2、「せっぱつまったおかしみ」
このあいだ夜道を歩いていたら、
ビニール袋に入れた片手を高く上げて、
手首のところをぎゅっとひもでしばって、
中のタオルに血がしみている、真っ青な顔の女の人と、
その友達らしき女の人が、
すごい速さでぴゅっと目の前にやってきて
友達のほうが
「小林外科はどこですか!」と
せっぱつまった様子で聞いてきました。
私は引っ越してきてたった二週間ですよ!
どうして私を選ぶのです!
と言いたかったが、その手のようすと中がどう切れているのか
想像したらくらくらしてあわててしまい、
「近くに何がありますか?」と聞いたら、
「お好み焼き屋!」と言う。
それでぴんときて、友達のほうに
「あの先の三叉路を、花屋の右に入っていく感じで・・・」
と道を指差して説明したが、
その友達はえらくそういうことににぶそうなタイプで、
「ええ?あっち?それとも今人が立ってるほう?」
などと言いました。
すると今まで黙っていたケガ人が突然のりだしてきて
「わかった!あっち!今自転車が行った方!ですね!」
と言ったのが、平常時のふたりをほうふつさせて、
おかしくて吹きだしたかったが、必死でこらえた。
そしてふたりは風のようにたたた!と走って行ってしまった。
どうでもいいけれど、そういうときは徒歩で来ないでほしい。
救急車に乗ってほしい。ぜひ。
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