お久しぶりです、鶴瓶さん!
ほぼ日には2011年以来、
8年ぶりのご登場となる笑福亭鶴瓶さん。
たっぷり糸井と語ってくださいました。
人気番組『家族に乾杯』のこと。
52年ぶりの同窓会のこと。
ももクロのこと。うれしかったことばのこと。
そして、鶴瓶さんの愛する落語のこと。
気心のしれた者同士、ふたりの会話は
軽やかにポンポン飛びはねていきます。
いっぱいしゃべって、いっぱい笑って、
途中、いっしょに給食もいただきました。
できることならずっと聞いていたい、
ふたりの「いま」が詰まったフリートークです。
深く、ゆるく、全9回。どうぞ!
- 鶴瓶
- この前『家族に乾杯』で、
私有地の前に「立入禁止」って貼紙があって、
そのだいぶん向こうに、
畑仕事してるおばあさんがいたんです。
俺、なかに入ったらあかんと思って、
じっとそこに立ってたら、
その人が声かけてくれて。
「あんた、人の家によう入ってる人やろ」って。
- 糸井
- まちがいではない(笑)。
- 鶴瓶
- それで「ぼくのこと知ってます?」って聞いたら、
「知っとる」言うんです。
それでしばらくやり取りしたあと、
「こっちおいで」って言ってくれて、
なかに入ってちょっとしゃべったんです。
そうしたら、その人の話がまたおもろい。
しかも「いくつですか」って聞いたら
「101歳」って言うんよ。
- 糸井
- へぇーー!
- 鶴瓶
- ふつう、そんな人おらんやん。
その人に「そこおって」とか、
こっちで言うたわけちゃうんよ。
その人にそこで出会うんも、
おもろい話が聞けたんも、
ぜんぶがたまたまなんよ。
- 糸井
- それって、あみだくじの道を
1回ずつ曲がるようなものだから、
鶴瓶さんはそこでどうするかという選択を、
1回ずつ試されてるわけですよ。
- 鶴瓶
- ほんまそうなんよ。
私有地の貼紙を見逃してたら、
その人にも拒絶されてたやろし。
どうやって出会ったかで、
こころのひらき方もかわってくるし。
それはほんま、あみだくじですよ。
- 糸井
- 「人はこう生きるべき」
みたいなことを語るような人でも、
その場所に一歩も
入れないことだってありますからね。
じぶんが選んだことの連続が、
そこにつながっていくわけで。
- 鶴瓶
- だからそれは、
番組がどうこういうよりも、
さっきの志ん生の話と同じで
「おもしろくしないこと」ですよ。
- 糸井
- そうですね。
ただ流れに乗って、相手に失礼のないように。
でも、じぶんもなるべく我慢しないように。
- 鶴瓶
- そう、我慢したらあかん。
流れに身を任すこと。決めすぎないこと。
- 糸井
- 決めてもムダだからね。
- 鶴瓶
- ムダやね。
決めたことをいっぺんパーンと放してみる。
それができるということがすごく大事。
- 糸井
- ぼく、あの番組に3回出てるけど、
まだできるだろうかって、
いつも思いながら行くんです。
それで、できるとすごくうれしい(笑)。
- 鶴瓶
- そうやろうね。
- 糸井
- ぼくなんかが行く場合、
「だれだっけ?」って言われたらまだマシで、
反応がゼロのときだってあるんです。
- 鶴瓶
- そりゃあ、あるよ。
それはそれでゼロをたのしまないと。
- 糸井
- ほんとそう(笑)。
若いときだったら
「樋口可南子の旦那さん?」というので
「まいったなぁ」というのもあったけど、
いまは「そうそう!」ってなるもん。
- 鶴瓶
- ふはははは。
歳とるって、そういうことやね。
- 糸井
- すごいよね。へっちゃらだもん。
- 鶴瓶
- へっちゃら、へっちゃら。
後輩であろうが、上であろうが、
すごい人がおったら「この人はすごい」って、
ほんまに認められるようになったしな。
いつからか、ほんまにそう思えるようになった。
- 糸井
- 俺のほうがすごいと思いたい時期って、
やっぱり人にはあるもんで。
- 鶴瓶
- 糸井さんもあったの?
