ほぼ日 |
記者の方々が記事を書く技術は
どのようにして学ばれるのでしょうか。
これだけトーンの揃った記事が
書けるようになるには
そうとうな訓練が要ると思うのですが。
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木村 |
本社の記者になるまでには
平均してふたつほどの支局を回ることになります。
1か所目はたいてい、夕刊のない場所です。
私は盛岡支局が初任地でした。
そこで3年間、記者として働いて、
次に神奈川に行きました。
1年のうちに起こる出来事というのは、
ある部分は決まっているので、
「新人1年生はこの時期に何を取材する」
ということが、実はわりとわかっています。
最初は10行程度の記事からはじまって、
30行ほどの写真入りの記事を経て、
夏は高校野球。
その中でデスクや先輩の記者から
ひたすら怒られながら、
何度も書き直させられながら動いていくと‥‥
みんな同じような記事になれるというか、
‥‥なってしまうと言ったらいいのか(笑)。
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ほぼ日 |
ひたすら怒られるんですか。
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奥山 |
怒られます。
取材の視点や用語について
ガイドラインとしてまとめた本があって、
新人の頃はそれを何度も紐解きます。
言葉づかい、使える漢字、使えない漢字、
特定商品の扱い、そういうことを
4、5年ぐらいかけて、
本を開かなくてもいいところまで覚えます。
そういった道を
怒鳴られながら通っていけば
ある程度、記事を作れるようにはなります。
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ほぼ日 |
今日見学した限りだと、
怒鳴り声はあまり聞こえなかったのですが。
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奥山 |
ご見学いただいたのは、
夕刊を作っている時間帯だったんですよ。
夕刊は怒鳴ってる暇もないと思います。
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ほぼ日 |
暇も。
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木村 |
朝刊ですと、
けっこうバトルになることがあります。
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ほぼ日 |
怒鳴ってる時間がないんですか。
朝刊のピークというのは
何時ぐらいなんでしょうか。
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奥山 |
朝刊って、何回か締め切りがあるんです。
原稿は、だいたい夜の8時ぐらいから
編集の現場に集まりはじめます。
最終版に向けて、そこから何回かの
ピークがある、という感じです。
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ほぼ日 |
何回かのピーク。聞くだけできつそうな‥‥。
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奥山 |
はい。
ニュースにとっては、
その「ピークの流れ」というのが
けっこう肝なんですよ。
「asahi.com」に掲載される内容も
その「ピークの流れ」に左右されています。
ピークの時間帯に出るニュースが、
実はもっとも層が厚かったりします。
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ほぼ日 |
では、夜8時くらいの「asahi.com」に
注目しているといいですね。
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奥山 |
はい。
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糸井 |
「asahi.com」の読者の
ピークの時間はどうでしょうか?
ニュースのピークの時間と同じですか?
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奥山 |
それが、やっぱりずれていて、
アクセスのピークは、昼間です。
12時台に読んでくださる方がいちばん多くて、
あとは、朝の7時、
夕方の5時です。
その3回の山がはっきりとあります。
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ほぼ日 |
お昼休みに読者が多くなるのは
「ほぼ日」と似ています。
だけど、夕方にも
ピークがあるんですね。
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奥山 |
はい。
まず会社に行って
営業開始時間までに
ネットでニュースを見る。
次に、お昼休みになったら見る。
そして、仕事が終わるころに見る。
そんなリズムなのではないかな、と思います。
ですから、土日にはその「山」がなくて、
人の増減はなだらかになります。
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ほぼ日 |
夜はいかがですか?
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奥山 |
そこが、いわゆる一般の
インターネットサイトと
うちがちがうところです。
「asahi.com」は、夜に弱い。
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ほぼ日 |
そうなんですか。意外です。
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奥山 |
携帯サイトのほうは、スポーツの結果を
ごらんになる方がいるので
すこしは夜が強いんですけれども‥‥。
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ほぼ日 |
読む人の流れが、やっぱり違いますね。
うちは夜にも読む方が多くなりますし、
夜は、もしかしたら土日のほうが
多いかもしれません。
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奥山 |
「asahi.com」のほうは、
昼でもとくに
正午から12時20分の
20分間が圧倒的に多いです。
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ほぼ日 |
ごはんを食べながら、
ということでしょうか。
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糸井 |
最近は、会社で
ネットが規制されていたりしますから。
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北元 |
そうなんです。
ニュースなどの情報はよくても、
芸能ニュース、スポーツニュースを
見られない場合があります。
それをどうやって
見ていただけるようにできるのか、
我々も苦心しているところです。
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糸井 |
いろんなことが厳しくなっていますが、
社会の風潮が
ガラッと変わることもありますからね。
最近の10年20年、いろんな意味で、
その移り変わりを
我々は経験していると思います。
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木村 |
はい。我々新聞は、
言葉づかいについては、特に
それを経験しています。
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糸井 |
そういった、変化する情報を
社内で共有するしくみはあるんですか?
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木村 |
はい。
例えば、裁判員制度がはじまったとき、
見出しの用語の選び方について
全社的に集まって話し合いました。
具体的にいうと、
警察の取り調べであった発言などを
我々はそのまま記事に入れていたのですが、
今後は「◯◯署への取材で」という言葉を
入れようとか、そういうことです。
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糸井 |
新聞の用語のようなものを
変えていくわけですね。
それは、常識と呼ばれるものと
大きく関わっていく部分ですね。
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木村 |
はい。校閲部門が主体となって、
朝日新聞の記者が
どういう言葉を使うべきかのガイドラインを
毎週のようにメールで伝えてきます。
記者は、それに沿って
言葉を切り替えていきます。
去年はインフルエンザの名前が
一斉に書き換わったこともありました。
大きな事件が起きたときに
その略称をどうするのか、など
難しい場面がたくさんあります。
最初の数日はたいてい、二転三転します。
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ほぼ日 |
そうなんですか。
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木村 |
はい。やがて数日経つと、
「これで行きましょう」というふうに
アナウンスが流れます。
あとはみんな、それに従ってやります。
ところが、インターネットでは
そういうやりかたでは困る、
というようなケースが出てきました。
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宇宙部 |
それは、どういう場合でしょう?
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