ミッフィーグッズのプランについてはね、
こんなにたくさんのOKがでるとは
実は思ってなかったの。
「こんなにいっぱいOKだったんだ!」って
びっくり。
さきほど、
「予定とは違うものが出てきたときに
素顔が見えることがある」
とおっしゃいましたが、
祖父江さんがアイデアを出されるときにも
そういうところがあるんでしょうか。
ミッフィー展は、どちらかというと
「ぼくのミッフィー好きって、
こんなのですが、大丈夫でしょうか?」
ってふうなの。
メルシス社さん
(アムステルダムで著作権を管理する会社)と
ブルーナ・ジャパンさんが
ディック・ブルーナの世界観を
管理して、守っているんですけど、
「プランをいいと考えるのか
よくないと考えるのか
どうなんだろう?」
と、判決をあおぐ気持ちですよ〜。
そうなんですか〜。
「どこまでがダメで、どこからがいいのか」
って、わからないんです。
ルールはあるんだけれども、
それどおりであれば
何でもいいというものでもないだろうし、
ルールをはずれてても
OKなことだってあります。
ルールの隙をつくとかいうような、
ひきょうなことじゃなくってね。
プロダクト類を企画するときって、
「売れる、売れない」に左右されてしまって
「こんなのがみんなが好きかな?」
ということを考えがちなんですけども‥‥
でも、みんなが好きなものって、
あるのかしらねぇ。
全員
そうですよねぇ。
とくにあやしいのが、
あれですよ、
あの‥‥えーと何だっけ、
そーそー、傾向と対策だ。
これほどつまんないのはないよね。
たとえばさ、
渋谷ギャルは
こういう傾向にあるから、
こんな商品が売れます! とかいう‥‥
マーケティング。
そーそー。
人のこと調査して
企画書を作って、
それどおりになにか作るっていうやつ!
そんなんじゃ、
喜んでもらえるわけないじゃん。
全員
うーん、そうなんですよねえぇぇ。
なんで、喜んでもらえないのかなぁ。
それって、
「(猫なで声で)あんたはさ、
こういうの好きなんだろ〜?」
ってことじゃん。
作り手は企画書しか見てないし。
バカにしてるよねー。
うん、たしかにそう。
そういうのって、
ちょっと、腹立たない?
商品として与えられても、うれしくないよね。
「(猫なで声で)チミたちはゴスロリだから、
こういうのがいいんでしょ?
作ってやったからさ、お金出しなよ」
なんてさ、好きでもない商売人にいわれても、
その世界にいる子たちは、
「‥‥わたし、きっと違うと思う」
とかって、感じるよね?
全員
そうだよなぁ。
「勝手にくくらないでよー!」
ってことにもなる。
とかさ、半端な知人に、
「なんだか、あなたらしくないわね」
とか言われちゃったら、
「き〜! 何よ、らしくないって!
じゃ、何が、らしいってのよ!」
って思ったりしない?
「き〜! 何言ってんの?」
って、なっちゃいますね。
「ちょちょちょちょちょちょ、
いまの聞き捨てならないわ!」
って‥‥。
なる、なる。
ちょっとおしつけられてる感じ。
「らしくないって、らしくあれってこと?
らしいって誰?」
「誰がマーケティングしてるの?
私のことを」
「だいたいさ、あなたの思い込みでしょ?」
うん、うん。
「そんなのに私、乗りません。
そんな家賃、受け取れませんって!」
とか、そういうことになるよね。
家賃、家賃‥‥?
全員
(家賃はきっと、関係ないですね)
オーダーメイドなら、また話は別だけどね。
そうじゃなくて、
「“だいたいこのへんくらいの人たち”用に
向けて作るもの」
って、企画書の中の論理だけで作られると
逆方向に向かっちゃったりすると思うんです。
くくって商品作っちゃ、
まずいんじゃないのかな?
それより、送り手が何にわくわくするか
何を伝えたいのかを大事にしたほうがいい。
わくわくして作ると、
商品化されても“わくわく”なんです。
「こんなのできるの? あ、できた!」
「これが好き〜!」
ってことが、やっぱり
商品の喜びにもつながるよねぇ。
じゃあ、自分の好きなものを商品化しよう、
ということも‥‥。
でも、それだって微妙だよね。
「そもそも自分が好きなものを
人におしつけてどうする!」
って。そのまえに、
「それって、ほんとうに自分の好きなもの??」
とか悩んだりして。
‥‥自分って、いちばんあやしいよね。
でも、ホンットーに好きでも
「あぁ、好きすぎて普通に考えられない!」
なんちてね〜。
ああ、わかる。
いずれにせよ、
あんまり分析しすぎになっちゃうと、
よくない。
分析しすぎも、いいのいいの。
楽しいし。
けど、それをもとにして
企画を立てようってのが、
全体的にだめ。
全員
(‥‥‥‥‥え?)
