ほぼ日刊イトイ新聞

「ヘンタイよいこ」新井紀子は明日への希望を忘れない。

新井紀子x早野龍五x糸井重里

*1

「ヘンタイよいこ新聞」
サブカル誌『ビックリハウス』に連載された読者投稿欄。
編集責任者は糸井重里。

*2

スイスの歌「オーブレネリ」で、
「あなたのおうちはどこ?」と聞かれ
「私のおうちは、ほとりなのよ」と答えたとたんに、
ヤーホーホトラララとうかれ狂う子が
おもしろいと投稿した女性

*3

  • セイジョーよいこは、ゆっくりと、じょじょにヘンタイよいこを、めざします。
  • ヘンタイわるいこは、なるべくすみやかに、ヘンタイよいこをめざします。
  • セイジョーわるいこは、ヘンタイよいこの生活をおびやかしてはいけません。
  • ヘンタイよいおじさん(おばさん)は、ヘンタイよいこの大切なおともだちです。
  • ヘンタイよいこは、ヘンタイよいこ新聞を、しっかり読みます。
  • ヘンタイよいこは、ヘンタイよいこ新聞に、お手紙を出します。
  • ヘンタイよいこは、明日への希望を忘れません。
  • ヘンタイよいこは、変態にならないように、じゅうぶん注意をします。
  • ヘンタイよいこは、変態のおともだちを大切に守ってやるのです。
  • ヘンタイよいこは、カラダをいつも清くしています。

「はじめまして」の座談会

2018-05-11-FRI

きっかけは、新井さんが本の終わりに、
AI技術に人がおされていくかもしれないなかで、
「一筋の光明は、ほぼ日にある」と書かれたことに、
サイエンスフェローの早野龍五が
いち早く反応したことでした。
新井さん、糸井、早野の3人は、互いに著書を読んだり、
ツイッターでフォローしあう間柄ながら、
実際に会ってお話するのは、この日が初めて。

‥‥なのですが、
新井さんが40年近く愛してやまないのは、
糸井重里責任編集の一冊の本。
大好きなカエル色のイスを選んで座った新井さんが、
カバンから取り出したのは、
変色してボロボロになった、その本。
昭和57(1982)年7月刊行の
『ヘンタイよいこ新聞』(*1)でした。

新井
はじめまして。
早野
はじめまして。
糸井
はじめまして。
新井
これ、サインしてもらえますか。
(と、『ヘンタイよいこ新聞』を糸井の前へ)
糸井
いくらでもします。
新井
やったー! 
『ヘンタイよいこ新聞』に投稿してた
「ブレネリの子」(*2)に勝った気持ち!
ありがとうございます。
糸井
ありがとうございます。
この表紙は横尾忠則さんだったって気づいてましたか?
新井
知ってます。
あ、サイン、ここがいいと思うんです。
反対(扉)にうつるといけないから。
すごい大事なとこなんで。
糸井
じゃ、ここに。「あらいのりこ」さんで
いいですよね。
新井
はい。ああ、もう超うれしい。
(糸井 本を閉じようとする)
新井
ダメダメダメ、ダメ、ダメ。
うつるから、そっとして。フーフー(と、息)。
これ永久保存版なんで、
たとえ糸井さんでも汚されると嫌なんです。
糸井
‥‥
早野
なんというスタートなの(笑)。

(ここで再び着席して、お話がスタートしました)
糸井
(『ヘンタイよいこ新聞』の)
「お父さんのタイツ」とか覚えてますか?
新井
はい、モモヒキはいてるお父さんが妖精に見える、
というあれですね。
「たらこの踊り食い」という投稿も好きです(笑)。
糸井
いや、すごい。
この本、何人かの方が持ってるのに
サインしたことあるんですけど、
すごいことですよね。
新井
高校時代から40年間、風邪をひいて熱が出ると、
いつもこれを読んでました。
体調悪いとき、いいですよ。効きます。
100回ぐらい読みました。
糸井
作家の川上弘美さんに、ゲームの『MOTHER』を
30何回やったと言われて、
どうかしてると思ったんですけど。
新井
これ100回読みました。
糸井
ひどいですね、それは。
新井
ひどい。
新井
私は本当に、これで育ったんです。
数学の本より、こっちのほうが読んだ回数は多いです。
『ヘンタイよいこ新聞』の
「十(とお)のお約束」(*3)
守って生きてきたんだと自分で思います。
糸井
もう「弟子」みたいな気分。
よく育った、と言おう。

悩んで選んだ「春」のセーター

新井
くだらないことから話していいですか。
糸井
しなさい(笑)。
新井
40年以上好きだった人に初めて会うっていうとき、
何を着ていくかすごい悩むんですよ。
糸井
今日はセーターですね。
新井
一週間前から相当悩んで、
一張羅を着るか、いや、違う気がする、とか。
普段着で行こうと思っても、
それってなんだろうと思い始めちゃった。
普段着に自分が一番出るんだと思ったら
迷い始めて、混乱しましたね。
糸井
とてもいいですよ。手編みですか。
新井
はい。
自分で編みました。
糸井
いいですね。かわいい。
新井
私、8号棒針で編むんです、どんなものでも。
すると、ちょっとずつ毛糸が残る。
その残りを計って、
それが何センチ四方になるかを計算して。
早野
計算するんだね、やっぱり。さすが数学者。
新井
いやいや(笑)。
それでこのデザインを娘にしてもらって、
こっちが春で、反対が冬。
どっちを前にしても着られるようにしてあるんです。
糸井
なるほど、なるほど。
今ものすごい冬を感じました。うしろ向いた途端に。
新井
今日は春で行こう、と思ったんです。
早野
そうなんだ。
糸井
いや、なんか四六時中というか、
新井さん、1年中春のように見えます。
新井
そんなことはないです。
糸井
冬を隠し持ってるんですね。
新井
あ、そうです。そうかもしれない。
ところで、お土産なんですけど。
糸井
お土産もあるんですか。
新井
はい。
高級な店の方がおいしいに違いないんですけど、
これは私が作ってきました。フルーツケーキ。
早野
おぉ!
糸井
相当好きです。
新井
今日あたり、ちょうどおいしい頃合いなんです。
糸井
喜んでいただきます。

おまけの動画

▲『ヘンタイよいこ新聞』の大好きだった投稿をうれしそうに読む新井紀子さん

(つづきます)

2018-05-11-FRI