第2回 ルーツはロッキン・ラヂヲ。
- ──
- ズバリおうかがいいたします。
似顔絵とは、いったい何ですか。先生。
- 和田
- そう聞かれてもなあ。本職じゃないし。
- ──
- 人の顔を描くというのは、先生にとって。
- 和田
- まあ、それらしいことを言ってみると、
若いころに
『ロッキン・オン』で連載してまして。
- ──
- 若いころ‥‥。
- 和田
- そう、まだ毛髪が豊かにあったころね。
ほっとけ!
- ──
- はい、ラヂヲ先生のお描きになる
ジーン・シモンズとか、
ポール・スタンレーとかプリンスとか、
ギャラガー兄弟とか、最高でした。
- 和田
- あのあたりがスタートだったのかなと、
思ったりはしますね。
似顔絵のルーツがあるとするならばね。
芸能人とかミュージシャンを描くから、
どうしても
似顔絵にしなきゃいけないんで、
半ば、無理やり描きはじめたんですよ。
- ──
- なるほど。
- 和田
- 王貞治さん、しょっちゅう描いてたなあ。
サッカーの北澤豪さんとかも。
もっとも、名前は
「北澤オーストラリア」だったけどなあ。
- ──
- 描きたい顔があるってことですか?
- 和田
- 基本的に「好きな人」を描いてましたね。
好きな人なんで、
「こんなことは絶対にしないけど、
したらおもしろいだろうなあ」
みたいなことが、いろいろ思いつくので、
描いてて楽しかったんですよ。
- ──
- おじさんのハゲ頭にツバが落ちてきて、
上を見たら
ビートルズに似た4人組の若者が、
こっちを見下ろしていた‥‥みたいな回を、
いまもよく覚えています。
言うまでもなく、
『PLEASE PLEASE ME』のジャケットが
元ネタなわけですけど、
つまりは「似顔絵には愛がある」んですね。
- 和田
- ありますよ。嫌いな人は描けないです。
- ──
- 好きだからこそ描ける、と。
その場合でも、
単純に「描きやすい顔、描きにくい顔」
という区別は、ありますか?
- 和田
- まあ、ぼくみたいな顔は描きやすいです。
坊主でメガネで、記号が多いから。
人相描きにしやすい顔っていうかな、
ぼくが「犯人」だったら、
あっさり捕まる顔だと思うんですよ。
- ──
- たしかに。逃げ切れないタイプかも。
- 和田
- ちなみに、湯村輝彦さんは、
ヘタウマで似顔絵をお描きになりますけど、
「ソックリさん大会で3位」
くらいがちょうどいいって言ってました。
- ──
- はー、1位じゃなくて。
- 和田
- そう、1位じゃなくて。
3位くらいの顔をねらって描いていくと、
いい味が出るんだって。
- ──
- 写実すぎず、デフォルメしすぎずの線が、
「ソックリさん大会3位」なんですね。
じゃあ、先生も、3位あたりをねらって。
- 和田
- いや、ぼく自身は何位とかっていうより、
「不条理似顔絵」って感じで描いてます。
不条理だなあと思われたらいいなあって。
- ──
- それは、描かれた本人にですか(笑)。
- 和田
- そう。
- ──
- 「これが俺の顔かあ。不条理だなあ!」
- 和田
- 名前さえ聞き出せればこっちのものだし。
- ──
- 先生は、似顔絵を描くときには、
しゃべったりはしますか、目の前の人と。
- 和田
- 多少はね。でも、恥ずかしいんですよね。
顔をまじまじ見て描くから、
相手のほうも、照れくさいと思います。
初対面であんなに見つめ合うことって、
ふつう、ないじゃないですか。
- ──
- ええ。
- 和田
- あと、とくに女性に多いんですけど、
人によっては、
目をクワーッと見開いてくるんです。
- ──
- あ、少しでも大きく描いてもらおうと。
- 和田
- そう。
- ──
- いまどきのプリクラの機能みたい。
- 和田
- それがね、けっこう困るんですよ。
描きづらいし、
そんなに目を大きく見開かれたら、
似なくなるじゃないか!
- ──
- ですよね(笑)。
- 和田
- ま、それくらい、
意気込んで来る人もおられます。
- ──
- ちなみに難しいのは、どんな顔ですか。
- 和田
- そりゃ、圧倒的に「赤ちゃん」ですね。
赤ちゃんて、もちろん、
それぞれに顔はちがいますけどね、
似顔絵にしてみてくださいよ。
絶対、みーんな同じ顔になるから。
- ──
- たしかに、これといった大きな特徴は、
ありませんもんね。
メガネもかけてなければ、ヒゲもない。
- 和田
- ほとんどのパーツが、
「単純な線」でしかないので、
どこの子も、
だいたい「人形」みたいになるんです。
- ──
- 先生の場合、マッキーの「太」の方で
描いてらっしゃいますし、
赤ん坊の描きわけは、至難の業ですね。
- 和田
- そういう意味で言うと、
やっぱり年配の方が描きやすいですね。
それも、シワが多ければ多いほどいい。
- ──
- あー、なるほど。
- 和田
- ただ、女の人の場合、
年齢によっては微妙な問題があって、
ほうれい線を描いていいのか悪いのか、
悩むことが、たまにあるんですよ。
- ──
- つまり絶対に描いてもいい段階よりも、
少し前の段階‥‥というか。
- 和田
- そうそう、
描いておいたほうが似てくるんだけど、
どうしようかなあ‥‥とか。
そういうときは「入れますか?」って、
聞いてみたらいいのかな(笑)。
- ──
- ご本人のご意向をうかがう‥‥新しい。
- 和田
- 「ほうれい線、少し入れときますか」
「今日は大丈夫です」とか。
- ──
- 丁寧ですね、仕事としては。
- 和田
- お客さんによろこんでもらえるものを、
目指していますから。
< つづきます >
2018-05-30-WED
描いてくださるのは、ロビン西さん、
イマガワノブヒロさん、和田ラヂヲさん、
矢部太郎さん、そして下田昌克さん!
そんな豪華な似顔絵のお店が、
6月7日(木)から11日まで開催される
「生活のたのしみ展」に出現します。
店の名は、NIGAOESKÝ(ニガオエスキー)。
われらが和田ラヂヲ先生をはじめとし、
おなじくマンガ家で
『マインド・ゲーム』のロビン西さん、
『Mother3』のキャラクターを手がけた、
ドット絵のイマガワノブヒロさん、
漫画『大家さんとぼく』が大ヒットした
カラテカの矢部太郎さん、
そして、色鉛筆による似顔絵作品で有名な
アーティストの下田昌克さん。
肩書も、作風も、何に似顔絵を描くかも、
みごとなまでにバラバラな5人が、
日替わりで似顔絵を描いてくださいます。
登場の日程や料金や整理券についてなど、
こちらのページで、
詳細を、ぜひチェックしてみてください!