ほぼ日のコンテンツとしてスタートした
「うれしいセーター」プロジェクトは、
思いついてから約2年をかけて着々と進められ、
2016年12月8日に
作品集『うれしいセーター』となって、ついに書籍化。
みなさんのお手元に届けられます。
この本ができるまでの、
ちょっとしたメイキングのような記録をここに残します。
作品集を手にしたら、
どうぞあわせてお読みください。
その一冊に、より愛着がうまれますように。
ほぼ日が三國さんに出会ったのは2010年、
「三國万里子の編みものの世界。」というコンテンツのため、
取材を重ねたのが最初でした。
そこから4年ほど、
様々なお仕事でごいっしょしているなかで、
いつごろからか互いに、こんなことを語り合っていました。
「三國万里子+ほぼ日で、
いままでにない編みものの本をつくりたい」
この漠然とした希望はやがて、
三國さんからのアイデアで一気に具体的になります。
「いろいろな方々からセーターのリクエストを聞いて
私がそれを編んでいく、という企画はどうでしょう」
ぱあっと、イメージが広がったのを覚えています。
いいかもしれない‥‥いや、それは、いい!
「うれしいセーター」プロジェクトのスタートです。
2014年、冬のことでした。
誰に編むかを考えるのは、
このプロジェクトの中で最もたのしい行程のひとつでした。
「あの方はどう?」
「この人もきっとすてき」
「憧れのあの人に、三國さんのセーターを着てほしい」
何度かの打ち合わせを繰り返し、
12人の名前が書かれたメモが完成しました。
それはやはり、わたしたちがつくる本なので、
ほぼ日や糸井とご縁のあった方が中心になりました。
※それぞれのお名前をクリックすると、
ほぼ日にご登場くださったコンテンツに進みます。
片桐仁さん(コメディアン・俳優・彫刻家)
※2004年「TARO-Tシャツ」に参加してくださいました
上記12人の方々に企画の趣旨をお伝えする文面を送り、
ご登場をお願いしました。
糸井重里からの、三國万里子さんの推薦文を添えて。
その推薦文は本来、
依頼をする方々が読むための文章なのですが、
糸井が綴った内容は
わたしたちがもっともっと広く伝えたいと願っていた
三國さんの魅力そのものでした。
クリエーター・三國万里子のすばらしさについて、
まだまだ秘めている可能性について。
糸井の推薦文を、多くの人に読んでほしいと思いました。
この機会に、公開いたします。
三國万里子さんを頼りにしています。
糸井重里
震災の大きな被害にあった東北で、
「世界に通用する手で編むニットの会社」を
やろうと思いついたとき、
まっさきに思いついたのが三國万里子さんのことでした。
手編みだからいいというだけじゃない。
まごころをこめて、時間をかけているというだけで
人によろこんでもらえるわけじゃない。
やっぱり、「かっこいい」といいますか、
着ていて「憧れられるようなもの」をつくれなかったら、
人はほしがってくれないと思いました。
でも、三國万里子さんがデザイナーを引き受けてくれたら、
「かっこいい」「憧れられる」ような
ニットができるはずだ。
そういうふうに確信できたのです。
こうして『気仙沼ニッティング』という会社は、
三國万里子さんのデザインした
「世界に通用する手で編むニットの会社」として
スタートすることができました。
むろん、編み物を「いわゆる手芸」の世界から、
もっともっと「かわいくて素敵なもの」として
若い女性たちの「人気のジャンル」にしたのは
三國さんの本だったとか、
そういうことも知ってもらえたらうれしいのですが、
ぼくとしては、なによりも、
デザイナーとして「頼りにした」という
三年前の思い出を伝えておきたいなぁと思うのです。
「なにげなさ」「かわいさ」
「かっこよさ」「おちゃめさ」‥‥
編み物の古典的な知識や知恵に裏打ちされた
三國万里子さんの表現は、自由闊達です。
どうぞ、いっしょに「出来上がり」をたのしんでください。
あ、ついでのように言うのですが、
三國万里子の伸びしろは、
まだまだオソロシイほどたっぷりあります。
10年20年先には、実際に「世界の三國万里子」として
知られるようになっていることを、ぼくは想像しています。
2015年1月26日
ご快諾くださった方々に、三國さんがお手紙を書きました。
それはたとえば、このような内容です。
▲宮沢りえさんへのお手紙。文中の「>>みちこさん」は、ほぼ日の山川です。
