「とらや」さんの工場&工房見学は、興奮のうちに終了。
あんこ作りの難しさとたのしさを体感してきた一行でした。
そんなわれわれが次に向かったのは、
赤坂にある「とらや」さんの本社です。
3月3日に気仙沼で行う、
「甘くてたのしいあんこのワークショップ」の
リハーサルとして
実際にあんこを作ってみましょうということになりました。
![](images/p_05/01.jpg)
▲「とらや」赤坂本社のキッチンで、ごきげんの大統領。
「とらや」さんの上級技術者・鵜澤幸男さんにより、
ワークショップで作るあんこの
基本的な方向性が決められました。
![](images/p_05/02.jpg)
▲小豆を準備する鵜澤さん。右は製造課の本田順子さん。
ワークショップで作るのは、つぶあんです。
「とらや」さんのこしあんを作ることは、
設備の問題などもあり、かなり困難。
つぶあんにしても、
工場以外の場所で「とらや」さんの味を再現するのは
とてもむずかしいとうかがいました。
「ご家庭でできる良いあんこ作り」を目指します。
「わたしも家で、あんこを炊いてみようかな」
そんなかたが、ひとりでも増えることを目標にします。
良い素材で、ていねいに、シンプルに、作る。
その中で「とらや」の職人さんが
ポイントを教えてくださる‥‥
そんなワークショップを開催します。
![](images/p_05/03.jpg)
小豆を水で洗う、鵜澤さん。
両手をつかって、こすりあわせて、拝むように。
「よく煮えろ、よく煮えろ‥‥」と願いながら。
鵜澤さんはこの洗い方を「拝み洗い」と呼んでいました。
洗って水を切った小豆に、水を加えて煮始めます。
![](images/p_05/04.jpg)
▲加える水は小豆量の3〜4倍。
![](images/p_05/05.jpg)
▲鍋のそば、最前列まで出る積極的な大統領。
![](images/p_05/06.jpg)
▲「つい、笑ってしまう」と、大統領。
![](images/p_05/07.jpg)
▲頭にかぶったネットがななめになっていますが、
それはどうでもいいことです。
沸騰するのを待ちましょう。
ちなみに、このリハーサルでは
50人分を想定してあんこを作りました。
ですので今回、そのレシピは掲載いたしません。
ワークショップの際には、
ご家庭で使いやすいレシピをご用意しますので、
その点はご安心を。
さて、沸騰してきました。
白いレンゲで、煮汁の色を確認しながら火加減を調節。
どんどん、いい匂いがたちこめてきました。
![](images/p_05/08.jpg)
煮汁が紅茶色になり、小豆にシワがよったら
4分の3くらいの煮汁を捨てます。
![](images/p_05/09.jpg)
▲煮汁を捨てるこの工程を「渋切り」といいます。
捨てた分と同じだけの水を新たに加えて、
強火で沸騰させます。
![](images/p_05/10.jpg)
▲この工程を「本炊き」といいます。
沸騰してきたら火を弱め、重曹を煮汁で溶いて投入。
![](images/p_05/11.jpg)
▲重曹には小豆の皮をやわらかくするはたらきがあります。
沸騰後は、小豆が踊らないくらいの弱火に。
途中でときどき軽くかき回し、アクを取り除きます。
![](images/p_05/12.jpg)
▲アクをとるのは糸井重里の最も得意な仕事のひとつ。
でも、アクもあんこの味のうち。
ぜんぶ捨てては、いけないのだとか。
小豆が湯面から出そうになったら水を足しつつ、
コトコトと、しばらく煮ます。
![](images/p_05/13.jpg)
湯面を見つめながら、糸井がつぶやきました。
「たのしいね‥‥
この道のりがぜんぶうれしい。
完成まで2時間かかるんですよね?
じゃあ、2時間ドラマだ。
あんこがうまれる2時間ドラマ」
![](images/p_05/14.jpg)
小豆が煮えたら、弱い流水で晒して煮汁を捨てます。
![](images/p_05/16.jpg)
煮汁を捨てるとこんな具合に。
いわゆる、茹で小豆です。
![](images/p_05/17.jpg)
水に溶かした白双糖を用意しておくのですが、
このときの鍋に、糸井重里が注目。
目が、きらり。
![](images/p_05/18.jpg)
▲直径40センチほどの銅鍋です。
鵜澤さんに訊ねる糸井重里。
「銅鍋はやっぱり、熱伝導がいいですか」
鵜澤さんが答えてくださいます。
「そうですね。
銅鍋はとくにあんこを炊くときに使うと
ツヤが出るんです。
アントシアニンと反応してツヤが出るみたいです」
「そうですかぁ‥‥ほしいなぁ‥‥。
一生もんだしなぁ‥‥嫁入り道具にもなるよ!」
その、3日後のこと。
「気まぐれカメら」に大統領はこちらを掲載しました。
おとうさん、これはなんですか?
