──
衝撃でした。
「ネコ出にネコが出なかった理由」が
「かわいいネコが描けなかったから」
であるというのは‥‥。
ラヂヲ
最後まで悩みました。
──
ネコを出すか、出さないかで。
ラヂヲ
うん。「本当に、出なくていいのか?」と。
──
かわいく描けないからって。
ラヂヲ
そう。
でもやはり、
読者をガッカリさせてはいけない
と思い直したんです。
──
つまり
「かわいくないネコを出すくらいなら
いっそ出さないほうが」と?
ラヂヲ
苦渋の決断です。
──
‥‥先生、ぼくたちの知らないところで
そんな思いをされていたんですね。
ラヂヲ
苦しみました。
──
胆石のように。
ラヂヲ
ように‥‥ね。
──
それでは、あらためて
「ネコが出ますよ。」とは何だったのか、
振り返っていきたいのですが。
ラヂヲ
わかりました。
──
いかがでしょう、連載を終えて。
ラヂヲ
そうですねえ。
──
われわれとしては
「4年間、お疲れさまでした」という思いで
いっぱいなのですが、
最終回を描き終えたときの思い‥‥というか。
ラヂヲ
はい。
──
静かに筆を置いたときの気持ち‥‥というか。
ラヂヲ
まあ、ああいうタイプのマンガなので
ウルウルきちゃったとか
がんばった自分を褒めてあげたいとか
そういう、感無量な気分にこそ
なりませんでしたが‥‥。
──
ええ。
ラヂヲ
この話を映像化するのは不可能だな
とは思いましたね。
描き終えた時点で。
──
ははは。
でも、どこかの地方都市にニョッキリ生える
巨大キノコ
の実写映像とか見てみたいです。
ラヂヲ
その場面から、急に「特撮」風になるよね。
──
読者も、それまでは
このマンガはギャグなのかギャグじゃないのか
計りかねていたものが‥‥。
ラヂヲ
ギャグですよ。
──
は、失礼しました。
ただ、ギャグはギャグでも
非常にアーティスティックといいましょうか、
高踏的といいましょうか。
ラヂヲ
そもそもマンガっぽくしたくなかったんです。
──
なるほど。
ラヂヲ
というか、マンガ描けないからな、オレ。
──
そんなことないでしょう(笑)。
ラヂヲ
いや、描けないんですよ、マンガは。
つまり「マンガらしいマンガ」が描けないの。
──
‥‥それは、技法的な部分で?
ラヂヲ
そうそう、そのとおりです。
すごい「集中線」のコマとかないし。
──
なるほど、たしかにありませんね。
先生のマンガに、そういった激しいコマは。
ちなみに「集中線」というのは、
迫力とかスピード感を出したりするときの
線をいっぱい描く、アレですね。
ラヂヲ
オレ、マンガの基本テクみたいなものを
勉強してないから。
──
つまり「独自の画風」であると。
ラヂヲ
それは、うまいこと言いすぎましたね。
つまり、マンガというのは、
マンガの方程式にのっとって描かれているから
マンガに見えるんです。
──
ははあ‥‥。
ラヂヲ
そういうこともあって、この『ネコ出』は
「マンガのようで、マンガでない」
みたいな、
「内容があるようで、実はゼロ」
みたいな物語にしようと思っていたんです。
──
でも実際「ものすごいおもしろい回」とか
あるわけじゃないですか。
ラヂヲ
そりゃあるわい。
──
あ、いや、すみません! 少々、表現が。
ラヂヲ
ま、いいです。
ともかくそんなわけで、描き終えた時点では
映像化はともかく
単行本にするのが大変だなぁと思いました。
──
でも、そちらのほうは、本気で。
ラヂヲ
やりますよ。大幅に描き変えますけどね。
──
おお、それは楽しみ!
ラヂヲ
うん。
──
‥‥「描き変える」?
先生「描き変える」とおっしゃいました?
ラヂヲ
言いましたよ。
──
それも「大幅に」と?
ラヂヲ
だって、いろいろ辻褄が合ってないでしょ。
放ったらかしのことだってあるし。
──
たしかに‥‥。
ラヂヲ
そのへんをね、ま、チョイチョイと。
──
それってアレですか、具体的には
「野球部カントクの娘さんの行方」とか?
ラヂヲ
春菜のね。まあ、たとえば。
──
トランシーバーをカツラに偽装している
清水さんって、いったい誰なのとか‥‥。
ラヂヲ
もちろん、そのあたりの謎も。
──
解けますか?
ラヂヲ
バッチリ解けます。
──
カツラ型のトランシーバーで
タマタの秘書とひそかに通信するなど
どこかあやしい清水さんですが
描かれかただけを見たら
「創業80年を誇るタマタの大玉に衝突されて
入院してしまったばかりか
その衝撃でスッ飛んだカツラを
通りがかりの犬チャペスに持っていかれてしまった
可哀想なおじさん」
でしかないわけですよね、いまのところ。
ラヂヲ
背後関係、わかんないでしょ?
──
まったくわからないです。
ラヂヲ
ま、俺もわかんないんだけど、
これからイースト・プレスで打ち合わせして
方向性を決めてきますんで。
──
カツラの清水さんの、方向性を。
ラヂヲ
うん。
──
‥‥今からですか。連載終了後の、今から。
ラヂオ
うん。わかるようになると思う。
──
じゃあ、巨大キノコの謎なども‥‥。
ラヂヲ
ま、あれはキノコです。ただの、巨大な。
謎はないです。
──
はー‥‥じゃあ「タマタの社長」が
途中から「会長」になったりする経緯も?
ラヂヲ
え?
──
いつの間にか、肩書きが変わったじゃないですか。
「昇進」なのか「勇退」なのか、わかりませんが。
「社長」から「会長」に。
ラヂヲ
それは‥‥「誤植」ですね。
──
‥‥は。
ラヂヲ
それは「誤植」です。謎ではなく。
<つづきます>
2013-03-27-WED