独自の洗練されたニットデザインで多くのファンをもつ
われらの三國万里子さんが、
あたらしい取り組みをはじめました。
それは、
「すてきな人々に一着ずつセーターを編んでいく」
という企画です。
テーマは、『うれしいセーター』。
「この人はどんなセーターがうれしいんだろう」を、
ていねいに考えながら進める、
じっくり型のコンテンツです。
「編んでもらう人」として、
写真家の石川直樹さんをいちばん最初にお招きしました。
世界中を旅する石川さんは、
どんなセーターを
いっしょに連れて行きたいと思うのでしょう。
『うれしいセーター』の制作は、
ご希望やイメージを確認することからはじめます。
2015年の4月上旬、ほぼ日オフィスの和室にて、
石川直樹さんにお話をうかがいました。
石川さんが手にしているのは、
三國さんからのお手紙です。
イラストが添えられた、こんな手描きのメッセージでした。
- 石川
- (手紙を最後まで読んで)
‥‥はい。読ませていただきました。
- ───
- ありがとうございます。
- 石川
- これ‥‥ぼくが編んでもらえる、
ということですよね。
- ───
- はい。そういう企画をはじめたいと。
- 石川
- なんだか申し訳ないですね。
光栄です。
- ───
- 三國さんからのお手紙に、
いくつかの質問がありました。
まず、
東京で暮らすとき、世界を旅するときの
服装を選ぶ基準やたのしむポイントについて。
いかがでしょう?
- 石川
- 世界を旅するときの服装を選ぶポイントは
とっても簡単で、機能です。
洋服は自分の身を守るものだから、
すごくかっこいいものでも
機能がしょぼいのは使いません。
やっぱり機能が重要。
かっこよくて機能的なら、
それがいちばんいいですよね。
- ───
- なるほど。
では、東京で暮らすときの服装は?
- 石川
- 東京で暮らすときは‥‥
うーーん‥‥。
なんとなくいいかなと思うものを着るだけで、
そんなにポイントがあるわけではないんです。
そもそも自分で買うことがあまりなくて。
いろんな人から服をもらって、それを着てる。
いま着ているこれも、もらったものです。
- ───
- いただいたものを。
- 石川
- そうですね、それが多い。
- ───
- すごく派手な洋服をもらって
困ったりしたことは?
- 石川
- ‥‥いや、でも、
俺に似合うと思って選んでくれたのなら
なんでも受け入れます。
わりとそうなんです。
服に限らず、ほかのことでも。
- ───
- ほかのこととは、たとえば?
- 石川
- たとえば‥‥本とか。
「この本おもしろいよ」と誰かにすすめられれば、
まったく興味がなさそうな本でも、読みます。
その人が感じたなんらかのおもしろいことが
きっとあるだろうと思うから。
どんなことでも、まずは受け入れますね。
- ───
- ということは‥‥
石川さんにご希望をうかがうよりも、
むしろ、三國さんがどんなものを編むのかを
たのしみに待ったほうがいいのでしょうか。
- 石川
- そうですね。
こんなにていねいに
お手紙を書いてくださるかたなら、
きっとぼくのイメージを
なにか持ってくれていると思うので。
三國さんがイメージして編んでくださるなら、
どんなデザインでも着てみたいです。
- ───
- わかりました。
では、次の質問に。
いまでもセーターを着て
エベレストに登る人はいるのでしょうか?
というご質問です。
- 石川
- それは‥‥いません。
- ───
- いない(笑)。
- 石川
- でも、ベースキャンプまでは着ます。
- ───
- ベースキャンプというのは?
- 石川
- その名の通り、登山の基地になる場所ですね。
頂上に行くために、山の麓などの平地に
装備や食料などを運び込んで、待ったり
休息したりする場所です。
‥‥あ、6月にK2遠征に行くんですよ。
- ───
- はい、K2。
世界で2番目に高くて、
登るのが最も危険な山ですね。
以前のインタビューで読みました。
- 石川
- もしかしたらですけど、
その前に編んでくださるなら、
持っていけるかもしれません。
- ───
- ‥‥それ、すばらしいです!
出発の日付は?
