おそらく、せきのさんは、
もともと漫画家じゃなかったはずなんです。

そうですね。

もともとはなにを？

もともとはお笑いの構成作家を‥‥。

一同

あぁーーー！

なるほど、原作側だったか。

そーかぁ、
いわれてみれば、
アイデアの出し方がそうだね。

以前、糸井さんと伸坊さんが
雑誌でマンガ対談をされていたときに、
「彼のマンガはコント的だ」みたいなことを
おっしゃっていって。
そのときはちょっとドキッとしました。

あぁ、あぁ、あったね。
SWITCHの「ほぼ日特集」のときだ。

原作者というか、
コント作家としての仕事は、
もう成り立っているんですか？

いえ、もう作家はやっていなくて‥‥。

じゃあ、いまは４コマで？

そうです、はい。

それはすごくよかったんじゃない？
４コマだったら、
自分の好きなようにできるしさ。



コントのほうは、
それこそ昔からやってた人たちの
流れがすでにあるだろうから
「これはダメ、あれはダメ」って、
けっこう制約があるんじゃないかな。

きっと、だれかが決めてますよね。

コントや漫才のネタって、
人ありきでつくるところがあるんです。
でも、ぼくはネタを考えるのが好きなので、
４コマだったらネタに合わせて、
自分で配役を決められるんですね。
なので、ぼくはいまのほうが、
自分にあってるような気がします。

そうだと思いますよ。
だって、こんなにおもしろいだもん。

わぁ！　ありがとうございます。

せきのさんは、
この４コマをどこかに連載してるんですか？

はい、主にウェブメディアに。

ものすごくいろんなところで
連載なさってますよね。

いろんなところで、
自由にやらせてもらってますね。

んー、なるほど。
こうやって話を聞いていると、
３人に共通していることって、
担当編集のガイドがないところですよね。
全力で突っ走ったり、
思いっきりこけたりしながら、
自分たちの好きなように描いてます。



つまり、ながしまさんでいうと
「それで、人に通じるかな？」と
いうときがあったりするし。

はい、そうですね。

カメントツさんでも、
「ギリギリだけど、次を待てばいいか」
って思わせる。
つまり、長く見てるからいいという、
知り合いの子を見てるような
おもしろさがあるんです。

あぁ、なるほど。

せきのさんだって、
ある期間ずっとハズすときがあるもんね。

ほんと、もう、おっしゃるとおりで‥‥。

へぇー、そうなの？
でも、単行本はすっごくよかったよ。
全然ムラなんて感じなかったし。

せきのさんマンガって、
キャスティングがいいんですよね。

キャスティング？

「おじさん、若い人、女の人」
というマンガの登場人物が、
もう手塚治虫さん並みに
「せきの一座」になってますよね。
特におじさんの使い方がうまい（笑）。

おじさん、おもしろいです（笑）。

最初の扉を４コマにして、
タイトルを出すところだけど‥‥。

これ、同じ４コマが
本の途中にも出てくるんですよね。
「バラードなのに？」というやつで。

あ、そうです（笑）。

なんかこういうアイデアも、
すごくいいと思ったね。
本としてほんとによくできてる。

ありがとうございます。
これはワニブックスのデザイナーの方が、
考えてくださいました。

そのへんも含めて、
作家のことをちゃんと理解してるよね。
制作チームが制約する側じゃなくて、
作家をちゃんと持ち上げてる気がする。

作家への敬意があるからだろうね。
そもそも読者としての自分が
おもしろいと思ったから、
編集者は頼みに行ってるわけだし。



作家やおもしろいものをつくる人を
尊敬するという意味では、
「ガロ」の長井勝一さんは、
まさにそういう人だったね。

あぁ、あぁ、その通りだね。

長井さんの原点には、
小説をつくる人とか、マンガを描く人に、
ものすごく尊敬の念があるんです。
自分をおもしろくさせてくれる人を
尊敬する。
それが原点にあるから、
商売のことは考えられないけど、
おもしろい人はどんどん集まってくる。

うん、うん。

３人の担当編集者たちが
「こうしろ、ああしろ」といわないのは、
できあがったマンガや、
マンガをつくる作家のことを
ちゃんと尊敬してるからなんだろうね。



３人の話を聞いてると、
「あぁ、そこらへんがガロと似てるなぁ」
と思ったね。

ほんとその通りだよね。
今日、伸坊を呼んでほんとよかった（笑）。