「ブイちゃんを運ぶものじゃないよ」
じゃ、なにをするものなのですか?
「あんこを煮るためのものだよ」
え、こんなに大きいんですか?
「ちょっと勢い余って‥‥さ」
大きすぎると思いますけど。
<『ブイヨンの興味(未刊)』より>
2013/01/31 21:50 |
話を戻します。
銅鍋で、白双糖を水で溶きます。
![](images/p_05/20.jpg)
▲溶かすとき、シャラララ〜ときれいな音がします。
そこに、先ほどの茹でた小豆を混ぜ入れます。
![](images/p_05/21.jpg)
この工程を「蜜漬け」といい、
よりていねいに作る場合はこのまま一晩、
漬け置きをするのですが
時間の限られたワークショップではここを省略。
続きの作業に移ります。
でも大丈夫、ここで味が大きく落ちることはありません。
ワークショップで作るのは、
お汁粉、あんこトースト、おはぎの3種類。
この3つは、あんこのゆるい順に並んでいます。
つまり、
ここからあんを煮詰めていく順で、
あんこの食べものができていくわけですね。
![](images/p_05/22.jpg)
ぐつぐつに煮える鍋のあんこを見て、
糸井重里が願望を絞りだすように強く言いました。
「もしも熱いのが平気ならさ、
おれは、このまんまガッ!と飲みたい。
このマグマが食道を通って行く感じはきっと最高だぞ。
飲みたくない?
一体化するんだよ、あんこと」
![](images/p_05/23.jpg)
‥‥発言には笑いましたが、
この人はあんこの鬼だ‥‥とも思いました。
そんなことをおしゃべりしているうちに、
お汁粉ができました。
![](images/p_05/24.jpg)
もちろん、試食。
![](images/p_05/25.jpg)
からだにしみる、あたたかなおいしさ。
きょうは、お餅がないのが残念! 本番がたのしみ。
ちなみに大統領は無茶をせず、
適温に冷ましてお汁粉を食べていました。
もうすこし煮詰めて、このくらいになると‥‥
![](images/p_05/26.jpg)
あんこトースト用の、あんこが完成。
パンがないので、ぺろりとあんこの味見だけ。
![](images/p_05/27.jpg)
![](images/p_05/28.jpg)
「OK! うまーい!」
さらに煮詰め‥‥
![](images/p_05/29.jpg)
ここまで煮詰めたのが、おはぎ用のあんこです。
![](images/p_05/30.jpg)
これを冷まして、布などでのばします。
![](images/p_05/31.jpg)
![](images/p_05/32.jpg)
丸めて‥‥。
![](images/p_05/33.jpg)
もち米も、丸めて‥‥
![](images/p_05/34.jpg)
あんこの中に包み込みます。
![](images/p_05/35.jpg)
ほんと、工程のすべてが、たのしくてうれしい!
![](images/p_05/36.jpg)
リハーサルの最後、
おはぎを前に糸井が言いました。
「あんこの中でいちばんおいしいのは
もしかしたらおはぎじゃないですかね。
だって、先にあんこで、あとでごはんだよ?
ぼくはお寿司のウニを食べるとき、
軍艦巻きを斜め45度に傾けて、
ウニを舌の上にのせるんです。
ダイレクトにきますからね。
おはぎもそうでしょう、あんこがダイレクトに、くる」
![](images/p_05/37.jpg)
「うーん‥‥やっぱりおいしいです。
ご家庭用のシンプルな作り方とはいえ、
これはプロの味ですよね。
気仙沼のワークショップでこれを伝えると、
もしかしたら日本のあんこの水準が
グッと上がることになるんじゃないでしょうか。
そのくらいのことを、ぼくは思っています」
![](images/p_05/38.jpg)
というわけで、
「甘くてたのしいあんこのワークショップ」に
先駆けてお送りしたコンテンツ、
「とらや見学。」は、これにて終了です。
たっぷりと、見学させていただきました。
きっとそれを本番に活かせることでしょう。
気仙沼からのワークショップを
3月3日はほんとうにおたのしみに!
またそのときにお会いしましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
![](images/p_05/39.jpg)
(おしまい) |