まるでジェットコースターですよ。
- 大塚
- うちのPR活動の一貫で、
大江戸線の運転台から観られる景色を
撮った動画がありますよ。
- 井上
- ラッパーのSALU(サル)さんと
コラボしてて、カッコいいです。
結構前からYouTubeにも
アップしているんですけど、
え、知らない? 観たことない?
‥‥残念だなぁ(笑)。
- ーー
- すみません!
今、拝見します。
▲というわけで、その場で観ます。
▲これが大江戸線のPR動画。
たしかに、かっこいい
- 大塚
- 大江戸ね、
人がたくさん乗ってくれるんですけど、
建設費の節減で、小型車両を採用しているんです。
今思うと、
もっと大きな車両を作っておけば
良かったと思います。
メトロさんとくらべて、
儲かる路線が小さいんです、うちは(笑)。
- ーー
- (笑)
- 井上
- 気を取り直して、
ラインカラーのことを言いましょうか。
- ーー
- はい。ぜひお願いします。
- 井上
- 昭和45年までは、
メトロさんもうちも、
独自に路線の色を決めていたんです。
でも、将来路線が増えたら
名称だけで区別するのは難しい、
という話になりました。
そこで、メトロさんと一緒に
統一したラインカラーを
付けることにしたんです。
- ーー
- 話し合われたんですね。
- 井上
- はい。そのときに、
うちの三田線はもともと赤だったんですけど、
メトロさんの丸ノ内線に
赤を取られてしまって(笑)、
三田線は青になったんです。
- ーー
- (笑)
※この取材は、2017年4月に行われました。
(つづきます)
2017-07-21-FRI