── | 戦場カメラマンとして ご活躍をなさっている一方、 朗読のご活動もされています。 そのふたつのつながりについて お訊きしたいんですが。 |
---|---|
渡部 | 世界中で、カメラマンとして活動し、 戦場に生きる家族、子どもたちに、 出会ってきました。 |
── | はい。 |
渡部 | 取材すること以上の体験として、 戦場で、そこに暮らす人びとと 同じ時間、同じ空間で 生活を、共にしてきました。 子どもたちが、ぼくに、 いっしょに暮らしている兄弟のことや、 食べもののこと、学校のこと、 お父さんのことを、 毎日毎日、一生懸命お話ししてくれました。 大人の男の人たち‥‥つまり、 お父さんやおじいさんは、村の中で、 子どもたちに、 言葉の遣い方や、服の着方、 食べ物の確保のしかた、 生活の文化や慣習を、伝えていました。 生きる方法を、言葉で、伝えていたんです。 その「言葉の力」というものが すごいと思いまして。 |
── | はい。 |
---|---|
渡部 | 戦場に生きる子どもたちの声を、 日本の子どもたちや、たくさんの方に、 言葉の力で伝えることができないか。 そうしてぼくはずっと、朗読というかたちで、 戦場の家族の声、子どもたちの思いを、 お伝えできればと、感じていました。 そこで、世界の子どもたちの声を、 詩人の覚和歌子さんに、 書き起こしていただくことにしました。 まず、覚さんに、戦場で出会った 子どもや家族の写真を うわっと見ていただきました。 そしてぼくが、 写っている子どもの背景、声、思いを、 ひとつひとつ、覚さんにお伝えしたんです。 その中で、感じとったものを、 覚さんが、詩に起こしてくださいました。 |
── | 渡部さんの朗読のCDのタイトルは 「Father's Voice」、 つまり「お父さんの声」なんですけれども、 先ほどおっしゃった、 「お父さんが子どもたちに伝える言葉の力」という ところからきているんですか? |
渡部 | はい。 これは、直接、父親からの、子どもに対する声、 という意味も、あるんですけれども。 |
── | はい。 |
---|---|
渡部 | 村長さんや、お父さんたちが、 地域で暮らしている子どもたちを 守り、そして育てていく。 そこにはたくさんの方々の声があります。 「Father」は父親でもありますが、 地域や村、国、地球上で たくさんの、生きる術を、 伝えてくれる人たちの声、 ということで「Father」という 言葉を使わせていただきました。 |
── | もしかしたら、 日本の子どもたちが欲しいものは そこかも知れないですね。 |
渡部 | はい。 アフガンでも、イラクでも、 電気がなくても、ガスがなくても、 毎日みんなが、「お話し」を、しているんですね。 |
(つづきます)