企画は、立てちゃだめなんです。
おおおお。
みんなビックリした顔してる。
でも、まぁ仕事なんで、
いろいろあるし、
企画仕事ってのもあるでしょう。
うん、うん。
でも、企画どおりに進めちゃだめなんです。
どうせ、やってるうちに
もっとおもしろくなっちゃうんだから!
企画書に縛られるとだめ。
特に、デザインの部分ではそうです。
寄り道のほうが、逆に、
企画を置いていって進むこと、
ありますよね。
そう。単純に、例えば
イラストを依頼する。
ラフを描いてもらう。
ノリノリで描いてもらったので
いいのがあがった。
会議にかけて、みんなの意見を聞いた。
ばっちりだった。
「では、このセンで
本番を描いてください」
とお願いした。
でもね、そうすると
前のラフの絵のほうが
いい絵だったってことが多くあります。
つまり、
そのとおりにやるというのは‥‥。
そうそう。
きっと、イラストレータのなかで
OKが出るまでに冷めちゃって
仕上げることが事務的な「作業」に
なっちゃったんだろうね。
本番では、ラフ以上に
もっとワクワクしなきゃ、なのに。
昔、『i-D JAPAN』という雑誌の
デザインを手伝ってたことがあるんだけど、
あの雑誌の表紙は
毎号、ウィンク写真だったんです。
ウインクの写真って、
最初の一瞬はいい。けど、
「じゃ、そのまま、あと数枚
押さえま〜す」
なんてやってると、表情は
どんどんダメになっていきますよね。
そのときのカメラは
ホンマタカシさんだったんだけど
毎号、ほぼ一発写真で決めてたんですよ。
もう選びようはない! って。
では、祖父江さんは
つねに新しいウインクしっぱなし、
ってことですか?
うん、すべてに、ジャスト・ウインク、
あらゆるウインク。
イラストも写真もデザインも同じ。
おんなじウインクはしないぜ、やっぱ。
コミュニケーションって、
瞬間芸でもあるよね。
全員
コミュニケーションは瞬間芸!
(メモ、メモ‥‥)
考え抜いたものがいいわけじゃない。
例えば、自己紹介だって、
「自分の紹介どうしようかな。
なんて言おうかな」
って、細かく練習したりするよりも、
「だいたい」だけ持ち合わせてればいい。
そのときのようすで判断すればいいんです。
そのほうが、お互いにも楽しいもん。
設計はいいの、どんどんつめても。
でも、企画とまぜこぜにしないこと。
コミュニケーションに関わるデザインは
企画にのって進めちゃだめなんです。
ただ、機能や実用に関するデザインのときだけは
企画書にのっとっていいんだじょ。
企画もバッチリOK、行け行けどんどん。
行け行けどんどん。
機能(きのう)が大事だということは、
昨日(きのう)も言ったけど。
聞いてません(笑)。
機能は企画もきちっと、だいじょうぶ。
だけど、例えば、
今回デザインされた、
ミッフィーのマグは、
実用も入ったデザインですが。
でも、機能的なデザインじゃないよ。
これはコミュニケーションよりなの。
だって、ミッフィーの顔を
見ようとすると、飲みものが
こぼれちゃうもん。
ミッフィーを好きな層が
どこに住んでる何歳くらいの人で、
どんな趣味で、何に購入欲を持ってるんだろう、
なんて企画からはじめるとね、
どう言ったらいいんだろう‥‥目線が、
商品が、「たかびしゃ」になるんです。
使ってくれる相手と同じ目線にならなくなる。
なんだか、先生が生徒に向けたような
「こうしてあげよう」という
押しつけになっちゃう。
市場調査も、しちゃだめでしょうか。
市場調査はしてもいいけど、
それを商品プランに持ち込んじゃ、だめだめ。
市場調査しても
「へぇえー、そうなんだ」
くらいで終わらせないと。
理解するだけでいいんじゃないのかな?
そこから先の話はまた別でしょ。
「そういう人だったらこういうのが欲しいはず」
とか思ったとたんに、もう失敗なのじゃ〜。
失敗か〜。
市場調査って楽しいものね。
生態研究みたいで。
相手を知りたい気持ちはいいんだけど、
だからって、それを利用するためじゃ
ちょっとねぇ、罠かけるんじゃないんだから。
その先は「別の話」でしょ。
(つづきます)
2010-04-24-SAT