Hobo Nikkan Itoi Shinbun
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン ゼネラルマネージャー塚越隆行さん✕糸井重里 対談
第9回 ふつうの人の役。
塚越 今回、ぼくが感じてるのは、
MovieNEXという新しい商品を出したために、
うちの社内の動きも変わったことです。
どこが変わったって、営業です。
営業は最初、この商品をすごく嫌がったんですよ。

糸井 うん、わかる。
ふつうは反対でしょうね。
「ブツがない商品の状態をどう説明すりゃいいんだ」
と言うと思う。
塚越 「なんていうことをしてくれるんだ」
というくらいのものです。
でもそのうち、自分たちの頭で
考えるようになってくれました。
糸井 それは、穴だらけのジグソーパズルを
やってるみたいなことでしょうね。
だけど、そのジグソーのピースは、
うどん粉を練ってつくってもいいんだよね。
塚越 そのとおりです。
ぼくらにとって、そういう意味でも、
すごくよい機会だったと思ってます。
糸井 いま、ちょっと思ったんだけど、
たとえば理科系、技術系の人たちががんばれば、
営業が楽になるということが、
世の中にはあると思うんです。
塚越 うーん、あるんでしょうね。
糸井 営業は「俺の腕を見せたい」という人たちですから
理系的なものは好きじゃないかもしれないけど、
技術の先端にいる人は、
営業的にも当然貢献します。
そこのところは、塚越さんの会社の足腰を
もう一段階強くする発想のステップかもしれないですね。

塚越 考える必要がありますね。
ぼくらがやろうとしていることは営業も含めて、
みんな、わかってきてるわけだから、
そこに対するソリューションというのを、
糸井さんに頼らなくても‥‥いやしかし、
ぜひカレーをもう1杯(笑)。
糸井 いやいや(笑)、
ぼくは営業は、できればゼロにしたいです。
ほんとうに夢のような話だけど、
それがかなったとき、
営業は「営業」じゃない名前になってると思います。
「ソリューション◯△ンナー」みたいな感じ?
塚越 わははは、そうですね、
きっと「プランナー」みたいな
「◯△ンナー」という名前になるんだろうなぁ。
役割もずいぶん変わるんだろうし。
糸井 変わると思う。
「ろくでもないものを売ってみせる奴は、
 うちにいてもらっちゃ困る」
って、会社がクビにするくらいになりますよ。
営業の人が、ろくでもないものじゃないものを
しかも「ビジネス相手のお仕着せ」の感覚じゃなく
自分の感覚でつくればいい。
塚越 小売店をはじめとするビジネスパートナーも、
お客さんも、
いっしょにその目的に向かって、
できることを考える人たちになる。

糸井 そうです。そうです。
塚越 いまの、この変化というのは
おもしろいですね。
糸井 おもしろいですよ。
これはもう、長生きしてみたくなりますよね。
塚越 このあとどうなるか、見たいです。
糸井 生きてないとつまんないね。
塚越 そうなんですよ。健康が大事です、と、
最後はそんなまとめになってしまいます(笑)。

しかし‥‥糸井さんはどうやって
一発の「ソリューション」を
いつも見つけられるんですか?
糸井 ぼくは単純なんですよ。
つまり、生活者の実感からしか発想していない、
ということなんです。
「あったらいい道具があるから使おう」とか
データや知識も、あんまりないんです。
あっても、新しくないし。

すべては、
「ふつうの人はこう考えるんじゃないかな」
というところから、逆算していることです。
ぼくの「ほぼ日」での役まわりは
完全に「ふつうの人の役」なんですよ。

塚越 でも、そうじゃないことが混ざるから。
糸井 はい(笑)。
社員にはそのあたりを
怖がられたりしています。
塚越 でしょうね(笑)。
糸井 こうして、塚越さんやぼくのように
近いことを探してる人って、
どんどん集まってきますよね。
塚越 それ、楽しいですね。
糸井 楽しいですよ。
塚越 ぼくらもこれを、クモの糸だけど、切らないで
太い糸にしていきたい。
糸井さん、楽しいことは絶対出てきますよね。

糸井 うん、出てきますよ。
結局、何度も言うようだけど、
コンテンツビジネスです。

ゴールドラッシュの金(きん)で
儲けた人なんていないと、よく語られます。
ゴールドラッシュというコンテンツが生んだものは
たいしたことないかというと、そうじゃない。
リーバイスがジーンズをつくったとか
レストランがチェーン店をつくったとか言いますが、
しかし、儲けたのは、やっぱり鉄道です。
そこの場所に人を運んだものがいちばん儲かった。
塚越 そうか。
金掘って儲けた人、いないんだ。
糸井 金は幻です。
でも、金というのは
すごいコンテンツなんですよ。
ゴールドラッシュがなかったら、
何も生まれたかったんです。
「あっちに行けば何かある」という
その空気は、つくろうたってつくれません。
アメリカを鉄道でつなごうなんて、
できっこないようなことが
幻の金によってできたわけです。
塚越 コンテンツのまわりにあるインフラには
すごいコストと手間がかかるわけだけども、
それを使うビジネスが儲かったりする。
それはすごくおもしろい話だし、
ぼくらが元気になる話だなぁ。
これからも、おもしろいこと
やっていきたいです。
また、話しましょう。
糸井 うん、また話しましょう。
今日はありがとうございました。
カレーじゃなくて、こんどは焼肉かな。

(おしまい)
2014-03-03-MON
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