- 糸井
- あった、あった。もっと若いときだけど。
一時的に、負けたくないがあって。
それがスッとなくなって。
- 鶴瓶
- 糸井さんの若いときのこと、
そこまでしらないけど、
でも、昔いっしょにやった、あれ。
『パペポTV』1万人ライブのときの
イベントポスター。
「見てるあんたも同罪じゃ」って。
- 糸井
- モザイクのあるやつ(笑)。
- 鶴瓶
- あれはすごいな。
あの仕事のこと、いまだに言われるもん。
考えたらすごいメンバーやで。
糸井さんと、あと‥‥。
- 糸井
- 浅井慎平さん、石岡怜子さん。
- 鶴瓶
- なぁ、すごいメンバーや。
そんなにたくさん刷ったわけやないのに、
いまだによく言われますよ。
あの「パペポ」のが家にあると。
- 糸井
- うれしいですね。
- 鶴瓶
- 昔好きやったテレビ番組のポスターを、
60すぎたオッサンがまだ家に貼ってるんよ。
それってすごいことやで。
そういう仕事を残してるんは、
うれしいし、すごいなと思うわ。
- 糸井
- ああいう仕事は、
どのチームでどんなことをするかで、
ほとんどが決まるんです。
ギタリストなんかが、
時々いろんなバンドに入って
ギターを弾いたりするでしょう。
当時のぼくはあんな感じのことを
やってただけなんです。
でも、だからこそ時々、
じぶんから動きたくなることがあるんです。
じぶん発のものをやってみたくなる。
- 鶴瓶
- 仕事って、やりたないとやれんでしょう。
なんぼ、ぎょうさんお金もうたって、
相手が理解してないときもあるでしょう。
お金はあるけど、全然わかってない。
そんなん、よけい腹立つやん。
- 糸井
- 意地悪な人からしたら、
きれいごとに聞こえるかもしれないけど、
やっぱりお金じゃないんですよね。
- 鶴瓶
- まったくそう。
それを「そんなん嘘や」言うやつはダメよ。
そういうやつは、ちゃんと仕事してないのよ。
- 糸井
- ちゃんとしてれば、
かならずそうなっていくわけで。
- 鶴瓶
- 「そんなん嘘やん、きれいごとやん」って、
すぐに言う人おるやん。
- 糸井
- すぐ言うんだよね。
- 鶴瓶
- 文句だけ言うのってほんまかんたん。
でも、人に協力するのは大変なこと。
人に協力するというのは、
じぶんに力がないとできないからね。
- 糸井
- でも、鶴瓶さんは丁寧に生きてるから、
いろいろ言われるほうじゃないでしょう?
- 鶴瓶
- あんましらんけど、
それでも言うやつはおると思うよ。
俺、落語はじめたのが50歳でしょう。
まだやりだしたころやから、
見てない人も多いんですよ、ぼくの落語。
そういうのを「下手やん」って、
見ない人はおると思うし。
- 糸井
- あぁ。
- 鶴瓶
- うまいか下手かはしらんよ。
しらんけど、そういう人らはたぶん、
「手編みセーター」の良さをしらんのやろ。
- 糸井
- だいぶん「手編み」が板についてきたね(笑)。
- 鶴瓶
- そやろ(笑)。ちょっと気に入ったんや。
- 糸井
- いま、何気なく出てたもんね。
手編みの鶴瓶。
- 鶴瓶
- そうや、わしが手編みの鶴瓶や。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- ということで、
そろそろお時間のようです、師匠。
- 鶴瓶
- え、いきなりやな。
こんな終わり方で大丈夫なん?
- 糸井
- 大丈夫です。
ありがとうございます。
- 鶴瓶
- ああ、そう、まあええわ。
たのしかったです。
給食もおいしかったし。
- ──
- 最後にそちらで、
おふたりの写真を撮らせてください。
- 鶴瓶
- ありがとうございました。
ほんなら、このへんで。
- 糸井
- そこまで送っていきます。
(エレベーターホールへ向かうふたり)
- 鶴瓶
- あれ、まだ給食やってんの?
- 糸井
- 後半のグループなんです。
人数が多いので2回にわけてて。
- 鶴瓶
- へえ。ほんなら、ちょっとのぞいたろ。
(大ホールに顔を出す鶴瓶さん)
- 乗組員
たち
- え? えっ?!
- 糸井
- 丁寧に生きる方、鶴瓶さんです。
- 鶴瓶
- どうも鶴瓶です。
- 乗組員
たち
- えっ! あ、鶴瓶さんだ!!
ワァーーー!!(大歓声)
- 鶴瓶
- どうもどうも、鶴瓶です。
- 乗組員
たち
- パチパチパチパチ!(拍手喝采)
- 鶴瓶
- では、ぼくは帰ります。
- 乗組員
たち
- えぇぇーー(笑)!
- ──
- せっかくなので、
最後にみんなと写真を一枚!
- 鶴瓶
- はいはい、写真ね。
ほな、いくで。はい、ポーズ。
(おしまい)
2019-02-16-SAT
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN