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どうも、話があちこち行っちゃうんだけど、
まあ、もとはといえば『リズム天国』という
ゲームから始まったことなので、
せっかくだから一度話を戻しまして。
そうですね(笑)。
あの、糸井さんは、
『リズム天国』というゲームを遊んで
どういうところに興味を持たれたんですか?
やっぱり、自分が日常を暮らすうえで、
「自分のリズム」っていうものを
うまく出せてないんじゃないか
っていう気持ちがあったんですよ。
あの、なんていうんだろう、
やっぱりしっかりした体格で、
重心がしっかりしてて、
リズム感のいい人っていうのを見ると
憧れるんですね。
うん、うん。
ダンスだとか、格闘技だとか、
体を使って表現することが上手な人に
やっぱりぼくは憧れるんですよ。
で、自分がそうじゃない側に
ずーっといるんだって決めちゃうのも悔しいし、
残念だなーっていう気持ちでいたんですよね。
っていうときに『リズム天国』と出会って、
つんく♂さんの書いた「リズム論」も
教えてもらって読んで、ひょっとしたらこれは、
自分が「自分のリズム」を
取り戻せるのかもしれないと。
うん、うん。
で、遊んでみたら、つんく♂さんの言ってる
「リズム論」の部分も実感できたんですけど、
基本的には、純粋にゲームとして楽しみました。
ああ、それはうれしいですね。
やっぱり、『リズム天国』というのは
ぼくの理論がもとになってはいるんですけど、
口先だけのものにはなっていないというか、
ゲームソフトを作るべき人たちが、
しっかりとぼくの話を吟味して、
ゲームに仕上げてくださったんですよね。
ですから、遊んでくださった人たちは、
オトナであろうと子どもであろうと、
ぼくの理論と関係なく
楽しんでくださってると思うんです。
きっと、そうでしょうね。
遊んでいるあいだは、そんなに
自分のリズム感のことを
意識したりはしないんですけど、
できない面がずっとできずにいたりすると、
やっぱり考えちゃうんですよね、
自分ができない側にいるんだということを。
オトナの人ほど、
同じところでつまずくんですよね。
子どもは柔軟にクリアーしていくんですけど、
オトナは、できないことがあると
理屈で考えていこうとするから、
できない面がますますできなくなるというか。
そうなんですよね。
ただ、自分ができないんだということを
証明されちゃうっていうのは
ちょっとうれしくもあるんです。
悔しいし、うれしいんですよね。
つまり、それは、自分の体が間違ってるっていうか。
脳が間違ってるっていうことですよね。
で、間違ってるっていうことをわかること自体は
いいことだなって思う。
なるほど(笑)。
つまり、自分のことが
わかるっていう楽しさですよね。
そこはとってもよかった。
あの、もうひとつよかったなと思うのは
このゲームを『メイドインワリオ』のチームが
作っているということで。
こう、きちんとバカバカしくまとめているというか、
「先生」のにおいがしないんですよね。
ああ、うん、うん。
ケーキ屋さんじゃなくて駄菓子屋っていうかさ。
はい、はい。
それとつんく♂さんの「リズム論」という考え方が
運よくクロスしたんだろうなあって思って。
こんなチャンスはお互いにとって
なかなかあるものじゃないと思うんです。
かもしれないですね。
うん。場所を間違えると、
スノッブなものになりかねないからね。
つまり、妙に高尚に仕上げて
アートになっても意味がないでしょう?
そうですね。
よくある「音ゲー」になってしまうのも
さけたかったし。
ああ。
だから、この企画はもう、
「持っていくなら任天堂やろ」っていうことしか
思い浮かばなかったですね。
ほかのところに持っていったら、
「ふつうのゲームになってしまうな」と思って。
ふつうに仕上げると、
つんく♂さんの音楽を利用したゲームができました、
ってなっちゃうんでしょうね。
そうですね。
妙にファッションっぽくなってしまったりね。
だから、うまく練ってもらって
本当によかったと思ってます。
ゲームとしてのクオリティーはすごく高くて、
ぼくがやりたかったことの入門編としては
すごくいいものになったと思うし。
もしもこの先ができるのであれば、
まだまだ楽しませることができると思うし。
きっと、子どものころから
こういうふうに音楽と接していたら、
育ち方が違ってきますよね。
意識は違ってくると思いますよね。
だからピアノを習ってる人は、
『リズム天国』の楽しさをベースに
音楽やピアノを考えてくれたら
すっごくうれしいなあと思うんですよ。
「先生、リズムずれてるよ」みたいな
生徒が出てきていいと思うんですよね。
ボディの感覚と脳の感覚が
自然につながってるっていう人に
なっていってほしいじゃないですか。
『リズム天国』がその入り口になったら
それは愉快ですよね。
そうですね。
まあ、『リズム天国』1本で
全部がわかるということじゃなくて、
これは途切れ途切れのものだと思うんですけど、
子どもたちや、子どもたちを教える側にとって
なにかのヒントになればいいと思うんです。
ずーっとあとになって、
あ、そういえば昔、つんく♂のゲームをやったなあ、
というくらいのことでいいんですけど。
ああ、なるほどね。
(続きます)

2006-12-26-TUE

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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN