第1回
休みは、仕事の中にある
休みは、仕事の中にある
糸井 |
小川さんは、お休みの日なんかあるんですか? |
小川 |
休みは、そうですね…… 「奈良の家に一日いる時」 というのは、年に2日ですね。 |
糸井 |
うわ! やっぱり休まないんだ? |
小川 |
正月うちにいるというのは、無理しているんですよ。 あともう1日は、二日酔いで 頭が上がらなくて寝てるぐらいなんです。 正月の1日は長いですよ……無理しているから。 もう、2日から現場へ行きますね。 何ですか、一番ラクですよね、現場にいるのが。 気が休まりますよ。 |
糸井 |
気が休まるんですか。 体はいつも動いているわけですね。 |
小川 |
体は動く、というよりも、 ただ、仕事が一番ラクですね。 |
糸井 |
うすうす、そんな気はしたけど、 やっぱりそうですか!(笑) 「休みたい」なんていう欲望は? |
小川 |
ないですね、休みたいという時は。 |
糸井 |
つまり、ふだん、休みは 仕事の中に入っちゃってるということ? |
小川 |
そうですね。 仕事してるときが、いちばん リラックスして、いちばんラクですからね。 |
糸井 |
最高の職業。 |
小川 |
そういうことですよね。 自分も、ようこんな仕事に、いちばん いい仕事に入っているんだなぁとは思いますよ。 |
糸井 |
みんなそういう気持ちで 仕事をしたいでしょうね、きっと。 |
小川 |
何でできないんでしょうな? |
糸井 |
何でできないんでしょうかねぇ。 もともとは、ご自分で 選んでなさった仕事ですよね? |
小川 |
はい。 |
糸井 |
直観的に、わかったんですかね? |
小川 |
うーん、そうでしょうな。 それこそ高校の修学旅行の時に五重塔を見て、 「この建物は1,300年前に建ったものだ」 という案内があった。 そう聞けば、 どういうふうにして材木を運んできたか、 あの相輪をどうやって上げたか、 そういうことを考えてるのが楽しいですわな。 |
糸井 |
修学旅行のときから ずうっとその思いが途絶えなかったわけですか。 |
小川 |
うん、途絶えなかったですよね。 高校を終わったときに棟梁のところに訪ねました。 しかし、そのときにすぐ入れなかったのが、 あとから考えたら、良かったんでしょうな。 ちょうど次に入ったのが、それから 丸3年たった、4年目の春でしたから。 ようやく弟子入りが認められた、という感じでした。 すぐに入れば、 それほどの思いがないんじゃないですかね。 |
糸井 |
スポーツ選手なんかでも、 小さいころから野球してて、 「野球の選手になりたい」 でも、なかなかなれるもんじゃない。 で、とうとう念願叶って入れたといっても、 それでも、仕事を休みますよね。 その意味では、 小川さんみたいな方というのは、 やっぱり相当珍しいですね。 |
小川 |
そんなことないでしょう。 |
糸井 |
どういう世界にいるんですか? |
小川 |
うちの弟子なんかでも 毎日のように仕事して、 夜の12時過ぎまでやってますよ。 「もう12時だから寝ろ!」 言って怒るぐらいですからね。 |
糸井 |
それだけ魅力のある仕事だという……。 |
小川 |
どうでしょうな。 合っている子には、 一つも苦痛ではないでしょうな。 |
糸井 |
ぼくなんかも、まあ、似たようなもんで、 確かに仕事してるときは楽しいし、 社員たちもずうっと夜までいますけれど、 あいだあいだに、どういう風にじょうずに休むか、 みたいなものを本気で考えないと、 その日の終わりがなくなっちゃうんですよね。 乗りが悪くなってもやっているとかいうのって、 結局あまりいいことがないので、 休みかたを、仕事のしかたと同じように 大事に考えないといけないと思っているんです。 ただ、休みかたを意識することはするのですが、 なかなかできなくて……。 ただ何にもしない時間を作っちゃうか、 あぁ、キツイなあと思いながらやっちゃうか。 でも、やめるわけにもいかないと言いますか。 そのどちらかだけしかないという循環を 何とかしたいなと思っているんですよ。 小川さんの今のお話を聞くと、 仕事の中に休みは含まれているみたいですね。 |
小川 |
そうですなあ。 |
糸井 |
いいなあ、それ、できないもんかなぁ。 |
小川 |
できないんですかな? できると思うよ。 |
2015-01-02-FRI
タイトル
一生を、木と過ごす。
対談者名 小川三夫、糸井重里
対談収録日 2002年9月
一生を、木と過ごす。
対談者名 小川三夫、糸井重里
対談収録日 2002年9月
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