うれしいセーター

三國万里子さんが
石川直樹さんのために、
「K2」という作品を編みました。

#1 石川さん、どんなセーターがいいですか?
2016-02-10

#2 遠征前に、作品が完成!
2016-02-11

#3 石川さんがK2から帰ってきました   
2016-02-12

独自の洗練されたニットデザインで多くのファンをもつ
われらの三國万里子さんが、
あたらしい取り組みをはじめました。
それは、
「すてきな人々に一着ずつセーターを編んでいく」
という企画です。
テーマは、『うれしいセーター』。
「この人はどんなセーターがうれしいんだろう」を、
ていねいに考えながら進める、
じっくり型のコンテンツです。

「編んでもらう人」として、
写真家の石川直樹さんをいちばん最初にお招きしました。
世界中を旅する石川さんは、
どんなセーターを
いっしょに連れて行きたいと思うのでしょう。

『うれしいセーター』の制作は、
ご希望やイメージを確認することからはじめます。
2015年の4月上旬、ほぼ日オフィスの和室にて、
石川直樹さんにお話をうかがいました。

石川さんが手にしているのは、
三國さんからのお手紙です。
イラストが添えられた、こんな手描きのメッセージでした。

石川
(手紙を最後まで読んで)
‥‥はい。読ませていただきました。
───
ありがとうございます。
石川
これ‥‥ぼくが編んでもらえる、
ということですよね。
───
はい。そういう企画をはじめたいと。
石川
なんだか申し訳ないですね。
光栄です。
───
三國さんからのお手紙に、
いくつかの質問がありました。
まず、
東京で暮らすとき、世界を旅するときの
服装を選ぶ基準やたのしむポイントについて。
いかがでしょう?
石川
世界を旅するときの服装を選ぶポイントは
とっても簡単で、機能です。
洋服は自分の身を守るものだから、
すごくかっこいいものでも
機能がしょぼいのは使いません。
やっぱり機能が重要。
かっこよくて機能的なら、
それがいちばんいいですよね。
───
なるほど。
では、東京で暮らすときの服装は?
石川
東京で暮らすときは‥‥
うーーん‥‥。
なんとなくいいかなと思うものを着るだけで、
そんなにポイントがあるわけではないんです。
そもそも自分で買うことがあまりなくて。
いろんな人から服をもらって、それを着てる。
いま着ているこれも、もらったものです。
───
いただいたものを。
石川
そうですね、それが多い。
───
すごく派手な洋服をもらって
困ったりしたことは?
石川
‥‥いや、でも、
俺に似合うと思って選んでくれたのなら
なんでも受け入れます。
わりとそうなんです。
服に限らず、ほかのことでも。
───
ほかのこととは、たとえば?
石川
たとえば‥‥本とか。
「この本おもしろいよ」と誰かにすすめられれば、
まったく興味がなさそうな本でも、読みます。
その人が感じたなんらかのおもしろいことが
きっとあるだろうと思うから。
どんなことでも、まずは受け入れますね。
───
ということは‥‥
石川さんにご希望をうかがうよりも、
むしろ、三國さんがどんなものを編むのかを
たのしみに待ったほうがいいのでしょうか。
石川
そうですね。
こんなにていねいに
お手紙を書いてくださるかたなら、
きっとぼくのイメージを
なにか持ってくれていると思うので。
三國さんがイメージして編んでくださるなら、
どんなデザインでも着てみたいです。
───
わかりました。
では、次の質問に。
いまでもセーターを着て
エベレストに登る人はいるのでしょうか?
というご質問です。
石川
それは‥‥いません。
───
いない(笑)。
石川
でも、ベースキャンプまでは着ます。
───
ベースキャンプというのは?
石川
その名の通り、登山の基地になる場所ですね。
頂上に行くために、山の麓などの平地に
装備や食料などを運び込んで、待ったり
休息したりする場所です。

‥‥あ、6月にK2遠征に行くんですよ。
───
はい、K2。
世界で2番目に高くて、
登るのが最も危険な山ですね。
以前のインタビューで読みました。
石川
もしかしたらですけど、
その前に編んでくださるなら、
持っていけるかもしれません。
───
‥‥それ、すばらしいです!
出発の日付は?
石川
6月の14。
───
いまから2か月ちょっとありますね。
それは、間に合うのではないでしょうか。
石川
遠征ではベースキャンプで過ごす時間が長くて、
2か月くらいいることもあります。
体を慣らさなきゃいけないし。
頂上に行くだけなら、
数日で済んじゃうんですけどね。
ベースキャンプで気持ちを切り替えるために、
こういうセーターを
ずっと身につけてることはぜんぜんできます。
───
それですね。
それがすばらしいと思います。

