第6回
夜型?朝型?二四時間型?
糸井
こちらが長っ尻で困っているときって、
「言ってあげないと、相手も困っている」
という場合もあるらしいですよ。

ぼく、前に言われたことがあるんだけど、
「ぼくのような者が、
 こちらから帰りますとは言いがたい」
という立場があるみたいで。
重松
そうかー。
糸井
目上の人が、ちゃんと、
「帰りたまえ」のサインを出してくれないと、
「ぼくはもう、あなたといたくない」
って見えちゃうのがコワイんだって。
だから、なんとなく時間が過ぎるという。
重松
そういう気遣いで、奥さんに、
電話をかけてもらう作家もいるみたいですね。
「あ、ごめん。じゃあ十分後に電話をくれる?」
って。
あと十分なんだという位置を教える、みたいな……。
糸井
何時まではオッケーだから、
って最初に言っとく方法もあるけど、
それも実は、言いやすいことじゃないんですよねぇ。
興が乗れば、それはそれで別に構わない、
ってところもあるから。
重松
糸井さんの仕事のような、
具体的な打ちあわせだったら、やっぱり
「できた! 帰ろう」
ってこともあると思うんです。

ただ、作家って、具体的な仕事は
ぜんぶひとりでやるわけだから、
編集者との打ちあわせって、実は、
執筆仕事の時間には換算されないんですよ。

なんか、
「ちょっと顔を見にきました」
みたいなことになって……
だったら、もう早く解放して書かせてくれ、と。
糸井
(笑)急いでいる仕事に限って、
長っ尻の人がいて、っていうこともあるよね。
重松
結局、帰った後に、
何も決まってなかったり。
打ちあわせ自体は、
「それについては、追々……」
とかで終わってるんですよ。
糸井
(笑)
重松
「近々」「いずれ」と。
糸井
ぼくも、具体的に、
「おまえが帰るほうが、早くできるぞ」
って言ったことある。
でも、そのダラダラしてる場って、
つまらなくもないんですよねぇ。

ほんとにつまんなかったら、
急に席を立っちゃったり、
人はひどいことをできるんだから。

だから、「長っ尻で困ったな」って思っているのは、
案外、いいヤツだったりする。
重松
(笑)けっこういいヤツなんだけど、
話の盛りあがりがなくて、こう、
ぬるま湯のように、そこそこたのしい話題が、
それなりに続いていくっていう……。


お酒を飲まないと、
「酔っておわり」というのがないから、
つらいんですよ、あれ。
飲むほうがラクだったりする。
糸井
ぼくは飲まないから、
仕事の終わり目が見えないんですよねぇ。
重松
そうですよね。
糸井
ぼくは、眠くなって終わる(笑)。
ただ、眠いのをガマンしているうちは、
どんどん、仕事がうしろにズレこんでいきますから、
自然に夜が長くなるんですよ。弱ったもんなんです。

だから、朝型にしようとすると、
朝と夜と、両方型になっちゃう。
そうすると、ずっと、疲れてます(笑)。
重松
糸井さんやぼくが朝型をやっても、
やっぱり夜に仕事をやっちゃうから、
二四時間型になる(笑)。
糸井
うん。
そうすると半端に効率の上がらない時間が
できちゃったりするんで、
仕事で生きていくんだったら、
そういう人は夜型のままにするべきですよね。
でも、ぼくは、
仕事と人生の両方のしあわせがほしいって、
痛切に願っているので……。
重松
「昼間の二時か三時に昼寝する型」が、
いちばんいいかもしれない。
現役バリバリの勤務時間だから、
けっこう度胸が要るけど。
糸井
それ、そうとう、理想に近いですね。
事務所が和室だらけだったときは、
それに近いこと、してたなぁ。

仮眠室だと、
ちょっとわざとらしくなりますもんね。
「仮眠ってからには、
 そうとうな理由があるんだろうな?」

みたいな……。
重松
(笑)
2015-01-05-MON
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