ラヂヲ
頭、光ってないですかね。
──
はい、まだ大丈夫です。
ラヂヲ
まだって君。
──
現状、光ってはないです。
しかし、写真に写したら光ってしまいました。
ラヂヲ
ヘンだったら
フォトショップでアレ
しといてください。
──
承知しました。じゃ、不自然じゃない範囲で。
ラヂヲ
っていうか、どうしてこんな照明なんですか。
──
今回『ゴッドファーザー』みたいな雰囲気を
醸し出してみたいなと思いまして。
ラヂヲ
‥‥それは、なんでですか。
──
いや、とくに理由はないんですけど、
そう思って見ますと
ラヂヲ先生が、だんだんマーロン・ブランド扮する
ドン・コルレオーネのように‥‥。
ラヂヲ
こんなTシャツ姿のドンいるかい。
──
でも、思えば足かけ4年ちかくにわたって。
ラヂヲ
あ、いま『ネコが出ますよ。』のインタビューに
入りましたか?
──
はい、おそれながら。
ラヂヲ
油断も隙もないですね。光る頭の話だったのに。
──
現状、光ってはいないのですが‥‥
ともあれ、すべてのはじまりは、2008年の秋。
ラヂヲ
そんな昔でしたっけ、連載はじめたのって。
──
たしか、前の前のオリンピックの年だったかと。
ラヂヲ
前の前っていうと‥‥。
──
北京ですね。
ラヂヲ
ボルトが大活躍した大会だ。
──
で、連載終了が「2012年の7月」ですから
ロンドン五輪とともに終わりました。
ラヂヲ
北京にはじまり、ロンドンで終わる。
──
ですからそう考えると、あの作品には
無名の人が
金メダルを取れるようになるだけの歳月が
横たわっているんですよね。
ラヂヲ
んな大げさな。
──
でもその間、本当にいろいろな出来事が。
ラヂヲ
あったねぇ。
──
ありましたよね。
ラヂヲ
胆石になったりね。
──
そのせいで、少しのあいだ休載されて。
ラヂヲ
3カ月ぐらいかなあ。
──
たしか、2010年の秋口くらいから‥‥
翌年2月くらいまで。
ラヂヲ
入院自体は1週間だけだったんだけど
少し体調を整えさせてもらって。
──
熱心な読者の間には
「ラヂヲ先生、痔で倒れる」のウワサも
飛び交ったようですが‥‥。
ラヂヲ
失敬な。そっちは軟膏で治したわい。
──
療養中に「愛媛の芋炊き」について
いちど、取材をさせていただいたときには
ゲッソリしてらっしゃって‥‥。
ラヂヲ
ま、痩せたよね。
──
ずいぶんハンサムに見えたのを覚えています。
ラヂヲ
あのときは、8キロくらい減ったからね。
夜のパトロールも控えめにしてたし、
食事制限があったんですよ、油もんとか。
‥‥こういう話でいいんですかね?
──
ひとまずは大丈夫と思って進めましょう。
ラヂヲ
胆石の話になってる。
胆石患者に訊くみたいになってる。
──
ははは。
ラヂヲ
「シリーズ病気・第二章・胆石篇」
みたいになってる。
──
では、核心に迫りましょうか。
ラヂヲ
急ですね。
──
出ませんでしたね、ネコ。
ラヂヲ
‥‥出なかったですねえ。
──
熱心な読者によっては
「ネコが出る、出ない、出る、出ない‥‥」
という
「ネコ出占い」にまで行為が及んだと。
ラヂヲ
ほんまかいな。
──
でも「ネコ、出なかったじゃないか!」
というお叱りメールは、
把握する限り、ひとつもありませんでした。
ラヂヲ
「訴えるぞ!」
とか‥‥。
──
なかったです。
ラヂヲ
「出る出る詐欺だ!」
とか‥‥。
──
出る出る詐欺‥‥ないです。
ラヂヲ
ほんとですか。
──
最終回を迎えるにあたっては
みなさん、
あたたかな拍手を贈ってくださいました。
なかには
「終わってみれば
ネコなど出なくてよかったくらいです」
みたいなメールも来たほど。
ラヂヲ
‥‥深いね。
──
深いです。
ラヂヲ
たぶん、やさしいんですよ、みなさん。
イトイ新聞の読者って。
──
ああ、それは、あるかもしれないですね。
でもやっぱり、
「マンガが愛されていた」ということだとも
思っています。
ラヂヲ
‥‥うれしいですね、そんなら。
──
やさしい読者に、愛すべきマンガ。
ラヂヲ
描いてよかった。
──
ちなみに「ネコが出た!」という結末は
あり得なかったわけですか、まったく?
ラヂヲ
‥‥‥‥‥‥‥‥‥いや。
──
そのラストも、あり得た?
ラヂヲ
あり得たでしょうね。もし‥‥。
──
もし?
ラヂヲ
もし‥‥オレにもっと絵心があったら。
──
‥‥あったら?
ラヂヲ
出ていたでしょうね、ネコ。
──
‥‥つまり?
ラヂヲ
かわいくなかったんですよ、ネコが。
圧倒的に。
描いても描いても、かわいくないの。
──
‥‥。
ラヂヲ
いくら描いても、かわいくならない。
オレのタッチでは、ネコが、サッパリ。
──
だから、ネコは出なかった‥‥。
ラヂヲ
そうです。
<つづきます>
2013-03-26-TUE