第5回
仕事の単位は何日なの?
重松
そう言えば、ぼく、
「ほぼ日手帳」を使っていますよ。

追加販売で、
「まにあわない、買わなきゃ!」って慌てて……。
糸井
(笑)ありがとねぇ。
重松
スケジュール帳が、
「はたらけ」って言われてるみたいですね。
糸井
その思想からはじまった手帳だ、
っていう気はします。
仕事のための手帳でもあって。
重松
ただ、あの手帳って、いかにも、
今を生きるコピーライターの作った手帳だ、
というふうに思ったことがあって……。
一週間の俯瞰ができないじゃないですか。
「今日、一日」しか、
糸井さんの念頭には、ないんですよ。
糸井
一か月か、一日だもんね。
そっかぁ。
そんなことは、思ってもみなかったなぁ。
重松
だからぼくは、
一週間を俯瞰で読む手帳を、別に買ってます(笑)。

短編小説なんかは、
だいたい、三日で一本、書くんですよ。
だから、しめきり日だけを書いてもダメなんです、
それまでに二日要るから。

そうすると、一週間のほうが、
ぼくにとっては、使いやすいんですけれども。
糸井さんは、瞬間で仕事をするんですよね?
糸井
うーん。
長い期間の仕事のときは、
ただ、イヤがってるだけかも(笑)。

確かに、そう言われてみれば、
ぼくは、あらゆる長期の話は、
いったん一日の単位に変換してやってますね。
重松
わかります。
糸井さんのペースって、そうですよ。
ぼくらは、三日の中で何時間寝るか、
とか計算して……。
糸井
それもわかるなぁ。
でも、重松さん、
三日って、作家としては早いですよ。
重松
一年ぐらいかかる人もいますから。

手帳の思想って、あると思うんですよ。
三年連用日記の思想とか、明らかにあるね。

「ほぼ日手帳」がうれしいのは、
二四時間制のところですよね。
夜十一時で終わっちゃう手帳もあるから。

ぼくの仕事って、書いてるのが、
そこから次の日の朝までだったりするんです。
夜十一時で終わる手帳だと、
どこにその予定を入れていいか、
わからなくなっちゃって。
糸井
夜中から明け方までやる仕事って、ありますよね。
ぼく、今、なるべく
朝型に直そうとしているんですけど、
すっごく、仕事ができないですね。
重松
でしょう?
糸井
やっぱり、今までって、
人が寝てからの時間を、使っていたんですよ。

自分では、使っていないと思ってたんです。
どうせ、ダラダラしてるんだし、と思ってた。
でも違った。けっこう、
その時間に、仕事を埋めこんでたんですよ
重松
そうですよね。
あと、ぼくみたいな仕事をしていると、
手帳に書きこむことが、
あんまりおもしろくないんですよ。

家で仕事をやってると、
手帳に、「恵比寿」とか「田町」とか、
書けないんです。

せいぜい書いても「日経BP来」とか。
でも、それって、相手が来るだけだから。
病院のお医者さんみたいなもんで。
それって、手帳を書く甲斐がない生活で(笑)。
糸井
自宅にいつづけると、
アタマの機動力が、弱まりますよねぇ。
重松
弱る弱る。
糸井
イヤでも出むかないと、
やっぱり、目に見える景色が同じってことは、
人間をつまんなくしますよね。
重松
出向かないとなぁ、とぼくが思うのは、
向こうが長っ尻だった場合、困るんですよね(笑)。
帰ってくれない……。
出向いていると、自分のペースで帰れるじゃない?
糸井
わかるわかる。
飲み屋のママが体を壊すのと、おんなじですね。
重松
(笑)ええ。
三回ぐらい
「じゃ、そういうことで」とか言っても、
通じなかったり。

こちらが、手帳、閉じたりしてるのにね。
糸井
(笑)
2015-01-05-MON
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