- 石川
- 6月の14。
- ───
- いまから2か月ちょっとありますね。
それは、間に合うのではないでしょうか。
- 石川
- 遠征ではベースキャンプで過ごす時間が長くて、
2か月くらいいることもあります。
体を慣らさなきゃいけないし。
頂上に行くだけなら、
数日で済んじゃうんですけどね。
ベースキャンプで気持ちを切り替えるために、
こういうセーターを
ずっと身につけてることはぜんぜんできます。
- ───
- それですね。
それがすばらしいと思います。
で、三國さんからの最後の質問です。
具体的に「こんなのがほしい」
というアイデアがあればお教えください。
これは、
ベースキャンプで、ということになると、
ご希望があるのではないでしょうか。
- 石川
- そうですね‥‥
頭からかぶるセーターよりは、
カーディガンっぽいほうが使い勝手がいいです。
ジッパーがあったりとか。
- ───
- なるほど。
- 石川
- ただ‥‥せっかく三國さんに
編んでいただく機会をいただいて、
ものすごく自分好みのセーターができてきたら、
「2か月も着続けてぼろぼろにしたくない」
「K2に持っていきたくない」
という気持ちがわきあがる可能性はあります。
- ───
- そうおっしゃらず、着てください(笑)。
セーターに旅をしてもらいたいので。
- 石川
- うーーーん‥‥
じゃあ、できるだけ頑丈なのがいいな。
着たままで寝ちゃうこともあるので。
- ───
- 了解です。丈夫なセーター。
色はどうでしょう?
真っ赤とかでなければ大丈夫でしょうか。
- 石川
- いや、真っ赤でもぜんぜん。
- ───
- 真っ赤でもいいですか?!
そうですか、わかりました。
- 石川
- 岩みたいな色よりは、
むしろ真っ赤とかのほうがいいです。
- ───
- カーディガン、頑丈、真っ赤でもいい。
かなりイメージをいただけました。
ちなみにその、
ベースキャンプでの暮らしぶりといいますか、
どういう毎日なのですか?
- 石川
- ベースキャンプでは‥‥
テント生活で、朝7時ころに起きて、
ミルクティー飲んで、朝ごはんを食べて、
昼ごはんを食べて、
やがて夜ご飯を食べて‥‥
- ───
- はい。
石川
‥‥眠る。
- ───
- おお(笑)。
- 石川
- だから、けっきょく、
なんの変哲もないいちにちなんです。
- ───
- でも、そこから挑むのは最も危険な山。
- 石川
- ヤバいですね。
K2は、ヤバい山です。
- ───
- 10人に3人くらいの割合で、
登りに行く人が亡くなっていると聞きました。
- 石川
- うん。
- ───
- くれぐれも、お願いします。
帰ってきてください。セーターといっしょに。
- 石川
- そうですね、はい。
- ───
- ベースキャンプで生活する
石川さんの姿を思い描きながら
三國さんは編んでくださると思います。
- 石川
- そうですか。
- ───
- では、完成したらご連絡いたしますね。
- 石川
- 出発前に。
- ───
- はい。
間に合うはずです。
- 石川
- うーーん、たのしみです。
-
(2か月後の場面へ、つづきます)
2016-02-10-WED
三國万里子さんが石川直樹さんのために編んだ、
「K2」という名前のカーディガンの
「編み図」を販売します。
きっとあなたにも編めるよう、
一部の編み方だけをお見せするのではなく、
カーディガン全体の詳細な編み図を
大きな紙に印刷した、「全図」を作成しました。
この「編み図」には、石川さんがK2(山)で撮影した、
K2(カーディガン)の写真がつきます。
また、三國さんがK2を編むとき実際に使用した、
「ジェイミソンズ」の毛糸も全色セットで販売。
「編み図」と「毛糸セット」があれば、
あなたも同じ「K2」が編めます。
K2 編み図
1,512円(税込・配送手数料別)
K2指定糸 ジェイミソンズの毛糸セット
全19玉 12,312円(税込・配送手数料別)
※くわしくは2月12日(金)、発売と同時に発表します。
石川直樹さんの最新写真集『K2』のご紹介
『K2』大型本 石川直樹
出版社:SLANT 価格:3,996円(税込み)
「旅は続く。驚きたいから。」など、
ほぼ日でも多くのコンテンツでお話をうかがっている、
写真家・石川直樹さんの最新写真集。
2011年、23歳のときにエベレスト登頂に成功してから
標高8,000メートル級の山々に挑み続ける石川さんが、
2015年の夏、高所への旅の最終地点として選んだ
K2への遠征の日々を凝縮した一冊です。
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