──
驚きました。
単行本化にあたって
ストーリーを「大幅に描き変える」とは。
ラヂヲ
やりますよ。やってやりますよ。
──
物語全体のボリュームなどは‥‥。
ラヂヲ
描き下ろし部分も入れるつもりなので。
──
つまり長くなる、と。
ラヂヲ
ラストも変わると思う。
──
‥‥え。
ラヂヲ
ラストも変わると思う。
──
「病室から遠くを見つめる清水さんの瞳に
巨大キノコが小さく映り込んでいる」
という、
あの、極めて筆圧の高いラストも、変更に?
ラヂヲ
たぶん。
──
はー‥‥。
ラヂヲ
ぜんぜんちがう話になったりして。
──
いや、そこが変わったら、
ほとんど別の物語になってしまいそうです。
ラヂヲ
いきなりネコが出ちゃったりして。
1コマ目から、いきなり。
──
‥‥いつ描くんですか、それは。
ラヂヲ
ぼちぼち、はじめないとなと思ってる。
だって、俺がやらないと
他の誰もやってくれないんですよ。
──
それは‥‥そうでしょうね。
ラヂヲ
誰かが代わりに描いてくれればいいのに。
──
それ、
吉田戦車さんとの対談
のときにも
おっしゃってましたよね。
ラヂヲ
そうだっけ。
──
戦車先生も、速攻「無理です」と言ってました。
ラヂヲ
まあ、
人のハンバーガーを途中から食う
みたいなのはイヤだよね。
──
ははは、たしかに。
ピクルスが半分になってるとかイヤです。
でも、単行本化のときに手直しするって、
よくあることなんですか?
ラヂヲ
まあ、あることなんじゃないですかね。
オレは、はじめてだけど。
そもそも連載が終わっちゃったら
ぜんぜん興味なくなるんで、自分の作品。
──
それは、そのとき描いている作品が
すべてだということですか?
ラヂヲ
というか、基本的にオレは
絵を描くのがキライなんですよ。
──
マンガ家なのに‥‥。
ラヂヲ
絵を描くのはキライです。
これだけは、言っときますけど。
だから手直しとか、もってのほか。
──
では、マンガ家の何がおもしろくて
やってらっしゃるのですか?
ラヂヲ
ネタ考えるのが好きなんですよ。
──
はああ、なるほど!
ラヂヲ
ネタを考え終わったら
もう、ギャグは8割がた終わってるから。
──
ははあー‥‥。
先生が「大喜利王」と称される理由が
今、稲妻のようにわかりました。
ただ、「ネタを考える」というだけでは
お金が入ってこないですね。マンガにしないと。
ラヂヲ
そこが大きな問題です。
──
ちなみに
絵は、もともとお上手だったんですか?
ラヂヲ
いえ。
──
でも、最終回の清水さんのカットなど
迫力があって‥‥すごーくお上手ですよね。
ラヂヲ
20年
やってますから。
──
そうか、つまり積み重ねの賜物であると。
ラヂヲ
10年くらい続けたら、
人間、
たいがいのことはうまくなるもんです。
──
おお、太字にしたい言葉が出ました!
同じようなことを
吉本隆明さんもおっしゃってますよね。
「十年間、毎日ずうっとやって
もしそれでモノにならなかったら、
俺の首やるよ」と。
ラヂヲ
だから、マンガ家になりたいのに
絵がうまくないからといって
まだ、あきらめるのはやいと思います。
上手くなりたいと
まったく思わずにやってきたオレでも
こうして
多少は上手くなりましたから。
──
今の言葉には、強く勇気づけられます。
ラヂヲ
でもね、吉本さんの言葉じゃないけど、
やっぱり、絵のうまい人って
毎日毎日、描いているらしいんですよ。
なんか、聞くところによるとね。
──
先生は、描いてないんですか。
ラヂヲ
描いてないですよ。
──
そこはもう、キッパリと。
ラヂヲ
描いてません。
まあ、オレの場合、絵を描く時間よりも
ネタ考える時間を増やしたほうが
絶対、おもしろいものになるわけなので。
──
ご自身としても
あれこれネタを練っている時間のほうが
お好きなんですものね。
ラヂヲ
どんなに絵がうまくたって
ネタがおもしろくなかったら、ダメです。
──
でも、毎週とどく原稿を拝見しながら
「ラヂヲ先生は
本当にやりたいことやってるんだなぁ!」
と感服しておりました。
ラヂヲ
ええ、それはそうです。
本当に好き勝手やらせてもらえたので
ありがたかったですね。
──
では、マンガのコンセプトじたいは
最後までブレることなく?
ラヂヲ
そうですね‥‥そういうのは
あまりなかったんですが
「しっとりした感じ」にしようかなあとは
考えていたのでね。
はしゃいでない‥‥というかな。
──
小津映画のような。
ラヂヲ
そうそう‥‥ってよく言いすぎですけど
まあ、
固定カメラで動きのない感じ、みたいな。
──
直木賞というより
芥川賞の小説みたいなものですかね。
ラヂヲ
ただ、本当に初期のころには
ふたりの男女が
ずっとドライブしてるだけのマンガ
を考えたりしてました。
──
へぇー‥‥。
ラヂヲ
険しい山道を、オープンカーで。
──
‥‥そのシーンが、ずっと続く?
ラヂヲ
そう。
ぎゅるぎゅるぎゅる、
ぎゅるぎゅるぎゅる
とかって言って。
──
はー‥‥。
ラヂヲ
えんえん峠を攻め続けるマンガ。
──
新しすぎます。
ラヂヲ
ふたりのセリフもほとんどなくて
たまに女の人が
「飛ばしすぎじゃない?」
ぐらいしか言わないの。
──
それはそれで、見てみたかったです。
読んで、どんな気分になるのか‥‥。
ラヂヲ
想像つかないよね。
──
でも単行本化、本当に楽しみにしてます。
「ほぼ日」の連載とくらべて
どこが変わったんだろう‥‥みたいな。
ラヂヲ
そう言っていただけると、やる気も出ます。
──
念のためお聞きしますが、
タイトルは『ネコが出ますよ。』のまま?
ラヂヲ
それは、たぶん、そうでしょう。
──
なるほど、わかりました。
発売の際には、ぜひ教えてください。
ラヂヲ
そりゃ言いますよ!
<つづきます>
2013-03-28-THU