で、三國さんからの最後の質問です。
具体的に「こんなのがほしい」
というアイデアがあればお教えください。
これは、
ベースキャンプで、ということになると、
ご希望があるのではないでしょうか。
石川
そうですね‥‥
頭からかぶるセーターよりは、
カーディガンっぽいほうが使い勝手がいいです。
ジッパーがあったりとか。
───
なるほど。
石川
ただ‥‥せっかく三國さんに
編んでいただく機会をいただいて、
ものすごく自分好みのセーターができてきたら、
「2か月も着続けてぼろぼろにしたくない」
「K2に持っていきたくない」
という気持ちがわきあがる可能性はあります。
───
そうおっしゃらず、着てください(笑)。
セーターに旅をしてもらいたいので。
石川
うーーーん‥‥
じゃあ、できるだけ頑丈なのがいいな。
着たままで寝ちゃうこともあるので。
───
了解です。丈夫なセーター。
色はどうでしょう?
真っ赤とかでなければ大丈夫でしょうか。
石川
いや、真っ赤でもぜんぜん。
───
真っ赤でもいいですか?!
そうですか、わかりました。
石川
岩みたいな色よりは、
むしろ真っ赤とかのほうがいいです。
───
カーディガン、頑丈、真っ赤でもいい。
かなりイメージをいただけました。
ちなみにその、
ベースキャンプでの暮らしぶりといいますか、
どういう毎日なのですか?
石川
ベースキャンプでは‥‥
テント生活で、朝7時ころに起きて、
ミルクティー飲んで、朝ごはんを食べて、
昼ごはんを食べて、
やがて夜ご飯を食べて‥‥
───
はい。
石川
‥‥眠る。
───
おお(笑)。
石川
だから、けっきょく、
なんの変哲もないいちにちなんです。
───
でも、そこから挑むのは最も危険な山。
石川
ヤバいですね。
K2は、ヤバい山です。
───
10人に3人くらいの割合で、
登りに行く人が亡くなっていると聞きました。
石川
うん。
───
くれぐれも、お願いします。
帰ってきてください。セーターといっしょに。
石川
そうですね、はい。
───
ベースキャンプで生活する
石川さんの姿を思い描きながら
三國さんは編んでくださると思います。
石川
そうですか。
───
では、完成したらご連絡いたしますね。
石川
出発前に。
───
はい。
間に合うはずです。
石川
うーーん、たのしみです。
(2か月後の場面へ、つづきます)
2016-02-10-WED

三國万里子さんが石川直樹さんのために編んだ、
「K2」という名前のカーディガンの
「編み図」を販売します。
きっとあなたにも編めるよう、
一部の編み方だけをお見せするのではなく、
カーディガン全体の詳細な編み図を
大きな紙に印刷した、「全図」を作成しました。
この「編み図」には、石川さんがK2(山)で撮影した、
K2(カーディガン)の写真がつきます。

また、三國さんがK2を編むとき実際に使用した、
「ジェイミソンズ」の毛糸も全色セットで販売。
「編み図」と「毛糸セット」があれば、
あなたも同じ「K2」が編めます。

K2 編み図
 1,512円(税込・配送手数料別)

K2指定糸 ジェイミソンズの毛糸セット
 全19玉 12,312円(税込・配送手数料別)

※くわしくは2月12日(金)、発売と同時に発表します。

石川直樹さんの最新写真集『K2』のご紹介

『K2』大型本 石川直樹
出版社:SLANT 価格:3,996円(税込み)

「旅は続く。驚きたいから。」など、
ほぼ日でも多くのコンテンツでお話をうかがっている、
写真家・石川直樹さんの最新写真集。
2011年、23歳のときにエベレスト登頂に成功してから
標高8,000メートル級の山々に挑み続ける石川さんが、
2015年の夏、高所への旅の最終地点として選んだ
K2への遠征の日々を凝縮した一冊です。

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