糸井 |
鶴瓶さんがさ、
『A-Studio』だっけ、トーク番組。
あれをはじめるときの新聞を読んで、
ぼくは鶴瓶さんに、
すぐに連絡が取りたかったんですよ。 |
鶴瓶 |
ほうほう。 |
糸井 |
「いまのテレビは
ぜんぶアンケート取ってるのが嫌だ」と。
「あのアンケートをなくした番組を作りたい」
っていうのがスポーツ新聞に書いてあったんです。
おれがもう、まったく、
テレビから離れた理由は、それなんですよね。 |
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鶴瓶 |
うん。 |
糸井 |
つまり、
全員がわかってることを再現するって
おもしろくもなんともないじゃないか? と。
テレビっていうのは、
なにが起こるかわからない、
おおきい意味では「報道」の形なんですよね。
テレビって、ぜんぶ報道なんです。
なのに、それがぜんぶつぶされちゃって、
魅力を感じなくなってたところに、
鶴瓶さんが「アンケートやめたい」って。 |
鶴瓶 |
いや、それはね、
ほんとあるやないですか。
トーク番組の前にアンケートもろて、
「これはどうですか、これはどうですか」って。
これ、おかしいやんと。 |
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糸井 |
おかしい(笑)。 |
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※『A-Studio』(エイ・スタジオ)
TBSで2009年から放送されている、
公開トーク番組。
番組は毎回、鶴瓶さんが
ゲストについての取材を重ねた上で、
トークの収録が行われる。
取材の対象は共演者やマネージャー、
ときには家族や幼なじみにもおよぶ。
鶴瓶さん自身が取材を行うため、
ゲストも取材を受ける人も
たいへん驚くことが多い。
「事前アンケートを行わない番組」を
実現するために鶴瓶さんは、
どんなにたいへんでも
自分が取材を行うことを約束したとか。
『A-Studio』の公式サイトはこちら。 |
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鶴瓶 |
「これをやるのがキャスターやろ?」と。
「それが司会じゃないの?」と。 |
糸井 |
だれの役目なんだっていうのは、
思いますよね。 |
鶴瓶 |
そうそうそう。
それをやるのがぼくらの役目でしょう。
おれがほんとうに、
「これを聞きたい、あれを聞きたい」
思いながらやるのが、本番でしょう。 |
糸井 |
うん、うん。 |
鶴瓶 |
あとね、取材がおもしろい。
その人の周りの人に会いに行くと、
活字にないものが、すごい出るんです。
だからまあ、
誰かが取材してどっかで読んでることでも、
その人に会って聞くと、
「あ、ほんまやったんや」と、
あらためて感じるわけですよ。
「そんなんウソや」と思てても。
例えばね、
松たか子さんなんかは、
染五郎さんがお兄さんで、
松本紀保さんがお姉さん。
染五郎はもう昔から芝居が好きで、
ずーっと松たか子に、
まあ言うたら、
もう端役をやらせてたんやね。 |
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糸井 |
はあ~。 |
鶴瓶 |
自分はずっと主役をやってて。
それ、インタビューで見たことあんねんけど、
そんなんほんまかいな? と思いますでしょ。
でも、ほんとなんですよ。
染五郎さんは、ものすご芝居が好きなんです。
それで、
「動いたらあかん!」とか、
お父さんに言われたことをぜんぶ、
ずーっと、松たか子にやってたんです。 |
糸井 |
へええー。 |
鶴瓶 |
「違う!」
パンッて叩いて。 |
糸井 |
おもしろいねぇ、やっぱり。 |
鶴瓶 |
それはおもしろい。
やっぱりそこまで聞かないと。 |
糸井 |
‥‥はあ~~~。 |
鶴瓶 |
だから、活字で読んで、
「ほんまかいな?」なことでも、
実際に取材して、人の言葉で聞くと、
「これは言ってあげたい」と思うんですよ。 |
糸井 |
うんうん。
‥‥おれはね、鶴瓶さん、
あの記事、
「アンケートをなくした番組を作りたい」と
鶴瓶さんが言ってる記事を読んだときにね、
うちの会社に、鶴瓶さんを入れたいと思った。 |
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鶴瓶 |
ふははははは。 |
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糸井 |
いや、むかしぼくね、
ある会社に呼ばれて
ゲームの審査員みたいなことを
してたことがあるんです。
そのとき、なんかその会社の中が
学校の部室みたいにみえたんですよ。
いいなぁ、と思って、
「この会社に入れてくんないかな」
って言ったんですよ。
月に3万円とかで、ちゃんと仕事するって。
仲間に入りたかったんです。
そしたら、
「いいですね、わっはっは」
で終わりになっちゃった。 |
鶴瓶 |
本気でそう思ったん? |
糸井 |
思ったんです。 |
鶴瓶 |
おれもね、魚屋を1年くらいやりたいと
ほんまに思ったことがあるんですよ。 |
糸井 |
わかりますよ、ありますよね。 |
鶴瓶 |
若いときですけどね、
ほんまにそうしようかな思たんやけども、
いや、それよりもね、
そういう芸人になったらええんや思て。
いまぼくは、
「宅配便の笑い人(わらいびと)」
みたいなものですからね、町の。 |
糸井 |
そうですね、そうですね。 |
鶴瓶 |
有名じゃない、何もしない人に
スポットを当ててあげたいんです。
人間国宝とかじゃなくて、
町の近所にいたはる、なんでもない人。
でも、いい人。
その人にどう、スポットを当てるか
いろいろ考えるのが、
ぼくはいちばんおもしろいと思うからね。 |
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糸井 |
ああー、よくわかる、それは。
‥‥うん、だからね、
こういう話を、
「会議」をしたかったんですよ。
対談で会うっていうのは、
お互い「鶴瓶として」「糸井として」
になるじゃないですか。 |
鶴瓶 |
まぁ、そやね。 |
糸井 |
そうではなくて、
ふたりが同じ会社の人のように、
「このプロジェクトをどうするか」って
話し合えるといいなあって思ったんですよ。
友だちとして飲んで語るだけじゃあ、
できないこともありますからね。 |
鶴瓶 |
うん。
それは、そうなんやろね。 |
糸井 |
で、
月にいっぺんとか、
ふた月にいっぺんとか、
鶴瓶さんに会うのってできないのかなと、
本気で打診しようと思ったんだけど‥‥
難しいですよ、そんなことは(笑)。 |
鶴瓶 |
ぅふっはっはっ。
ほんま、あなたは、
いろいろおもろいことを(笑)。 |
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(つづきます) |