第8回 この人たちがいる会社。

福原 この番組は、生放送をやることを
ひとつの目標にしていました。
僕はやっぱり、生でやることが
テレビとしては究極だと
思っているところがあります。
ウゴウゴルーガの生放送は、
放送開始から半年経って実現しました。
「プリプリ事件」の次の週の朝に
1週間の生放送。
それはそれでなかなかうまくいきました。
その余勢をかって、その年の夏には
土曜夜8時のゴールデンで
生放送のスペシャルまでやっちゃいました。
その放送ですが、1時間のうち40分ぐらいは
番組としてちゃんとおもしろいんですけど、
最後の10分はもう何が何だかわかんない。
カオスですよ(笑)。
イトイ その話を聞いて僕が思うのは、
「世界ってそういうものですよね。
 カオスですよね」
なんていうことなんですが‥‥
当事者はきついよね(笑)。
福原 きついです。
桜井 でもね、演出家の福原伸治という人は
カオス好きでもあるわけです。
混乱が嫌なんだったら、
生でやんなきゃいいじゃないですか。
きっちり生中継しなくても
各コーナーをVTRで構成するやり方だって
あったはずです。
そうすると、何の問題もなく
きちんと収まりますよ。
イトイ なるほどね。福原さんは
自分に問いかけるのが好きなのかな。
福原さんの中には
「カオスが本当は怖い自分」もいるの?
福原 いないです。
イトイ それはその‥‥悪いですね。
桜井 悪いのよ(笑)。
さらに、福原さんは、
論破型な性格ですから
カオスを作るために理論武装もできちゃう。
イトイ そりゃ、悪いですねぇ。
桜井 天真爛漫に「やっちゃいましたー」なら
かわいいですけどね。
イトイ 愉快犯みたいなものなんでしょうか。
福原 思いつきに理論武装を加えるという、
最もたちの悪い人間です。
イトイ いちばんやりたいのは
「悪いこと」。
福原 そこに至るまでにどういうふうに
理屈をつけるかを考える。
桜井 悪い悪い。
イトイ 凶悪だね。
桜井 凶悪犯という意味では、
フジテレビの演出家の中でも、
かなりレベルの高いところにいると思いますよ。
でも、悪かったり奇妙だったりする才人は
ほかにも会社に何人か、います。
イトイ たしかに、フジテレビの番組の中で
「これは墓場のあとに建ったんだよ」
というような片鱗が見えるときが
ありますもんねぇ。
社会性も充分知ってる人たちが、
「なんだ、これ!」という
番組を、よくまぁ作りますね。
桜井 十分熟知していて、
とんでもない番組を作っている人たち、
いますよ。
過去にさんざんっぱら
夜中のH系番組をやってた人‥‥それから、
ややスマートな人もいますし。
福原 みんな、昔のフジテレビを知ってる人ですね。
イトイ 縄文の血が残ってるみたいな話だね。
福原 あの頃のテレビって
特攻隊ばっかりだったから、
ボンボンボンボンやってましたけど
「もうそっちに行っちゃダメなんだな」
ということを、いまの世代はみんな、
知ってるんです。
イトイ でも、いまは逆に、
荒々しいものやシャープなものを
ほかの会社から
買ってこなきゃいけない時代でしょ?
自作しなくてよくなった分だけ複雑です。
福原 昔はとにかくエッジのある人が
テレビを見てたけど、
いまはそんなに見ていない。
テレビ以外にもいろんな表現が出てきて、
テレビはどんどんそぎ落とされてしまった。
荒々しいものはみんな、ほかの場所に
行ってるんじゃないでしょうか。
ウゴウゴルーガは
「何でもありのテレビ時代」の
最後だったのかなと思います。
イトイ テレビというものと抱き合って生きる人は、
確かにもうあまりいないかもしれない。
でも、それでもやっぱり
可能性があると思わせるのが
テレビのすごさです。
桜井 うん、そうですね。
いまも大悪党として生き残っている、
しかもゴールデンをやってる人たちを
やっぱり私は尊敬します。
イトイ こういう話を聞くとやっぱり
フジテレビって、底力があるね。
それぞれを秀才型にしない努力を、
誰かがものすごくしてますね。
桜井 「縄文の血」を絶やさないように、
会社がいっしょうけんめいですね。
福原 とつぜん「そんなパス?」ってのが
出てきたりしますもん。
桜井 それでも、ですよ、
このウゴウゴルーガという番組は
1992年10月から
1994年3月までしかできませんでした。
どう考えても。
イトイ それ以上やったらいけなかったというのを
本人たちも知ってたんでしょうね。
でも、みんなが
「おもしろい時代があったんだな」と
思ってくれるとありがたいね。
桜井 ずっとウンチだけだった回も含めて
あの番組を1年半やったってことは
すごいことだと思います。
イトイ 俺、なんだかいま
漠然とした思い出だけど
打ち上げのときに
桜井さん、涙ぐんでたような気がするよ。
桜井 そうですね。最終回の日は、
ずっとうれしかったです。
イトイ こんな話が
できるようなことばっかりやってたら、
一生楽しいね。
桜井 楽しいです。
私は会社に給料払ったっていいと
思ってます。
イトイ その気持ち、わかるわ。
「くれた分から払ってもいいです」
という感じ。
桜井 でも、それって
会社が楽しいわけじゃないんですよ。
努力して楽しくしてるんだよね、みんなで。
イトイ うん。テレビ局って本当は
厳しい仕事なのかもしれない。
だけどね、この人たちを
動かしておく場所を持っている
フジテレビという会社は、
少なくとも、そこにある。
それは、すばらしいことですね。
福原 われわれがいなくなったら、
会社もいよいよ終わりですよ(笑)。
でも、テレビという形態も、
あと何年かしたら、
おそらくいまのままじゃないでしょう。
フジテレビという名前は残っても、
やってることは全然違うかもしれません。
ただ、なんとなくマインドはみんな、
変わんないんだろうなと思います。
イトイ 「縄文の血」じゃないけど、
そのことは、通じるんですよ、
これから入ってくる、若い子たちにもね。
 
これで、ウゴウゴルーガの
連載はおしまいです。
おもしろい人たちでしたね。
それじゃ、いつかまた、
お会いいたしましょう。
いついつまでも、
おきらくごくらく!
‥‥ハイ、よくできました!
ご愛読、ありがとうございました〜。
2008-05-27-TUE
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