最終回 見えはじめた、読者の姿。 こんなに伝えたいことが 意外と読まれてない。愕然としました。
糸井 インターネットが仕事に入ってきて
よかったと思うことって
ありますか?
奥山 はい。例えばさきほど
「お昼にビューが上がる」
という現象についてお話しましたが、
紙で記事を書いている時代には
「読まれる時間帯」なんていうことは
自分の意識にはありませんでした。
紙の記者だった時代には、ほとんど
「自分が書きたい」「書かなきゃいけない」
というだけの価値基準だったところに、
「これがこういうふうに読まれるんだ」
という気持ちも加わっていきました。
いまは、Twitterもありますし、
ネットの反応というのは顕著ですよね。

ほぼ日 webに関わらないと
見えてこないところでしょうか。
北元 はい、違いますね。
リアルタイムの読者との接点は
こんなに実感がわきませんでした。
webだと10分おきに
何がどれだけ読まれているかがわかります。
正直なところ、
自分たちがあれほど大事だと思ってた記事が
いかに読まれてないか、という現実も
知ることになるわけです。愕然とします。
だからといって、そこに迎合するのか、
それとも自分たちの筋を通すのか、
または、大事だと思ってることを
伝えられるようにどれだけやっていくのか。
そこから考えはじめるわけです。
そういう接点を取り入れられたのは
よかったと思っています。
糸井 Twitterに関しては、
反応はもっとダイレクトですよね。

北元 はい。朝日新聞東京本社の編集局も
去年の秋からTwitterを開始しました。
1日2交代でやっています。
いわゆる海外特派員ですけれども、
そこはそれぞれの国から
個別に発信してたりします。
私たちはそれをほとんど
読者として見ているんですが、
Twitterがその人の生活の
一部になっているようすがわかって
おもしろいです。
国際報道の、さらに小さなセクションなのですが、
より濃密なやりとりをしていて、
けっこういい感じだなぁと思います。
そのほか、もはやいまでは、
朝日新聞にはいろんなTwitterがあります。

ほぼ日 小さなセクションで
「個人」が出ているところもあるんですね。
北元 はい。それがわりと、
好意的に受け止められています。
いま、いくつあるのか‥‥
どんどん増えるので(笑)、わからないです。
だけど新聞社としては、Twitterは
ある種「挑戦」というところがあります。
Twitterというものは、基本的に
誰もチェックせずに発言が出てしまう
性格のものですから、
新聞社の中にいる「個人」は
やらないだろうという認識だったんです。
でも、世界の流れを見ると、
ニューヨークタイムズやCNNでは、
記者の個人の発信も含めて、
何百とアカウントがあります。
リスキーな面もありますが、
ダイレクトな反応が伝わるということが
記者の人たちにとっての
新鮮さになっているようですね。
糸井 でも、いまくらいの距離感があって
やっていくのは
いいんじゃないかとぼくも思います。
北元 そうですね。
自分が「この記事のここがおもしろいんです」
と言える場所があり、
誰かから「じゃあ、いま買ってきます」
「読みましたよ」なんていうコメントが来る。
それは、ほんとうに、
ひとりでもふたりでも、すごくうれしいんです。
そこを大事にしていくことの意味は
すごくあると思います。

糸井 ぼくらにしても、
個人に伝えることと大人数に伝えること、
両方をやっているわけです。
そのつきあいかたというのは
時間の流れでかなり揺れていきますから、
どうにかこうにか
やっているという感じです。
奥山 ああ、それはよくわかります。
木村 見えるんですよね、
読んでくださる方が。
これからは紙のほうも
どんどんそうなっていくと思います。



〜エピローグ〜

朝日新聞、
ほぼ日刊イトイ新聞。
その両方を支えるのは、人であります。
人が作り、人が見る。
システムも機械もしくみも
人が考え、人が使います。

「ほぼ日」のシステムを支える
佐藤&川本+太田(見張り役)の
通称「宇宙部」は、
朝日新聞東京本社訪問の帰り道、
築地の波除稲荷神社に
お参りに行きました。

「災難を除き、波を乗り切る」

「ほぼ日」のシステムを預かる
宇宙部としては、
この神様にすがるところも大きいでしょう。
朝日新聞の記者のみなさまも、
ことあるごとに、
ここにお参りするそうです。
ちなみに、糸井重里も、
よくお参りしていたという、
実は縁のある神様なのです。

宇宙部は、お札をもらい、
おみくじを引きました。
大吉でした。

朝日新聞は、日夜、動いて
がんばってます。

「ほぼ日」もがんばってます。

宇宙部ベイは、
波除稲荷のお札を
サーバー室にかかげることにしました。

「これで、大丈夫です。
 ぼくらもこれからもがんばります」

さて、これにて
今回の訪問を終了いたします。
朝日新聞のみなさま、
たくさんでおじゃましてお騒がせしました。

みなさま、ご愛読、
ありがとうございました!

(おしまい)


2011-01-19-WED
イラスト:イリアヒム・カッソー