第5回 なぜ、会社がそんなにきれいなの? 我々は、走る仕事なので、片づいてないと危ないんですよ。

朝日新聞、「asahi.com」の見学が
ひととおり終わり、
「何でも言って、何でも聞いてください」と、
朝日新聞社の方が会議室で
我々の感想や質問を
聞いてくださることになりました。

糸井 まず‥‥会社全般的になんですけれども‥‥。
朝日新聞社 北元さん(以下北元)
  はい。
糸井 特に新聞の部署は、
どうしてあんなに
職場が片づいているんでしょうか。
北元 あ、意外です(笑)。
糸井 意外ですか。
北元 異動が多いからかもしれませんね。
でも、部署によっては荷物が
かなり「雪崩」を起こしていますよ。
── 机の上に私物が少ない気がしましたが。
朝日新聞社 奥山さん(以下奥山)
  人によっていろいろです。
本棚が置いてある会議室が
たくさんあるんですけど、
その部分がぜんぶ誰かの私物で埋まっている、
というケースもあります。

糸井 おお。それは、ならず者ですね(笑)。
奥山 はい(笑)。
糸井 だけど、メディアという場所は
インプットするための資料やら
いろんなものが
とにかく集まる場所でしょう。
それをあそこまでは片づけようとするのは、
どこかに管理するシステムがあるんじゃないかと
思うんです。
取っとかないと怒られる、
というようなことが
昔はあった気がするのですが‥‥
これは時代が変わったんでしょうか。
朝日新聞社 木村さん(以下木村)
  いや、ほんとうに大事な資料というのは
6階にある
データベース事業センターというところに、
きちっと保管しています。
それ以外の、
記者個人が持っているもので
最後に残るものといえば、取材ノートだけです。

糸井 だけど、当社比100分の1だよね。
ほぼ日 はい‥‥
糸井 いやいや、別に責めてるんじゃなくさ。
ほぼ日 我々も、編集局におじゃまして
最初に驚いたのは、そこです。
物が少なくて、
「床が、ちゃんと床として存在してる!」と
思いました(笑)。
木村 いやいや、ぼくらは特に、
走りまわったりするので、
片づいてないと危険なんです。
一同 (笑)
木村 落ち着いた、走らない部署‥‥例えば
文化グループなどに行けば、もう少しは
散らかっているかもしれません。
それに、この社屋はおもに
編集局の現場だから、
ということもあると思います。
記事を書く人たちがいる場所は、
すごい資料が机の上にあって、
雪崩があちこちで起こっています。
ほぼ日 やっぱり、記事を書く人たちは
ぜんぜん別のところにいるんですか。
木村 部署にもよります。
我々新聞の、核となる部分の記事については、
おおかたの記者はここにはいなくて、
やはり取材拠点にいます。
ただ、リーチの長い内容の取材をしている者や、
大きな企画を対象に動いている記者もいますので、
そういう者は本社本館で
活動していることもあります。
ほぼ日 さまざまな部署があると思うのですが、
異動は頻繁にあるものなんでしょうか。
奥山 3年経ったら、もう
いつ異動させられてもおかしくないです。
ほぼ日 そんなに頻繁に。
奥山 はい、頻繁だと思います。
記者の人たちは、同じ職種の中で
勤務地が変わります。
若いときは3年に1回はあります。
新米ばかりが異動させられるかというと
そうでもありません。
外部の人から、
「ミーティングするたびに、毎回
 上司の方が代わられますよね」
と言われたこともあるほど、
上の人たちの異動も頻繁です。
ほぼ日 記者職はずっと記者職なんですか。
木村 たいていそうなんですが、
「本籍地」という言い方って、
聞いたことあります?
ほぼ日 ‥‥いや、ありません。
木村 入ったときの「本籍」が記者の方、
編集の方、広告の方、
そういう言い方です。
その「本籍」の周囲で
役職があがっていくのがふつうです。
社員同士で
「○○さんって本籍どこなの?」
という話をしたりもします。
ほぼ日 「本籍」がいっしょだと
連帯感などが生まれたりするんですか?
木村 あります、あります。
つき合いも多いですし、
「あそこに出向する人はだいたい
 このポジションから」
というように
道もいくつか決まっています。
そのあたりは、
日本の大きな会社と同じかもしれません。
宇宙部 ということは、
6階の技術チームの方は
ずっと技術チームですか。
北元 技術って、
実はいろいろと変遷があるんです。
つまり、時代によって
「技術」というものは移り変わるので。
宇宙部 なるほど。
北元 新聞社の「システム」ということで言えば、
印刷技術系と電算システム、
2系統があるんです。
ですから、印刷のコントロールを
担当するつもりで入社した人が
コンピューターの前に
座ったりしています。
まさかインターネットのシステムを
作るとは思わずに
朝日新聞に入ったのでしょうけれども‥‥。
糸井 社内を見学させていただいて
印象に残ったのは、やはり
あの大きな輪転機です。
物神性みたいなものがあって(笑)。
北元 はい。まず、輪転機が
社内にあるということに
みなさん驚かれますね。
‥‥これは印刷会社の方がいらっしゃって
おっしゃっていたことなんですが、
新聞社の輪転機って、
休んでいる時間があるんです。
印刷会社だと、
いかに輪転機を休ませないかが勝負なのに、
「輪転機が休んでる!」と
驚いていらっしゃいました。
新聞の配送トラックも
「行き」は新聞積んでますけど、
「帰り」はカラで帰ってきます。
これも「ちょっともったいないな」と。
新聞ビジネスというのは、
効率的とは言えない
ところもありつつ、
かつてはしっかり儲かった
とてもよくできたビジネスモデルです。
それをインターネットビジネスのような、
「効率は良いけど、
 お金にするのは難しいビジネス」
で取り換えていくというのは、
実はとても難しいのです。

(つづきます!)


2011-01-17-MON
イラスト:イリアヒム・カッソー