第5回 携帯電話の使い方。

── 戦場でも、おしゃべりでほっとする瞬間が
あるんだな、ということに、
逆にほっとしたというか‥‥。
渡部 そういう時間でしか、人が
ふれあうことができないのかもしれません。
逃げまどい、食料が不足し、
身内が目の前で、犠牲になっていく。
── はい。
渡部 気持ちを、保つことは、身内や地域で、
言葉をかけあうことしか、なかったんですね。

お話しすることは、みんなが
戦場を忘れられる、日常を取りもどせる、
大切な時間といえますね。
延々と、話しています。
それゆえに‥‥ぼくたちは携帯電話で、
よくお話しをするんですけれども‥‥、
現地の方が携帯電話で話しだすと、
終わらないんですねぇ。
── ええ(笑)。
渡部 ずーっと話している。
遠く離れている親類や、子どもと話しだしたとき、
プリペイドカードをMAX
まで、使うんですね。
一同 (笑)
渡部 それが、もしかしたら、
本来の携帯電話の使い方なのかも知れません。
── うーん。そうですね。
渡部 命を賭けて、
離ればなれになった友人と、家族と、
携帯電話が壊れるまで、
お金がなくなるまで、お互い声を聞いている。
命の電話と言えるんですねぇ。
この場面を動画でポン!
── 震災があって、
何度か東北にうかがったんですが、
何もできないので、
「どうしたらいいですか?」と聞いたら、
「お話しするだけでいいんですよ」
と言ってくださって‥‥。
渡部 そうですね。
戦場でも、震災でも、
たくさんの子どもたちが犠牲になり、
たくさんの家族がばらばらになりました。

物で、生活環境を変えることも、
できるんですけれども、
ただ横に座っているだけであったり、
挨拶をするだけであったり、
握手をして、
おたがいの体温を感じあう、だけでも、
気持ちが、はぁっとさせられる。

それは、誰しもが持っている、優しい本能が、
目の前に出てきている、瞬間だと思います。

毛布や、食料や、水の支援も大切です。

現場に足を運んで横に座って、
日が暮れるまでお話しをしていることも、
すばらしいことだと思います。

逆に、現地に行けなくても、
起こっている状況を、
新聞やニュースでしっかりと、
毎日見ていることも、
寄り添っているといえます。

忘れないこと、たくさんの方に伝えること、
募金をすることも、ふれあっています。

授業の中で手を挙げて、みんなの前で、
戦争や災害について発表することも
もちろん現地とつながることだと思います。

感じたことを、
どんどん行動に起こしていくことが、
どの地域の方々ともふれあうやさしさ、
寄り添える行動だと、思います。
── 渡部さんの朗読のCDは、
声の大切さ、つながりの大切さを感じる、
いいきっかけになるなぁ、
と思いました。
渡部 はい。
ぼくは、カメラマンです。
写真を使って、伝えていくことは、
ずっと続けているんですけれども、
何かを伝える方法に、
言葉の力、というものもあることを、
戦場の村人の井戸端会議を、聞いていて
感じました。
カメラマンとして、言葉で伝えることにも、
挑戦してみよう、
その思いが、CDの作品につながりました。

(つづきます)

2011-12-02-FRI