▲小林薫さんへのお手紙。手紙にはすべて
三國さんのイラストが添えられていました。
三國さんが書いた手紙をたずさえ、
ほぼ日編集スタッフが12名の方々をたずねます。
それぞれのリクエストをうかがうために。
お手紙を読んでいただいたら、インタビュースタート。
この段階では、まだ三國さんは同席していません。
遠慮なくリクエストをしていただくために。
どんなセーターを編んでもらうか‥‥。
その決め方は様々でした。
とても悩む方がいらっしゃれば、
すこし考えて「こういうの」と注文する方、
お会いする前から具体的なイメージを固めていた方、
十人十色です。
それぞれに、しっかりとご希望ををうかがって
インタビューは終了。
インタビューの最後にはかならず、
すでにあるセーターを試着して写真を撮らせていただきます。
サイズ感を、三國さんに伝えるために。
この場での会話はすべて録音し、
それをそのまま三國さんにお渡しします。
2015年は主にこの、
「リクエストを聞いて三國さんに録音を渡す」を
繰り返しました。
STEP5 三國さんが、編む。
録音されたリクエストの会話を、三國さんが聴きます。
聴いて、どんなセーターにするか考えます。
要望を取り入れたり、
ときにはバランスを考えて、要望を取り入れなかったり。
この行程で、三國さんと話し合うことは
ほとんどありませんでした。
デザインを考え、編みはじめてから完成までは、
完全に三國さんだけの世界、三國さんの時間です。
完成したセーターは、それぞれのもとに送られます。
ほんとうに普段から着ていただきたいので、
基本的に撮影時のスタイリングは
編まれた方々におまかせしました。
セーターを合わせる服を、ご自分で考えていただくために。
STEP6 撮影をする。
さあ、たのしい撮影のはじまりです。
上の写真のようにスタジオで撮ることもあれば、
お店をお借りして撮ることも、
外での撮影もありました。
こうして2016年の夏までに、すべての撮影を終えました。
12人が登場するので、12回の撮影です。
ひとまずは、お疲れさま。
‥‥ですが、撮影は終わっても本作りはまだまだ続きます。
STEP7 編み図をつくる。
撮影したセーターは、いったんこちらでおあずかりします。
そう、「編み図」を完成させるために。
三國さんが、編みながらメモをした編み図のもとがこちら。
これと実物のセーターをもとに、
書籍に掲載するための「編み図」を制作していきます。
この行程は、実際には撮影や編集作業と並行して行われました。
全15作品分を、着々と。
間違いのないよう、ぎりぎりまで校正を繰り返して。
STEP8 三國さんが、書く。
セーターの作成と編み図のほかに、
三國さんにはもうひとつ、大きな仕事が残されています。
原稿の執筆です。
作品集『うれしいセーター』には、
三國さんの文章が、たっぷりと収録されます。
各作品の解説はもちろん、
セーターを身につけた12人にお会いしての感想、
そして、8本のエッセイ。
撮影を終えたころから三國さんは、
これらの文章をひとつずつ、ていねいに編みました。
STEP9 本がうまれる。
「いろいろな方々からセーターのリクエストを聞いて
私がそれを編んでいく、という企画はどうでしょう」
このアイデアがうまれてから約2年、
つくりたいこと、やりたいことを注ぎ込んだ、
贅沢な一冊の誕生です。
ブックデザインは、大島依提亜さん。
大島さんはこの本そのものを人に見立て、
ふわっとセーターで包むような、
そんなデザインに仕上げてくださいました。
総ページ数190ページ。
いままでの三國さんの本で、最大のボリュームです。
背表紙のない「コデックス装」という造本は、
ほとんどのページが、ぱたんと180度ひらきます。
つまり、編む人にうれしい造本。
NEXT STEP みんなが編む。みんなが着る。
2016年12月8日、
作品集『うれしいセーター』は出版されます。
編んだ人も、着る人も、うらやましい。
ここから先のステップは、あなたの手の中で。
この本を、どうぞよろしくお願いします。
ほぼ日のコンテンツとしてお届けしてきた
「うれしいセーター」の連載は、ここで終了いたします。
ご愛読を、ありがとうございました!
▲「お疲れさま!」の記念撮影。三國さんの左が写真家の久家靖秀さん、
三國さんの右がブックデザインを手がけられた大島依提亜さん。