第6回 そうじの時間。

── 朗読は、小さい頃からお好きで、
お上手でいらっしゃったんですか?
渡部 さっぱりでした。<s>
── (笑)
渡部 人前で、お話しすることは、
苦手なんですねぇ。
── そうですか(笑)。
渡部 ええ。
それゆえに、今回の作品で、
極度に緊張を、したんですけれども、
丁寧に、お話しをすることを、心掛けたことと、
覚さんや、ビクターのかたも、
「そのまま話せばいい」
とおっしゃってくださいまして、
そのまま、お話ししました。
はい(にっこり)。
── 国語とか、お得意で、
いらっしゃったんですか?
渡部 苦手だったですねぇ。
── ああ、そうなんですか(笑)。
渡部 非常に、大きな挑戦と、
いえる作品ですね。
── しかし、どうも詩については
親しみを感じてらっしゃる世界のように
お見受けするのですが。
渡部 そうですね。
詩を読み込んできた、と、
いうことはないんですが‥‥、
戦場で出会う人たちにとって
活字というと、
本ではなくて、詩なんです。
── そうなんですか。
渡部 生活、文化の一環として
「詩」というものが、身近なんですねぇ。
ですから、地域で、詩を、
朗読をしたり、伝えていくことが多いのです。
── へぇ‥‥。
渡部 それは、詩とも歌ともいえるんです。
音楽がつくこともあれば、
言葉だけの場合もあります。
そのように、世界の多くの地域で
詩の文化が、日常的なんですね。

そのような言葉の中で
ふれあってきたことは、ぼくも感じています。
言葉の持つ、やさしさや深み、厚み、温かさ、
ひと言が持つ、爆発的な意味。
それを世界で、感じたんですね。
── 戦場の子どもたちにとって
ほっとする時間が
おしゃべりや詩や歌であるとするならば、
渡部さんが、ほっとされる時間って
どんな時間ですか?
渡部 「そうじ」‥‥の時間
なんですね。
日本に帰国をして、
時間の余裕があるときには、
「そうじ」をするんですね。
‥‥お風呂そうじ。
── お風呂ですか。
渡部 お手洗い、台所。
── ああ、水まわり。
渡部 仕事部屋や、リビング。
毎日が、大そうじ、
なんですねぇ。
── (笑)
渡部 そうじをすると、
不思議なんですけれども、
気持ちが、すとんと平常心に戻るんですねぇ。
── はぁー。
渡部 戦場から帰ってきて、しばらくすると、
気持ちがぶれてくるんです。
そうした、「戦場カメラマン症候群」の、
「現場に戻らなければならない」という、
動揺した、焦った思いを、
落ち着かせるために、
ひたすらお風呂や、便器を磨くんですね。

すると、すーっと落ち着いて、
また繰り返される日常に、
上手く寄り添うことが、できるんですね。
── なるほど。
渡部 はい。
そうじが、ぼくにとって、
たいせつな、よろこびでもあり、
「日常」と言えるかも知れません。
この場面を動画でポン!

(つづきます)

2011-12-05-MON